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離婚します  第一部

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離婚します  第一部

40 - 第40話 健二と鉢合わせ!

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2024年10月31日

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仕事の掛け持ちは、疲れる、思った以上に。

やっぱり歳には勝てないなぁと思うけど、今やっておかないと、どんどん動けなくなりそうだ。


老後資金と、生活費と遊ぶためにお金が必要。

目的がはっきりしてるから、やり甲斐もある。

貴君との仕事は、だいぶ慣れてきて時間内にできることも増えてきた。

残業もほとんどしなくて済んでいる。

ホテルの清掃アルバイトは、ニシちゃんが要領よく教えてくれたから、あとは数をこなせるように工夫するかな。


で、今日はお休み。

旦那と二人で私の元職場のスーパーへ買い物に来た。

考えてみたら、一緒にスーパーに来るなんて結婚当初しかなかったかも?


「…で、何が食べたい?」

「んー、食べたいものより作れそうなものかな?」


今日は旦那相手にお料理教室をやる。

掃除と洗濯は、ある程度やれるようになったけど、料理は何回か教えないと難しいかも。

ということで、まずは買い物から。


「炒めもの、煮物、汁物、これくらいから始める?」

「汁物かな?まず。ぶっかければ食べれるし、うどんとか入れてもいいし」

「まぁ、コンビニごはんよりはマシかな?じゃあ、干し椎茸と、それから昆布だしと鰹出汁はインスタントでもいいから、これでいこ」


カートは一つ、カゴは二つ。

食料品はまとめて買うけど、日用品は別々。


「あれ?未希ちゃん、いらっしゃい!」

「洋子さん、こんにちは。今日はなんかお買い得品ある?」

「あるよ、台所用洗剤とその玉ねぎがお得!」

「ありがとう!あ、こっち、元旦那」


隣で旦那が、もとい元旦那がぺこりと頭を下げた。


「あら、はじめまして。未希さんにはいつもお世話になってます」


元旦那は、頭をぽりぽりかいている。

考えてみたら、誰かに紹介したことってなかったかもしれないと今頃思った。

もう離婚したのに。


「じゃ、行くね」

「うん、いっぱい買ってってね」


カートには重いビールや醤油も入った。

それを進君は、ひょいと運んでくれる。

なんだか今になっていい夫婦になってるかも?

変なの。


台所に二人で立つようになるなんて考えても見なかった。

それでも、これで家事が各自になるととても生活しやすい。


「お出汁が美味しいと、野菜も美味しくなるよ。味付けは薄口醤油がいいと思う」


私もそんなに料理は得意じゃないけど、人並みの家庭料理ならなんとかできる。



ぴろろんぴろろん🎶

スマホが鳴る。

ニシちゃんだった。


『もしもし?小平さん?』

「はい、そうだけど、何かあった?ニシちゃん」

『お休みのところ悪いんだけど、今日夕方からのシフト、入ってくれないかな?』

「えっと、何時から?」

『18時から22時までなんだけど』


時計を確かめる。

あと30分しかないけど。


「わかった、準備して行くね」

『よかった、急に一人来れなくなって。じゃお願いします』


電話を切って進君を見た。

お吸い物みたいなものを作っている。

あとは買ってきたコロッケとマカロニサラダがある。


「私、アルバイト行ってくるから、あとお願い」

「あぁ、大丈夫。ご飯だけは炊けるようになったし。行っておいで」


エプロンと三角巾を持ってホテルへと急いだ。

右折したらホテルの入り口、というところで対向車が来て先にホテルへ入った。

お客さん用の駐車場と従業員用は離れていて、お客さんは一台ずつ仕切られたところへとめ、気になる人はプレートでナンバーを隠す。


私はお客さんを急かさないように、わざとゆっくり入って行く。

従業員用駐車場に車をとめ、裏口から入って従業員控え室に向かう。


「こんばんは」

「あ、小平さん、ありがとう、助かった」

「あ、未希でいいよ。ニシちゃんはもう上がり?」

「ううん、未希さんと同じだけやってくよ」


ぴろぴろぴろ🎶

どこかの部屋からからお客さんが帰ったらしい。


「ニシちゃん、行く?」

「私ちょっと休憩するから、未希さんお願い!」


手を合わせられた。


「わかった、行ってくるね」


私は清掃台車を押して、空室になった部屋の清掃に向かった。

できるだけ人と会わないように、会っても素知らぬふりで通り過ぎなければいけない。

わけありの人もいるのだから。


エレベーターで四階まで上がった。

一部屋一部屋ドアの向きが違って、お客さん同士がバッタリ出くわさないようになっている。

台車を押して、角を曲がろうとした時、カチャリとちょうどドアを開けようとしているカップルがいて、慌てて後退りした。


女性が先に入り、男性がその後から入る。

え?あれ?今のは!


私はわざと、台車を持ち上げガタンと音をさせ、その拍子にスプレー缶を一つ転がした、その部屋の前まで。


「あっ!」


白々しく声を出して、スプレー缶を追いかける。

私の声とスプレー缶に気付いて男性の動きがふと止まった。

決して目は合わせない、私はあくまでここの清掃員だから。

男性の目線を感じながらわざとゆっくり、スプレー缶を拾い意味もなく付けていたマスクを外して頭を下げる。


「失礼しました、ごゆっくり」


決して目は合わせずこちらは何も気づいていないフリをするが、男性が私の顔を確認したのがわかった。

慌てて部屋に入ったから。


その男性は間違いなく、娘婿の健二だった。

そういえば、健二にはアルバイトのことは話してない。

綾菜も話していないのだろう。

空室になった奥の部屋へ向かい、手際良く掃除を済ませる。

控室に戻ると、ニシちゃんがおにぎりを食べていた。


「未希さんも食べる?余分に買ってきたけど。急に呼び出したからまだでしょ?ご飯」

「ありがと。でもね、帰ってから食べる、味見をして採点しないといけないから」

「えーっ、誰のご飯?」

「旦那の手作り」


あ、元を付けるの忘れた、ま、いっか。


「いいなぁ、旦那さんがご飯作ってくれるなんて。うちのお父さんなんか食べた茶碗も下げてくれないんですよ」

「うちもそうだったよ、でも話せばやってくれるんじゃない?」

「そうかな?」


ニシちゃんと話しながらも、私は綾菜にLINEする。


〈来週末、結婚記念日でしょ?一緒にお祝いしない?うちらの離婚祝いも兼ねて〉


ぴこん🎶


《離婚祝いって初めて聞いたわ。いいよ、どうしようかな?って思ってたとこ。ちょっと健二に聞いてみるから待ってて》


ん?近くにいるのかな?じゃあさっきのは?

人違いだったかなぁと思っていたら、返信があった。


ぴこん🎶


《電話に出てくれないから、LINEしたんだけど、返事がないの。多分、残業に追われてるっぽい!》


「まだ仕事してるんだ、健二君、頑張るね!」


ぴこん🎶


《最近よく働くから。手当てがなくても仕事が終わらないと帰ってこないくらいだよ》


それは嘘だなと私の心の声。


〈じゃあ、帰ってきたら話しておいて。私から誘ったってことで〉


ぴこん🎶


《了解!》


やっぱり、さっきのは間違いなかったか。

こうなったら動かぬ証拠として、車を写真に撮っておこ。


「ニシちゃん、ちょっとごめん、車に忘れ物しちゃったみたいで」

「いいよ、次は私がいっとくから」

「ありがと」


急いで裏口から出て、お客さん用の駐車場に向かう。

確か、健二君の車は黒のワンボックスだったはず…。

あれ?全部で11台とめてあって、その中には該当する車がない。

おかしいな。

あっ!もしかして、女の車で来たのかもしれない。

じゃあ、どれかわからないから、出てくるのを待とう。


これじゃ興信所の探偵だわ。

確証をつかんだら、どうやってつきつけようか、考えておこう。

浮気を完全否定するつもりはないけど(実際、私もやっちゃってたし)、これが実の娘の夫の話になると別だ!

我ながら、身勝手な言い分だとは思うけど。


従業員控室に戻り、あの部屋から健二が出てくるのを待つことにした。


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