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幼い頃から、綺麗じゃなくても愛されてたオメガの物語を見て、僕、双葉千紘は、ずっと運命の番に憧れている
αが多いと聞いて、母の借金を背負って大都会、東京へ。でも、そんな簡単に会える訳もなく、未だにαすら会えてない状態だ
今は、アルバイトをして食いつないでいる
居酒屋のバイト、コンビニバイト、スーパーのバイト、会社の清掃バイトの4つを掛け持ちしている
今日は清掃バイト、帰ってからコンビニバイトに行く。
清掃バイト中、仕事の最中ふと「はぁ…」とため息つく
「どうしたの?千紘くん」とバイトの先輩である、女性の加藤さんが心配しながら聞いてきた
「あ、ええっと考え事してて…すみません」
「若いうちは考え事して、沢山頑張る!それに尽きるわ!まだあたしも50代だけど!孫見るまでは死ねないって思ってるし!!頑張るわよ!!!」と背中を叩かれた
加藤さんも頑張ってるし、僕も頑張らないと!
「あぁ!そういえば千紘くんって、アルファに会いたくて上京して来たんじゃなかったけ?」
そう、ため息ついたのもこれが理由
「はい…でも、普通に過ごしてたってアルファに会えないんですね。一度もまだアルファに出会いがないんですよね…アルファと会えないまま、ずっとアルバイト生活って感じになりそうです」と言うと「じゃあ!あとで千紘くんにプレゼントするわ!バイト頑張ってるし、たまにのご褒美ね!」と言って持ち場に戻って行った
なんだったんだろう…?と思いつつも、清掃バイトが終わり片付けをしていた時、加藤さんからこれっと渡された
渡されたものは豪華な包み紙?商品券とかが入ってそうなものを渡された
「なんですか?これ」
「私!まだ、若い子たちに負けたくないから高級エステ行ってるんだけどね!入会の時に応募してって言われて当たったのがそれ!でも、私じゃあ使えないのよ!ほら、中身見て」と言われて中身を開けるとアルファとオメガ限定のパーティーの招待券だった
「オメガの診断書があれば入らせて貰えるらしいから!ぜひ、行ってみて!まぁ、アルファがいなかったとかだったら高級なディナーがあるはずだから、腹いっぱい食べてきな!」と言われた
腹いっぱい…借金があってここ数日間はもやし生活だった、たとえ、運命の番がいなくとも行ってみる価値はある!
「加藤さん、ありがとうございます!行ってみます!」
「行っておいで!あ、あとちゃんとドレスコードはしっかりしていきなさいよ~まぁ、私の行ってるエステもアルファ様御用達みたいな感じだから、ちゃんと身なりのしっかりした人が行く感じだし!って、時間ヤバっ!じゃあ、またね!」と言って帰って行ってしまった
ドレスコードとはなんだろう?スーツとかってことかな?
でも、スーツは持ってない。大きめのスーパーとかに売ってないかなぁ…でも、お金かかっちゃうし
それでも、見た目だけはしっかりしていこう。と思い近くにある大きめのスーパーに行って1番安いスーツを買い、パーティーの日になった
受け付けの人にオメガの証明書とパーティー券を渡したら通してくれて部屋に案内された
天井には、キラキラ輝くシャンデリアに金を基調とした豪華な広い部屋だった
「うわぁ~」
この世とは思えないほど綺麗だなぁ~なんか、異世界に来たみたい!貴族に転生したみたいな?
でも…みんな綺麗なスーツに豪華なドレスを身にまとっていて、僕の存在は浮いていた
帰りたくなったけど、ご飯を食べるまでは帰れない!と元々心に決めていたので、ご飯を探しに行くけど、ウェイトレスの人が銀のおぼんにワインやシャンパンを持ってるだけだった
昨日からご飯抜きにしてきたのに…
「はぁ…」とため息を着いた途端会場の電気が全部消えてステージの真ん中にスポットライトが当たった。だけど、ご飯を食べれない悲しさでその事にさえ、興味が湧かなくなり、下を向いていると、綺麗な心地よい男性の声が耳に入った
誰だろう?と思って顔を上げてみるとステージの方を見るとかっこいい美形の男性の方が立っていた
心臓の鼓動が早くなって、あの人にしか目がいかなくなる
『運命の番』
あの人を見た時、頭の中にその文字が思い浮かんだ
だけど、こんな凄い綺麗で華やかなパーティーに呼ばれて、ステージに立つことはよっぽどすごい人なんだろう…
だから、こんな僕が会ってしまったら、あの人の人生の邪魔になってしまう
もしかしたら、もう…婚約者とか、番がいるかもしれないし…そう思ったら、近づけなくなった
帰ろう…。そう思ったけど、どうしても足が動かなかった
あの人と喋ってみたい
喋らなくても…近くで見て直ぐに帰ればいい。そう思ったら、今まで動かなかった足が動かせれた
人混みを抜けていって気づかれない程度にステージの少し前に来た
そして、挨拶が終わってステージから降りてくる時、その人には大勢のオメガが群がってしまった
しかも、そのオメガ達はみんな可愛くて高そうな装飾品を身にまとい、品があって、とっても綺麗だった
やっぱり、こういう人達がアルファと付き合えるんだ。平民以下の僕は付き合えない
今まで、何回も何十回も名家のお金持ちだったらとか、もっと可愛かったら、もっと美人だったらとか思ってたけど、僕には変われない
帰ろう。
会わなかったことにすれば誰も僕も傷つかない
そう思った時、綺麗な音色が流れ始めた
辺りを見渡すとどうやらダンスを始めるらしい
僕はダンスなんか踊れないので、関係ないと思って出口へと向かったら、目の前から1人のアルファの男性に声をかけられた
髪色が金髪に近い色で、いかにもチャラそうな男だった
髪をいじりながら「ねぇねぇ、帰るの?俺と一緒にダンスしない?」
「いや…ダンスは踊れなくて…」
「いいから!ダンスしよ~俺がエスコートとやらをやってやるぜ!」と下手くそなウィンクと、腕を掴まれた
それでも「ごめんなさい…」と断ると
「あぁ?俺様がダンスを誘ってやったのに、お前ごときに断られるなんて!ブスのくせに!生意気な!」と僕のことを罵り始めた
「ブス!ブス!ブス!そもそも、ダンス踊れないのにくるべき場所じゃねぇんだよ𝗐𝗐𝗐しかも、お前、鏡見たことあるのかよ!」と言われて僕は下を向くしかなかった
でも、事実だから否定もできない。そう思い、立ち尽くしていると肩を引き寄せられた
誰だろうと思って顔を上げると、運命の番の彼だった
「彼は私のダンスの相手だ。君に傷つかないように断ったのに、どうして、そんなに彼を責めるんだ」とチャラ男に言うと
「と、東城!?」と言って腰抜かして、慌てふためいて急いで出口へと向かって行ってしまった
「あっ…ありがとうございます」と言って頭を下げた
「ちゃんと、お礼はします!このご恩は一生忘れません、本当にありがとうござ…」と言いかけたところで「礼なんかいい、それよりダンスが始まってしまう。ほら、音楽が流れ始めている」
え?あれって本当に踊るってこと…だったの…?
本当は踊りたいけど…僕は踊れないし…
「断った口実とかじゃなく、本当に踊れないんです…ごめんなさい…」
どれだけこの人が上手くて、エスコートされたって、無理だ。体育の成績なんか最低評価だったし、昔から運動音痴だって笑われてきた
そんな笑いものと組んだら、笑われてしまう、オメガのせいで恥をかいたなんて…αにとって最も嫌うことだ
「本当にごめんなさい、せっかく誘っていただいたのに、それに、助けてくれたのに…ごめんなさい」
「無理強いはしたくない。だけど、君が他の誰かと今夜、過ごすのはもっと嫌なんだ」
「少しでも、踊りたいって気持ちがあるなら手を取って」と言って大きな手のひらを差し出してきた
1度迷って手を引っ込めた
ダメだってわかってる。釣り合わないってわかってる。
ブスでドジで間抜けで、いつも人にバカにされて生きてきて、母親からも父親からも愛されたことがなくて…借金もあってオメガの中でも底辺な僕が、位の高いαと踊っていいわけが無い
でも、今だけは…今だけはこのわがままを許してください。神様…と心の中で言ってもう一度手を出して、掴んだ
それから、引っ張られるようにしてダンスの場所に行くと、一瞬にして静かになった
あと、ザワザワし始めた
やっぱり、何かやらかしてしまったと思って、下を向いて下唇を噛み締める
場違いだったよね…。
「そんな顔をするな、ただ皆、驚いているだけだ」
何に対して驚いているんだろう…?と疑問に思ったところで曲が始まった
あたふたしている僕に「気にする事はない。大丈夫。信じてくれ」と言ってされるがままだったけど、何故かダンスを踊れているような気がした
幸せな瞬間ってこういうことを言うのかな…
今まで人生で一番時間が過ぎるのが早かった
ダンスが終わってしまった
あぁ、もう終わってしまったんだ
僕はもう、喋る口実も会う口実も無くなった
「助けてもらえて、こんな素敵なダンスも踊らせて貰って、本当にありがとうございます。ちゃんとお礼はします」と言って頭を下げて、出口へ向かおうと振り向いた時、腕を掴まれて引き寄せられた
「まだ、名前聞いてない」
「あっ、ええっと…教えられるような名前では…」
「教えて欲しい」
「…双葉 千紘です」と言うと強引に顎をクイッと持ち上げられた後、必然的に目を見てしまった
そしてボソッと『俺の運命の番』と呟かれた
あぁ…ダメなのに…
見ないようにしてたのに…
逃げようと思ったらギュッともう一度抱きしめられた
そして、だんだん自分自身の匂いは濃くなっていき、アルファの匂いに耐性のない僕は、一瞬にして完全にヒート状態になってしまい、体が耐えきれなくなって、気絶するように眠ってしまった
***
「ちゅっ…ちゅ…」
唇が動いて…と思って目を開けたら、ベットで押さえつけられて、スーツを脱がされてバスローブを着せられて、キスされていた
だんだんと唇が離れていき、さっき踊った男性の目と合う
「あっ…すまない。起こしてしまったかな?我慢できなくて」
むしろ発情している時に無視される方がダメージ食らうから、全然いい
「謝らないでください!むしろ、こんな匂いで発情してくれるなんて…思ってもみなかったです」
「千紘くんの匂いはいい匂いだ、発情しないわけないだろ?」と言って、顔を近づけて匂いを嗅いでいるらしい
なんだか、恥ずかしいな…
そしたら、急に首を舐められた
「ひゃっ!」
あっ…変な声出しちゃった…
「感じやすいのか?」
そんなことないと思って横に首を振る
「ただ、びっくりしちゃっただけです、ごめんなさい」
「じゃあ、これも驚くか?」と言って顔が近づいてくる
こう言う時って、目をつぶるんだよね!と思ってギュッと目をつぶると唇が当たって、舌を無理やり入れてくる
「んっ!んぁ…」
気持ちよくなって、変な声出しちゃうし、静かな空間に水音が響いて、キスしてるって強制的に自覚させられる。
恥ずかしい…///
「ちゅっ…んっ…//」
夢中でキスしていたら、僕の下の大切な部分を触られてビクッと少し体が動く
「やっ…んッ…!」
そして、唇が離れてニヤッと笑われた
「反応しちゃったんだな、可愛いよ」と頭を撫でられた
可愛いよなんて、言われたことなくて、頭がいっぱい可愛いよでリピートされる
お世辞ってわかってる。だけど、初めて言われて嬉しかった
でも、可愛くないから否定する
「可愛くないです」
「いいや、可愛いよ」と優しく微笑んでくれる
こんなオメガにも優しくいてくれる。この人に番にして貰ったら幸せだろうな…
「番にして欲しい…」
ハッ!何言っちゃってんだ僕!心の声ダダ漏れすぎでしょ!
運命の番さんは、一瞬時が止まったようにピタッと動かなくなった
「あっ!その…違って…」
すごくびっくりしてるし…困った顔をしてるように思える
そうだよね…。こんな馬鹿でブスで可愛くもないオメガ、番たくもないよね…。わかってたよ。泣きそうになるなよ、僕。
泣くのをこらえて誤魔化すために必死に弁明する「つがってくれなくてもいいんです。証をつけてくれるだけでも…抱かれたって言う証拠が欲しくて…」と言うと「俺は番たい気持ちはある。だけど…番ってどういうことかわかってるのか?」
「もし、俺に逃げられたら1人でずっと発情期を過ごすんだ。千紘くんが逃げても同じだよ。捨てられたオメガの発情期は相当辛い」
「もし、他に愛する人ができてもその人と番になれないかもしれない。もう少し、自分の体を大切にして。それでもいいなら番になろう」
「・・・それでも僕は…」
しかし、どこからドンドンドン「東城さん!少しいいですか!?〇✕会社の大切な件で!早急に対応が必要なんです!」と男の人の声がした
「はぁ…少し待っててくれ」とため息を着いて、バスローブを来て出てってしまった
「あっ…待っ」
僕は1人大きな部屋で残された
本当は行って欲しくなかった。だけど、僕はその要件よりも大切なオメガではないし、そこまで図々しくなんか言えない。しかも今日会って初めての人に番ってなんて言われたら気持ち悪いと自分でも思う
それに、よくよく考えてみれば、あんなかっこいい人が誰とも番ってないなんて、冷静に考えたらわかる。
だって、詳しかったし…一般知識かもしれないけど…
奥さん以外の他のオメガから番にしてって言われたら秘書さんとか知り合いの人が来るっていうのかもしれない。番にしてくれって頼むオメガ多そうだし…と思ったら涙がポツポツ流れ落ちてきた
涙を拭いても、拭いてもどんどん流れていく
あんなにも優しくしてくれたのに、こんなに相手の人のことをネガティブなことばかり考えてしまう自分が嫌だ
それにどこかで期待してたんだ。昔から運命の番に憧れがあって、運命の番も同じ境遇で、愛されたことがない人なんじゃないかって…。寂しいのをわかってくれるそんな人なんじゃないかなとか…都合のいいことばかりを考えてきた。でも、違った
僕の底辺の暮らしとは違ってきらびやかな世界で生きてる人で…たくさんのオメガに囲まれて、僕が居なくても幸せに生きていける人だった。
たぶんαの中でも上位の人で、底辺な僕とは違う。真反対の人
運命の番じゃなかったら、こんなことにもなってない
そんなことをぐるぐる頭の中で考えて数十分ぐらい泣いて、やっと正常に戻った
起き上がってみるとベットの前にはお化粧台が置いてあって、醜い自分の顔が映る
目が腫れてブサイクな顔だった。こんな姿、見られたくない。あの人の記憶のなかでは、少しでも自分が綺麗でいたい。
アルファさんとこういうことするの今後ないし…自分にとってもいい思い出にしたい
嘘寝でもいい、今は会いたくない
そう思って、目をつぶった
***
起きたら、結局朝になってしまった
隣には、あの人がいた
いてくれてたんだと言う喜びはあったけど、どうしても昨日の夜のことを思い出してしまった
帰らないと…と思って脱がされていたスーツを着直して、発情を抑える薬を一応持ってきていたのでそれを飲んで、バスローブを畳み「ありがとうございました」と言って、部屋を出た
廊下を少し歩くと、エスカレーターがあったので下に行くボタンを押す
エレベーターを待っていると誰かが急いで走ってくる音がする
誰が来るんだろうと思っていると「あ!いた!」と男の人に声をかけられた
「は、はい?」
「あ、ええっと…昨日お邪魔した第二秘書の山川と申します。さっき、社長の部屋から出てくるの見て追いかけてきたんです!」
「昨日は本当にすみませんでした、あの後こっぴどく怒られてしまって…って…もう帰るんですか?」
「あ、はい…」
「俺が邪魔したからですよね…」と顔を下に向ける
山川さんのせいじゃない。自分に魅力がなかったせいで振り向かせれなかった。大切な用事の方がもちろん、僕よりも大切だ。…けど…
「山川さんのせいじゃないですよ!気にしないで」と言ったところでチーンとエレベーターが着く音がした
「では…」と言うと「僕も乗り込んでいいですか?あ!一応僕βなんで!大丈夫です!」と言って許可もしてないのに無理やり乗り込まれた
1階のボタンを押して、少し沈黙が流れたあと、山川さんが喋り始めた
「社長とはどこで出会ったんですか?」
「ええっと、昨日のパーティーで…」
「社長と…ってことは?運命の番!?」
「あの!本当に申し訳ないんです!めちゃくちゃ邪魔しちゃったし、本当にどんだけ迷惑かければ気が済むんだよ!って思うかもしれないんですけど、もう1回部屋に戻ってもらうことは可能ですか?お願いします!」と頭を下げられた
もう、戻りたくもない。戻ってきたところで、誰だとかなんで戻ってきたんだとか言われてしまったら、傷つく。
たとえ関係を持ったとしても、捨てられたくない。
「ごめんなさい…」
「そうですか…どうしてもダメですか?何でもします!お願いします!じゃないと、もう1回社長に怒られちゃうかも…!そしたら、僕クビに!」
「あなたは出ていけって言われたわけじゃないんですよね?」
「そうです…けど…」
「無断で、勝手に帰ろうってことですか?」
「そうですね…でも、特に何も無いですよ、だから、安心してください。怒られませんから」と言ったところで1階です。という女性のアナウンスが入ってドアが開いた
僕は、迷わず出ていった。しかし、山川さんはそれを聞いてもなお諦めきれないのか着いてきた
「お願いします!戻ってください!!!僕、全然仕事できなくて…この前も秘書なのに、打ち合わせの時間、間違えて社長に伝えてちゃって、今度なにかやったら切るからなって鬼の形相で言われちゃったんですよ!帰っちゃったらクビ確定に…」と半泣き状態
山川さんに申し訳ないけど、今から行ったところで、僕にできることはない
このまま夢のままで終わりたい
「・・・これからバイトがあるから、ごめんなさい。それに、社長さんにはきっとたくさんのオメガがいると思うから、僕が居なくても大丈夫だよ」と笑顔言って振り返った時「あっ…待って、社長は!」と言う山川さんの声が聞こえたけど、ホテルを出て、自宅へと向かった
自宅に着くといつもみている風景なのに、寂しく感じた
もう二度とあの人に会えないんだという事実が僕の心を埋めつくした
どうせ、幸せになれない運命なんだし、行かなければ…って…加藤さんがせっかくチケットくれたんだし…僕って最低だなぁ…自分のことが上手くいかないってかると人のせいにする
「はぁ…ダメだなぁ…」と考えてたら一気に体が重くなって、熱を帯びだす
辛くて壁に寄りかかりながら座り込んだ
「バイト…連絡しないと…」と思い、立ち上がって部屋を出た
携帯電話がないので連絡する時はいつも大家さんの携帯電話を借りている
大家さんにバイトの件を伝えると「とにかく休みなさい!連絡入れておくから!」と言われ、感謝を述べて部屋に帰った
それから、脱いだスーツに染み込んだ運命の番さんの微かな匂いを嗅いでいると、ポケットに運命の番さんの名刺があった
なんか、気になって後ろの面を見てたら、電話番号が書いてあった
その時は頭もぼーっとしてたし、気にもとめず匂いに夢中になった
それからスーツより匂いの強い名刺の匂いを嗅いで一週間あの人のことを思い出しては泣きながら1人で自分のを治め続けた
どうしても、頭の中がその人一色になって…でも、理性では会えないってことが分かるからごっちゃごちゃになって、泣きそうになるし、どうしたらいいかわかんなくなる
こんなにも辛い発情期初めてだ。運命の番さんが言ってたことわかった
今までは別に辛くなかった。立ったら出して中いじって、気持ちよくなって終わり。だけど、ずーっと運命の番さんのことが離れない
そして、辛い発情期を乗り越えて清掃のバイトに行くと休憩室で、加藤さんにニヤニヤしながら近づいてきた
「どうだったのよ!!!!」
「どうって…?」
「パーティーよ!!!運命の番に出逢えたから発情しちゃって1週間休んでたんでしょ?」
「あ、まぁ…でも…結局一人で過ごしました…」
「え!?とんだクズ野郎だったってこと!?」
「あ、いや…その逆です。むしろ、僕には勿体ないくらいの人でした…。だから、釣り合わないって分かって逃げてきちゃったんです。それに、あの人といると、全部マイナスになっちゃうんです。聞いてもないのに、奥さんがいるんじゃないかって…」
よく考えてみれば、そんなふうに思ってしまう僕がおかしいよね…
「そっかー。まぁ、私たちベータでもさ、素敵な人がいた!って思ったら既婚者だったーってことあるからね~。そのかっこいい?アルファだったら、尚更そう思っちゃうのもわかるよ。私にはアルファとオメガの関係性なんてわかんないけど、あんまり、落ち込まなくてもいいんだよ!まだαはいるでしょ?」そう言われて、休憩室を出ていってしまった
だけど、この世に1人しかいない運命の番。それに、ここ数年ずっとアルファに会いたくて1番日本でいる確率が高い東京に来たのに、誰一人として見つからなかったし、もう、これから誰にも愛されないってことが確定してしまった
ずっと、運命の番に会いたくて生きていたから、生きていく意味が無くなった。あとは、借金を返すだけ。そう思いながら仕事着に着替えて仕事へと向かった
仕事を終えて、休憩室に戻って着替えていると、加藤さんと最近入ったばかりの、ギャルっぽい見た目をした人が入ってきた
「お疲れ様です」
「「お疲れ様です」あっ!そうそう!この子が言ってた千紘くんね!」
「うっす!私、美琴って言います!おねしゃす!」どうやら、悪い人では無さそうだ
「千紘って言います。よろしくお願いします」
「え!千紘ってあの、某アニメ映画に出てくる主人公の名前じゃないすっかー!」
「あ、うん…」
まさにそう。小学校とかで、自分の名前の由来を聞いてこいみたいな宿題があった時、母に聞いたら、僕を授かる前から僕にあまり興味がなくて適当に再放送してた某アニメ映画に出てくる主人公の名前にしたと笑いながら話された。だから、特に意味は無いんだと
「あ、それでね!この子今凄い落ち込んでて、美琴ちゃんのギャルパワーで元気づけてやって!」
断るかなーと思っていたら
「いいっすよ!大歓迎っす!じゃあ、近くのファミレスでお茶しましょ!」と言って、流れのままファミレスに来てしまった
事の経緯を詳しく聞かせてくれって美琴さんに言われたので、全て事細かく話したら
「んー…千紘ちゃん、めっちゃ思い込んじゃうタイプなんだねーまぁ、でも気持ちはわかる!うんうん!けど、その運命の番さんは、千紘ちゃんが理由もなく離れたら、運命の番さんは、どう思うっすか?」
確かにそうだ。自分の事ばかりで、運命の番さんのこと考えてなかった
「運命の番さんともう一度会ってみなっすか?それに、助けてくれたんでしょ? なら、尚更お礼言いに行かなくちゃ!」
「私もそうだと思う!」
確かに、普通に考えて失礼だったかも…うんうん…謝りに行かなくちゃ
「ありがとうございます!お休みは取れないので、明日お昼ぐらいに行ってみます!」
***
???side
「××です。はい」
「無理やりな流れでしたけど、誘っときましたよー!」
「頼まれてないですけど!!!!近くの従業員さんにあの子のこと嗅ぎ回って聞いてきました!」
「父親に捨てられて、母親の借金を肩代わりしてこっちに来たんですってーーーー!というか、まぁ私が言わなくても会った途端に全部調べてますよね?笑」
「怖っ。どのホラーゲームより怖いっすわ!あで!バイト3、4個掛け持ちしてるらしいですよ!あ、あと、運命の番に憧れてるらしいです。今後もご要望通りにしますので」
「では…」
「んっーーーー疲れたーーーー!酒だ!!酒!浴びるように飲むぞーーーー!」
***
千紘side
あれから、家に帰ると借金取りの人がドアの前にたっていた
「あっ!やっと帰ってきましたねーいつ1500万返してくれるんですかー?」
「1500万!?え、前までは1000万だったじゃないですか!?」
「あなたのお母様が、また借金して膨らませたんだ!今まではパチンコだったけど、競馬や、競輪、後オンラインカジノ。前までは、パチンコ行って寝てみたいな生活だったがどうやら、一日中ギャンブル三昧になったらしい。もうここまできたら、あんたの身体から払ってもらわないと困りますわ~」
「そ、それだけは…もう少しだけ待っててください。給料日はもうすぐなんで…」と言うとドアを蹴って「毎回毎回そう言うけど、万札で返してくれたことあった?待ってたのにさぁ~返さないつもり?なのかなーー?wwwwww」
「…ちゃんと…返します」と言うと僕に近づいてきて「1500万きっちり払ってもらうからなぁ?あぁ?」と耳元で怒鳴り、帰って行った
ほっ…まぁ今日は恐喝だけだったからよかった、、、。この前なんか暴力振るわれて、大変だった。まだその傷がたまに痛むし
この1500万の借金は母の借金だ
最初は100万だったのにまた1500万まで膨れ上がってしまった。母に払わせれば済む話だが、母の行方は知らない。勝手に増やされ、勝手に夜逃げし、連帯保証人としてこっちに回ってくる。僕も夜逃げしたいなんて考えたことあるけど、住所がないと働けない。それに役所に逃げ込んでも、あなたの責任ですって見放されるだけ。
運命の番に出会いたいってねがってたのもこの生活に少しでも希望を持ちたかった。別に、運命の番さんに払わすとかそういうのじゃないけど。
希望がない中でそれしか浮かばなかった。生きていくためにはそうやって考えるしかなかった。
なのに…目に涙が滲む
「ズズッ…」鼻をすすって、部屋に入った
それから、数時間だけ寝て、居酒屋のバイトに行って、帰ってきて、新聞配達して、また少し寝て、清掃のバイトへと向かう途中で、謝るんだったら、何か菓子折り持っていかなくちゃ行けないなーって思って、百貨店に行って目ん玉飛び出るぐらい高い菓子折りを買った
「はぁ…僕の1ヶ月分の食費ぐらい高かった…泣きそう…」と目を潤ませながらもあの人の元へ行こうと思い、ポケットの中から名刺を取り出す
ここからまぁまぁ近い距離だったので、電車で行かずに人にどこか聞きながら、たどり着くことができた。だけど、予想以上に会社のビルが高かったし、僕の貧困層エリアとはかけ離れたところだったからだいぶ時間がかかった
ひぇ~…なんかもうちょっとこじんまりしていたところでハゲたおじさんが会社運営しているイメージだったんだけど…
これは、入りにくいな…でも、ちゃんとお礼言わないと人としてどうなんだ!と自分に気合いを入れてビルへと入っていった
入ると中は予想以上に広くて凄いと言う感想しかでてこない
「わぁ~綺麗だなぁ~」なんで上を見上げてたら、人にぶつかってしまった
「チッ!危ねぇな!」と怒鳴られてしまった
「すみません、すみません」と頭を下げる
いつも周りのことが見えない
僕もこんな会社に入れたら…もっと別の感じで社長さんと会えたのかな…
でも、僕には学がないから出来ないやと諦めてエントランスに行くと
「あの…社長さん?と会いたいんですけど」と言うと真顔で「アポイントメントはされていますか?」と訳の分からない単語を言われた
「えっ?」
アポイントメント…?
「あっ…アポイントメントの意味がわからないんですね…ふふっ…まぁ、その格好じゃ無理もないか…ふふふっ」と小馬鹿にされた
確かに、シャツに長ズボンだし…襟だって着いてない。この格好がまずダメだったか…
「アポイントメントってのは、予約って意味で~してますかー?予約!」
予約はしてない。なんにも伝えずに来てしまった
「してないです」
「じゃあ、無理ですね~お引き取りください」と笑い混じりに言われた
「すみません」と最後に告げて、出口へと向かった
日を改めてまた来よう。その時は電話して…などと考えてるとまた誰かにぶつかってしまった
「わっ!すみません…本当に申し訳ないです」と謝ると「あっ…こちらこそすみません」と言い思わず顔を見た時、見覚えのある顔だった
「あっ!山…さん?」
「山川です!!!あなたは!エレベーター出会った人!」
「はい!」
「で、どうしたんですか?」ときょとんとした顔で聞いてくる
「ええっと…社長さんに会いたかったんです。でも、予約?アポイントメント?取ってないから、無理だって言われてしまって…」
「社長ならこの時間帯お昼休みだから、多分空いてると思うんですけど…忙しい人ですから、分かりませんけど、一緒に行ってみませんか?」と誘われた
けど…この服装じゃ…さっきみたいにまた笑われるかも
「いや、また日を改めて…」
「改めなくていいです!さっ!行きましょ!」と強制的に腕を引っ張られて連れていかれた
警備員さんに止められそうになったけど、山川のお友達デース!変なことしても山川が止めるんで大丈夫デースと声を掛けて何とか抜けてきた
警備員さんたちは全員不思議そうな顔してたけど…
それから、エレベーターに乗って最上階まで行く
「で、なんの用事でここに?」
「あ、この前発情しちゃって迷惑かけたんで菓子折りを、、、」
「そうだったんっすね!社長そこまで気にしてはないと思いますけど、、、」
言ったところでエレベーターが止まって最上階です。と言う機械音の女の人の声が聞こえた
2人とも降りると、目の前には長い廊下があってその奥には両開きのドアがある
「毎回ここに来ると緊張するんっすよね!緊張してるっすか?」
「あ、はい…」
「そうっすよね!同じでよかったぁ社長室に行くのはだいたい怒られる時かパシリなんで笑さっき、エントランスに行ったのもパシリだったんで笑」と苦笑いする
大変そうだなぁ~山川さん
なんて話しながらドアの前まで来た
山川さんがノックして「山川です~失礼します」少し声が低い感じで「はい」と言った
少し機嫌が悪いのかな…大丈夫かな…と固まっていると山川さんにどうぞと言われて扉を開けられた
「し、失礼します!!!」
こんなことやったことないから緊張するなぁ…大丈夫だったかな…顔赤くなってないかな…と不安なことがぐるぐる回る。視界がぐらついて見えなくなってわけがわからなくなる
「あ、あの!これ!」と差し出すけど、社長さんは椅子に座っているわけで、誰にもいない場所にお菓子を渡してしまった
「あっ…あっ!」
「落ち着いてくださいっす」と普段落ち着きのなさそうな山川さんに言われハッとして冷静さを取り戻した
その間に社長さんが僕の目の前に来ていて眩しい顔面がこちらに向く
「ええっと、その…この前のパーティー覚えているかどうか分からないんですけど、とりあえず…お礼と謝罪がしたくて…」
「アルファさんから助けてくれてありがとうございました。あと、変なところで発情して迷惑かけてごめんなさい」と頭を下げて謝った
顔を上げて「これ、お詫びの品です!」とお菓子を押し付けた
「あぁ…大丈夫だよ。それにもう二度と会えないかと思った。心配してたよ」とさっきの『はい』とは違って優しい声が耳に入った
「有難くいただくよ。君からの最初のプレゼント。あぁ、俺こそ、同意もなしに連れ込んでしまって…すまなかった」と謝られた
「あっ!いえ、そんな…」と答えると「謝罪と言ってはなんだが、お昼ご飯をご馳走するよ、まだ食べてないだろ?」
確かに、まだお昼ご飯は食べてない。けど、食べました!の方が相手にとってはいい印象なのか?どっちなんだ?と考えているうちに先にお腹の方がなってしまった
「ふっははは!お腹の方が先に答えるとは!思いもよらなかった!」
かァァァァ…恥ずかしい…こんな姿見られるなんて…やめてぇ~僕のお腹ぁ~
「じゃあ、山川、いつもの用意してくれ」
「はい、かしこまり~」と敬礼して出ていってしまった
「千紘くん、座って」と社長さんのデスクの前にあるソファーに案内された
ソファーに座るとふかふかで顔が緩んでしまう
社長さんは僕の前のソファーに座る
「早速なんだが…どうしてあの夜居なくなってしまったんだ?あっ、でも、同意がなかったからだよな…。すまなかった」と悲しそうででも優しそうな顔と声で聞いてきた
「あ、謝らないでください!全部僕が悪いんです!あの時薬もなしに、パーティーに行ってしまって、、、。それに、自分が嫌で逃げ出したんです。心配してると思わなくてごめんなさい…ずっとそう思わせてしまって…」
「自分が嫌って?」
「ええっと…社長さんのこと悪く思ってしまった。というかなんというか…」
少しだけトーンが低くなった声で「どういうことだ?」と聞かれた
「ええっと、聞いてもないのに奥さんがいるんじゃないかとか考えてしまって…そんな感じです、、、。不倫関係みたいな。イケメンだし、他のオメガさんに結構囲まれてたから、、、」
「ちなみに、奥さんはいないから安心してくれ」
えっ…奥さんいないの!?
あっ…でも好きな人は…恋人はさすがにいるかな…
「恋人もいない。気になってるのは千紘くんかな…。俺はもっと千紘くんのこと知りたいんだ」と真っ直ぐ目を見つめて言われた
・・・
えぇ!?もうそんなの告白じゃん!
あ、でもそういう幻想を見ているのかも…
だってこんな人が僕のことを気になってるなんて…自惚れちゃダメだ!などと考えているとガチャといってドアが開いた
「はいお待たせしました~うなぎです~」
「チッ…クソ川」って言う小さい声がしたけど、そんなこと言う人じゃないし気のせいだよね…
僕の前にもうなぎというやらが置かれた
「わぁ~美味しそう~」と言ったもののなんだこの茶色い食べ物は…
うなぎって何?お肉?豚肉?
スーパーで…なんか見たことある気が…
1つ2500円ぐらいするやつじゃないか!?
高いやつ…食べたことないけど
ゴクリッ
「食べないのか?もしかして、嫌いだったか?」
「あっ、いや…むしろ大好きです」と言って割り箸を取った
食べれる分だけ取って食べてみる
とてつもなく美味しいいいいいい!!!!
美味しすぎて目を見開く
「ふっ…そんなに美味しかったのか?」
「はい!とてつもなく!今まで食べてきた食べ物の中で1番美味しいです!!!」
「喜んでくれてよかったよ…それと…さっきの話の続けなんだけど、どこかの日に会わないか?もちろん、全て私持ちだ。交通費だってだす。そうだな…毎週金曜の夜に会わないか?」
「・・・えっと…」
毎週金曜の夜か…金曜日の夜にシフト入れなければいいか!
「大丈夫です!」
「ありがとう…嬉しいよ」と優しく微笑まれた
一瞬固まってしまった
イケメンさんだからかな…
なんか、頬が赤くなった気がして下を向いてご飯を食べる
にしても美味しすぎるっ
そして、ご飯を食べ終わった
先に、社長さんは食べ終わってしまっていた
「ご馳走様でした」
・・・
なんか、気まずい…
「じゃ、じゃあ、帰りますね…お邪魔しました。それにご馳走様でした」と言い頭を下げる
「まだ、いてくれてもいいんだが…千紘くんの予定もあるよな…また金曜日に会おう…あっ、そうだな…どこで待ち合わせようか…」
「・・・ええっと…ここの会社の前で待ってます!」
「いや、待たせる訳には…」
「いいですよ!」
「じゃあ、家まで迎えに行こう」
それは絶対ダメだ!あんなオンボロアパート…大家さんには申し訳ないけど…見られたら終わる
「それこそダメです!」
「なんでだ?」
素直に言えるわけない
「ええっと…こういうの両親に言わないと…」
あくまで良い育ちの人を演じないと
「それじゃあ、挨拶をしに行こう」
「あっ、いやいや、それもダメで…両親は今病気で人に会える状態じゃ…」
「なら尚更…」
「いいんです!」
両親がいないってことがバレたら尚更やばい
これ以上嘘を重ねたらやばい
「僕はいいんです!じゃあ、ここで待ち合わせってことで!」と立ち上がった
ドアの前に立つ
社長さんも来てくれて「じゃあ、金曜日に…」
「ありがとうございました」と頭を下げてドアを開けようとドアノブに手をかけると
「1回抱きしめてもいいか?あっ、すまなかった。つい口が…忘れてくれ。もう少しちゃんとしたところでやろう」
「・・・で、では…」と言って無理やりドアを開けて部屋を出た
わーびっくりした…
僕、抱きしめてもいいか?なんて言われたことないし…
ドキドキしちゃった
金曜日もこんな感じなのかな?
心臓持たないよーーー!
それから、普通の日常に戻った。
バイトして、寝ての繰り返し
でも前の日常と少し違うのは、バイト中とか暇な時に社長さんのことを考えてしまう、、、
これが運命の番の力かーなんて呑気に考えてた。
そういえば、デートの格好ってどうすればいいんだろう、、、
この前の服で行ったら同じもの着てる。貧乏人だ!普通のオメガじゃない!ってみすかされちゃう
それに連絡先とか、携帯電話とか必要だよね、、、
お金が必要になってくるのか、、、と肩を落とした
落ち込んでる最中に、ドンドンドアを叩く音が聞こえた
「いるのはわかってるんだよー?耳揃えてちゃんと返さないと!」と、ドンドンドアを叩く
近所迷惑になってるし、ドアを開けると、押し入られた
「へぇーこんな古臭い家に住んでるんだ」と言い靴も脱がずに入っていく
「で、お金は?」
「へそくりみたいなもんないのか?」と言いながら、箪笥や、押し入れの中を見るけど、本当に何もない。あるのは最低限の服と部屋の真ん中にある敷布団だけ。
「娯楽のもんとかあると思ったんやけどなぁ…ないんか…お金もないようだし、ストレス溜まっとるから殴って帰ろっと」
「じゃあ、歯ぁ食いしばれよ!!」と言われ、目を閉じて言われたように歯を食いしばる
「やっぱ、いいわ。あぁ…辞めや辞め!弱いものいじめしてるみたいやわ!それより、もうすぐで借金2000万に到達するで。体売る日ももう直ぐやなぁ」
「あ、あの…体売ったらお金今以上に入ってきますか?」
「そりゃバイトとは全然違うわ!娯楽もできるようなる。買えなかったもんも買えるようになる」
今からお金を借りてここから体売って稼ぐ、、、僕に残された方法はもう一つしかないのかも、、、
でも、それがバレたら、、、終わる。けど、どうせ結ばれないし、、、なら、少しでも夢を見たい
「分かりました。体売ります、、、。でもキャバクラとかにしてくれませんか?」
「おうおう。わかった。とりあえずキャバクラ希望ってことだけは上に伝えとくわ。オメガでもキャバクラ人気はすごいからなぁ。だけど、お前のその顔じゃあ、キャバクラで売れるか分からんけどな。まぁでも、これは俺からの温情。仕方ないからな」
「それと、5万ほど貸してもらえませんか?」
「いいんか?それで本当に。お前のかぁちゃんみたいになるぞ」
「・・・はい」
「分かった。じゃあ借用書準備するからな。今必要なんやろ?」と言いヤクザさんが財布を取り出して5万円を差し出した。
「今度借用書作って持ってくるから、そっから利息が発生するってことだ。その前に返せたら5万は無かったことにしたる!そのかわり!キャバクラで働くことは絶対ってことなからな!」と言いって去っていった
良かったのかな。絶対悪い道に進んでる気がするけど、、、これで、アルファさんの隣に立っても大丈夫なような服を着る!
そして、金曜日の朝
安い海外製の携帯電話を新しく買って、お昼頃に、服を決めた。普段買わないような値段の服。
デートでお金なしは流石にダメなので、余ったお金はデートに使うように財布の中に入れた
そして、夕方
歩いて社長さんの会社に行った。
疲れたけど、社長さんに会えるって思ったら疲れも吹っ飛んだ。
数分待ってると会社から出てきてくれた
「千紘くん、久しぶり。じゃあ行こっか」と言われて隣を歩く
「少し言ったところに美味しい店があるんだ」
「そうなんですか!?楽しみです!」
と言い案内されて、ビルの中に入っていく、エレベーターに乗って、最上階まで行く
エレベーターのドアが開き、前にはお店の人が、頭を下げて待っていた
「お待ちしておりました。東城様。ご案内いたします。」
案内されたのは東京の景色が一望できる席に案内された
「この度はご来店誠にありがとうございます。今回は東城様のために特別に買い切りにさせていただきました。それと特別に東城様のお好きな赤ワインをサービスさせていただきます」と言いワイングラスに赤ワインを注ぐ
では、ごゆっくりお過ごしくださいませ」と言って頭を下げてどこかに行ってしまった
貸切!?お金持ちってこんなにスケールが違うのか、、、それとも僕が貧乏すぎるだけ?
「千紘くんは、お酒が飲める年齢か?」
「え、あぁ!はい」
「ならよかった。もしかしたら、高校生ぐらいなのかと思っていた。ワインが苦手なら、他のものもあるみたいだから、どうする?」
ワインといえば高い!ここは、普通のオメガってのを見せるチャンス!
「ぼ、僕はいつもワインを飲んでるんですの、、、ほほほっ」
あぁ、なんかミスった気がすると思いながらワインに口付ける
「ゴホッゴホッ」
飲み慣れてないからなのか、アルコール度数が高めで、喉に入った時に、熱くなってむせてしまった
恥ずかしい、、、何がいつも飲んでるだよ!
「大丈夫かい?無理して飲まない方がいい。少々このワインはきついから」と言われ、お水を飲み、オレンジジュースならあるということなのでオレンジジュースを注文した
「ごめんなさい」
「いいんだ。大丈夫。もっとソフトなワインにすればよかったな」
「いや、実は、あんまり飲み慣れてないと言いますか、、、」
今更、実は飲んだことないなんていえない。ほんとバカ!でも、貧乏人だって思われたくない。少しでも普通になりたい。ならなくちゃ!
そう思ってることはうまくいかない。ホークとナイフの持ち方、間違えちゃうし、やっちゃいけないことばっかりしでかした
これじゃあ幻滅されるだけだ。
「あ、あの、間違えてばっかりでごめんなさい。そ、その…あんまりこういうの食べてこなかったっていうか、、、家族では和食屋さんとか、その回転寿司とか、そういうところしか行ったことなくて…」
全部嘘。悔しくて拳を握りしめる。全部行ったことない。家族なんか借金残した母親しかいない。父親は姿を消してどこかに行ったしたし、外食になんか行ったことない。
僕が憧れてたところを言っただけ。でも、社長さんは優しくて「じゃあ、やったことないことしようか。今度は。どこ行きたい?教えるよ」
嘘ついてる自分が情けなくて涙が出そうになる。「ありがとうございます、、、嬉しいです!」
ネガティブな考えだからかもしれないけど、こういう高級なところに連れてこられたのも、貧乏な君とは違うよってことなのかな…
いやいや!優しい社長さんがそんなこと!?さっき言ったように本当に僕に新しい体験をさせたいだけかも、、、
こんなふうに考える僕が嫌いだ…。僕じゃない人がこの人には似合ってる。
でも、今だけは、この人の隣にいてもいいよね…。結婚とかありえないし…
「千紘くん?大丈夫?進んでないみたいだけど、、、美味しくなかった?なら他の店に、、、」
「あ、いやいや!美味しくってすごく美味しくって!1人で感動してました!!!ごめんなさい、そんなふうに思わせてしまって…」
「いや、謝る必要はないよ。あぁ、あと、千紘くんの好きなこととか物とか教えて欲しい。それに合わせて一緒にいろんなことしようか」
「あぁ、ええっと…」
好きなこと…好きなこと…
「食べることですかね…」
「そうか、じゃあまたフレンチじゃないところに行こうか。あの日約束した日からずっと楽しみに金曜日のことを待ってた」
「え、あ、ほんとですか?実は僕もです!」
ニコッと爽やかな笑顔を見せてから「じゃあ、これから毎週の金曜日は、一緒にデートしようか」
「ぼ、僕はいいんですけど、社長さんって忙しいって聞きますし、大丈夫ですか?」
「千紘くんのために仕事早く終わらすよ。そっちの方がやる気出るんだ。あぁ、そう言えば、千紘くんは学生?」
実は、高校も行ってないなんて言えない。中学校は、かろうじて行ってたけど、みんなが高校生になった頃、僕はずっとバイトばっかりだった
でも、そんなこと言ったら幻滅される
「ええっと、、、だ、大学生です…」
また、嘘ついた。申し訳なくて俯く
「そっか。大学生なのか。お酒飲めるってことは大学3年生ぐらいか?」
そうなのか?よく分からないけどとりあえず「はい」という
「就活早期化みたいなことも聞くし、もし決まってなかったらうちの会社に来て欲しい」
「え!そんな…無理ですよ!だって大企業じゃないですか!それにコネ入社っていうんですか?そういうことですよね、、、」
「まぁそういうことになるけど、、、千紘くんは素直だし可愛いし優秀だと思うからさ、みんなも同意してくれると思うよ」と褒められた
褒められたことない僕のついた嘘経由だったとしても、すごく嬉しかった
でもこのまま行くと流されて本当にみたいなことになってしまったら今までの嘘がバレてしまう。
「あぁ、でもやっぱり社長さんの信頼にも関わってきますし、、、そ、それに内定ももらってるので」と嘘に嘘を重ねる
「そうか。だが、と言いたいところだけど、しつこい男は嫌われるからここら辺にしておくよ。いつでも内定がなくなったらすぐに知らせてくれれば雇ってあげるから」
「あ、ありがとうございます」
それからは、夜景を見ながらたわいもない話をした。
この時間が一生続けばいいのに、、、そう思ったけどお店を出ることになった
もうお会計は済まされていたみたいで、ご馳走になってしまった
エレベーターに乗る前にお店の方から「本日は誠にご来店ありがとうございました。東城様、今後とも何卒よろしくお願い申し上げます」と、深々と頭を下げられた
そして、エレベーターに乗った
「あの、ご馳走様でした。美味しかったです」
「よかった。あぁ、夜道暗いだろうからよかったら送っていくよ」
「あぁ、いや」あんなオンボロアパート見られたら終わる。今まで嘘ついてたのが全部崩れる
「歩いて帰れる距離なので」
「それでも、オメガの夜道は危ないだろ?」と言われてしまった
必死に頭を回転させて、知らないマンションに下ろしてもらえればいいんじゃないか!?という考えが浮かぶ
「じゃあ、お言葉に甘えてお願いします」
ビルを出たところに一台の高級車とスーツを着た、紳士そうなおじさんが立って、社長さんを見つけると深々と頭を下げた
「待たせて悪かった」
「いえ、東城様」と言いドアを開ける
社長さんは、車に乗り込む
「千紘くんも乗って」と言われ「じゃあ、すみません」と言い乗り込む
座った瞬間にふかふかな椅子でびっくりする
「千紘くんの家まで乗せていってくれ」という
「千紘様、住所や目立った場所を言ってくだされば、、、」
「ええっと、、、」
これで本当の住所言ったら終わる。
「とりあえずまっすぐいっていただいて、、、」
「…わかりました」
近くにちょっとぼろそうで安そうなマンションがないか探す
都市中心部を抜けたところらへんで良さげなマンションがあったので、ここで下ろしてくださいと言った
「かしこまりました」
社長さんに向かって「今日は何から何までありがとうございました」
「あぁ、楽しかった。また、じゃあ来週の金曜日に。千紘くん、手出して」
と言われて手を出すとそこにキスされた
!?
「今度はもっと、千紘くんと居たい」と言われ顔が赤くなる「ええっと、ぼ、、僕もです」と言った後、顔が近づいてきてキスされるかもって思ったら首にキスされた
「唇にされると思った?」と言われて目が泳ぐ
顔を赤ながらもコクっと頷く
「それはまた金曜日にしようか。千紘くんにどうしても会いたいんだ。こうでもしないと会ってくれないだろ?だから、お預け」と言われた
顔も相待って、ドキッと胸が高鳴る
「はい」
「じゃあ、おやすみ」と言われた
車を出てお見送りをする。冷たい風が現実を知らせてるようで少し悲しくなる
まだ熱が冷めきってないけど、明日もバイトだ。帰らないといけない。と歩いた
東城side
千紘くんが帰ったせいか、急に車内が寒くなった気がする。
普通のオメガに見せようと嘘までついて俺に繕ってくる姿が健気で可愛くていじめたくなる
キスをお預けにしたのも、金曜日が近づいてくるたびに俺のことを思い出せるようにするため。脳内を全部俺で埋めたい。千紘くんの感情を全部俺で埋めて欲しい
あえてフレンチに連れていったことも大学生じゃないことも、全部知ってて質問した
千紘くんは、普通はフレンチに行かないってことも知らない。だから、普通を装ってくるはずだと見越した。案の定、頑張って見繕ってたのが、とっても可愛かった
千紘くんが家だって嘘ついたマンションも、千紘くんは知らないだろうけど家賃が10万ぐらいするマンションだ。それにここら辺に大学はないし、大学生にその家賃を払えるはずがない
千紘くんは俺に見つかってしまったことが、唯一の失敗。
千紘くんの借金を全額返せば、千紘くんは
俺から離れることができない
でも、もう遅い。
見つかってしまったのだから。
千紘くんを追い詰め、誰にも頼れない状況にして、最後に「救済者」として現れるのは俺だけでいい。
***
作者です。本当は分割して投稿したかったんですけど、忙しくて出来そうにもないので一気に投稿します、すみません🙇
山川side
社長のオメガさんはホテルから出ていってしまった
あのオメガさんは気がついてないのかもしれないけど、凄い社長は暴君なんだよなぁ~
部屋に行きたくない!いっその事バックレ…いやいや…もっと怒られる…
「はぁ…」
どうすればいいんだろう…
素直に逃しました~ってアホなフリして行くか…そう決めて社長の部屋へと向かった
部屋のチャイムを鳴らすと、焦ったような顔をして社長がでてきた
「なんだ、今忙しい」と言ってドアを閉めようとする
「ええっと…その…社長のオメガさん……もう出て行かれました」と言うと「そうか…そうだったんだな」と拳を壁にぶつけた
こわっ!山川怖すぎておしっこちびるわ!
この姿、オメガさんに見せたい
「おい、クソ川何考えてる」
「あいや、何も…」
「お前ダッシュで見つけてこい。早く」と言われ締め出された
しょんぼり川ですわ…毎日こんなことばっかり川
探しに出かけます川