テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
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︎︎⚠︎︎注意⚠︎︎
・ご本人様方には一切関係がない
・捏造、妄想要素が激しい可能性あり
・特徴を捉えきれていない部分が多々あり
・恋愛要素が今後恐らくきっとほぼない
・868のBOSSたちがロスサントスに入国する以前の物語
・投稿頻度がノロマかつ不定期
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凄くお久しぶりです!
長らくお待たせしていましたが、無事最終話まで描ききれました〜。修正が終わり次第、順次公開しますので、あと少しお付き合い下さい。
ひとまず、個人エピソード編はこれが最後です!
行ってらっしゃいませ〜!!
「音鳴さん大丈夫?相打ちした犯人も護送したいとこだけど、一旦ね。」
「ちょっ、刃弐。俺担いだままあっち進んでくれん?」
「え、何かあんの?」
「あいつ影消して奥の部屋守ってたんよ。絶対何かある。」
「OK、敵は居ないんだよね?」
「部屋までなら、大丈夫やと思う。」
ここ周辺の熱源は1つ(敵)だったため、ただの駒に過ぎないと思っていた。サーマルでははっきりとしなかった奥へと続く道、建物の構造を地に足つけて更新する。念の為クリアリングをしていき、なんとか部屋へと辿り着いた。勢いよくドアを開けて銃口を向ける。その先には、俺たちが探していた上官、ヨージローさんがぐったりと倒れていた。すぐに駆け寄って脈を図るも命に別状はない、彼は無事だったのだ。音鳴さんからの催促もあり、俺はヨージローさんの安否と2人の状況を無線で聞く。
『芹沢さん、蓮くん?そっち大丈夫?』
『……、もしかしなくても捕まった?一応、音鳴さん助けに行ったんだけど。』
『──────。』
あの日起こった事件が、昨日のことのように思い出される。一通りパトカーの整備を終え、俺は晴天の下で伸びをした。ヨージローさんがつい先日復帰し、無線からは聞き慣れた声の報告が聞こえてくる。忙しないあの日常が、相も変わらずやってきたのだ。
(“変わらず”。いや、あれからだいぶ変わったか…。)
というのも、まずランクの制度がまるっきり変わった。前までは、全く身にならない試練、数字(ランク)と割に合わない給料、ランクを上げるメリットなんて微塵もなかった。しかし、今では限られた上官がきちんと試験官を担い、数字に伴った給料が貰えるよう改定されている。元々牢蓮(ろれ)さんとランクを競っていたこともあり、給料が振り込まれた時はさすがにビビった。なんせ、タバコ10箱買えるかどうかくらいの額が、50箱とおまけに飲み物が10個買えるほどになったのだ。
(このまま貯めれば、最近ギャングの間で流行してるあの車、買えるな〜。)
ポケットから煙草を取り出し、吸い込んだニコチンでストレスを和らげる。あと変わったことと言えば、[特殊部隊]というものが設立された。一応、所属はしているがやることは前とさして変わらない。しかし、パトロールの義務化と犯罪対応が明確に分担されたことで、働き方に少しばかりゆとりが出来たのは間違いなかった。ヨージローさんが隊を仕切っていることもあり、設立したばかりでも何ら問題なく働けている。
「ばに〜〜。」
玄関から聞き馴染みのある声が聞こえてくる。ピンクの髪をなびかせてこちらに走ってきたのは、最近お疲れ気味のタコさんだった。一段と濃くなった隈を見て、思わずため息がこぼれてしまう。
「昨日新しいパトカー導入してもらったんだけどさ、性能とか色々試してくるから留守番よろしく〜。」
「あ〜、それ俺やりたいかも。ちょうど手空いて暇してたし。」
「ならお願いしようかな、ありがと〜助かる!」
「てかタコさん少し休みなよ。さっきからずっと何かやってるじゃん。この警察署を背負ってる訳でもないんだし。」
「…ん?まぁ休んだ方がいいのは分かってるんだけど、一応署長…だから、仕事してないと落ち着かないというか…。」
「あれ、そうなの。」
「はい?署長になったの前言ったじゃん!聞いてなかったのヤバいで、普通に。」
「フハハハッ(笑)ごめんごめん。何かタコさんから色々共有多いなとは思ってたんよ(笑)…まぁ、とりあえずこれやっとくよ〜。」
「うん、ちゃんとタブレットにも記録しておいてね〜。マジで助かるありがと。」
そうお礼を言って、タコさんは署内に戻って行った。俺はその背中を見て、いつだか言われた言葉を思い出す。
(「別に説教とかじゃないけど、マジで無理はするな。周りの人をちゃんと頼らんと。」)
その言葉をかけるべき人物は、間違いなく今の彼女だった。なんせ、こちらがやりたいという意思を言葉に込めないと、頑なに任せようとしてくれない。先程の言い回しもその癖を見抜いてのものだった。どうしたもんかな、と頭を搔きつつ任された仕事に手をつけ始めた。
「牢蓮さんさ、暇なら一緒にマトリしに行かない?」
「うわ!行こう。」
「ヘリで行く?パトカーでもいいけど。」
「あ、ついに新しいの入ったんだっけ。ならそれでGOでしょ。」
「おっけ〜。」
早番の大型犯罪があまり起こらない時間や、一段落ついてChillっている時間には、花を積んだり薬を練ったりする奴が多い。最近の俺は、その取り締まりでなんとも言えない快感を覚えてしまっていた。長時間かけて積んだ花、丹精込めて作った薬が、俺らの手によって押収された時、犯人の顔はありえないくらい歪む。彼らの費やした時間と苦労など、こちらは知らないし知りたくもないから、尚更清々しいのだ。運転中、顔には出ないようにしていても牢蓮さんは察しているのか、最近楽しそうにマトリしてるよね刃弐、と話を振ってくる。そんなことないけどな〜と返すも、まぁ生き生きしてていいんだけど俺はお前が怖いよ、と言われた。
花摘みの場所には誰も居なかったため、薬の精製所と売人のいる所を巡回することにした。ちょうど大型犯罪を終えたヘリの人にサーマルをお願いしてみるも、精製所付近には誰も居ないらしい。今回は収穫なしか、と呟きながらハンドルをきり売人の所へ向かう。サイレンの音を切ったまま近付くと、フードを深く被った明らかに怪しい人物が、今にも薬を売ろうとしていた。
「いるでいるでいるでー!!カハハッ(笑)」
「いるねぇ〜!」
その後もほくそ笑む牢蓮さんとテーザーを構え、ゆっくり近付いていく。物陰に隠れて売る瞬間を待っていると、ビル風が強く吹き込んできた。俺は目を細め、牢蓮さんは手をかざし、お互い犯人から目を逸らさないようにしている。しかし、同時にその犯人のフードがめくれて、見覚えのある色が飛び込んできた。その衝撃に浸る余地さえ与えないまま、犯人は薬を売り路地を抜けていく。その走る姿、なびく髪、横顔は容易に俺たちを釘付けにした。だってあれは間違いなく……。
『タコさん、今どこにいる?』
彼女がいるはずの無線から、その応答が返ってくることはなかった。
あれから数日経った今日、ヨージローさんの誕生日を迎えた。予約していたはずのケーキが用意できないだの、給料日前だからプレゼントを買う金がないだの、当日に限って大型犯罪が多いだの…。本人の知らない所でトラブルが続く、とんでもない誕生日会は無事に終わってくれた。しかし、撤収作業をやる元気は皆残っておらず、次々と仮眠室に駆け込んでいく。誰もいない会場(2階のデスクルーム)の散らかり様を見て、俺は重たい腰を上げた。タバコを咥えながら何も考えず、ただひたすら袋にゴミを詰めていく。
「あ、後片付けしてる?えらすぎ、ありがとね〜。」
「ヨージローさんこそ、椅子とか装飾片付けてくれたっしょ?主役なのにありがとね。」
「ん、全然大丈夫よ。皆疲れてたろうし、あれくらいやらせてよ。」
「てか、寝なくて大丈夫?」
「ん〜まぁ1本吸ってから寝よかなって。」
「あーね。」
そして、俺が抱えたゴミ袋のうちの1つをヨージローさんは奪っていく。外に出しに行くんしょ?、とどうやら一緒に行ってくれるらしい。
「ん〜なんか皆強いし、もう大丈夫やろ。」
「そうかな。」
「そうよ?刃弐なんかなんでも上手いし、俺ヘリしか出来ないから良いな〜って。」
「(なんでも上手いは)そっちこそ…だけどな。特に、ヨージローさんの報告とかアタックは、中々真似して出来るものじゃないでしょ。」
「いや、俺は見えたものを伝えてるだけだしアタックもまぐれだよ。基本、刃弐とか芹沢の地上部隊に任せてるし。」
「……。」
「ほんとに凄いよ君らは。今日でさらに年食ったけど、君らのおかげでまだ頑張ろうって思える。」
その一言は、シンプルに嬉しかった。何でもそつなくこなすヨージローさんが、俺らを頼ってくれている。つい綻びそうになった口元を覆うと、忘れようとしていたあの情景が思い浮かんでしまった。
(タコさんのこと、ヨージローさんになら…。)
彼なら欲しい言葉をくれるかもしれない、良い解決策を知ってるかもしれない。あの時、2人の内で留めようと提案した牢蓮さんを裏切ることにはなるが、優先すべきは彼女への恩返しだった。
(いつも自分を犠牲にして、溜まった書類の山を見て可笑しくなるような人だ。きっと…。)
俺はそんなタコさんを救いたい。今にも吸い終えそうなのを横目に、いつ話を切り出そうかを見計らう。そんな俺の動揺を悟ったのか、ヨージローさんは鎮火して近くのベンチに座った。
「なんかあった…んだ?」
「……。」
「あれ、違った?俺の勘違いなら…」
「いや、俺ヨージローさんに話したいことあって。タコさんのことなんすけど、あなたを頼ってもいいですか。」
────この時の俺はまだ知らなかった。
美しい花を咲かせる桜の木が、すでに蝕まれていたことに。
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