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「へぇー、ここが守の通ってた学校かー。うちと比べて大きいねぇ」「そうか?大して変わらんだろ」
「すげー!プールが室内だ!」
次の日、紫音がこの辺りを案内して欲しいと、お願いされてとりあえず通っていた小学校へ。
鬼道島とは違うが、山の中故に生徒の数は少ない。
島に比べれば多いが。
ガラガラと車椅子を押す。
「ほかに見たい場所あるか?」
「うーん、親戚の家とかは?今のうちに挨拶しておきたい」
「うーむ、大地だいち達いるかなぁ?」
親戚の名を出す。
「ほぉほぉ、親戚の名は大地と」
「それに妹に理恵りえだな」
「へぇー、2人兄妹?」
「そ、2人ともスポーツが得意なんだ。推薦で街の大きな高校に進学してるのさ」
「ほえぇー、凄そう」
感心する紫音。
「それじゃあ、その人達に会いに行ってみよー!」
「仰せのままに」
ぐっと握りこぶしを天へと振りかざす。
学校を出て、坂道を登り、着きました。件の親戚のお家へ。
「いるかな?いるかな?ワクワク」
紫音は楽しそうだ。
ピンポーン。
家のチャイムを押す。
「はーい」
出てきたのは、体格のいいおじさん。
「あ、えっとお久しぶりです。叔父さん」
「もしかして守君?」
「はい!」
「しばらく見ない間に大きくなったなぁ」
「そこの車椅子の子は?」
紫音に気づき、お互い軽く会釈。
「えーっと、恋人……です」
紫音と付き合ってることを告白。
親戚に紹介するのは恥ずかしい。
「おー!そっか!そいつはめでたい!」
「大地!理恵!守君が恋人連れてきたぞ!」
「おっ、マジで!?」
「守クンが!?」
ゾロゾロと家の奥から出てきたのは、角刈りの少年とショートヘアでボーイッシュの少女だ。
「久しぶりだな、元気だったか?」
「彼女さんこのキャスケット似合うね!」
大地と理恵が口々に質問する。
「まぁ、それなりにな」
「で、どうやって仲良くなったんだ?」
「小さい頃に話したこと覚えてるか?」
「うーん……。車椅子の女の子と仲良くなったってやつか?でもその子、心臓病で長くないって……」
「ところがどっこい、こうして元気になったわけですよ」
「えっ……てことは?」
「奇跡が起きたようです」
「すげーな!愛の力か!?」
「そういうこと」
大地と紫音が盛り上がる。
愛の力を恥ずかしがらずに返事するってすげーよ。
俺は横で顔が赤くなるのを感じた。
「にしたって、守クンに彼女かー。あたしたち置いてかれっちゃったね、大」
「そうだなぁ……。でもこの子はアイツとは違うから同じ轍は踏まんだろ」
アイツ。
その存在を聞いて、俺の鼓動がドクンと早くなった。
「アイツ……?」
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「失言だった。忘れてくれ」
「ん。わかった」
大地の言葉に静かに頷く紫音。
「じゃあ、俺らはこれで」
「おう、これから2人でイチャイチャしてくれ」
「じゃあねぇー」
2人に別れを告げて帰路へ。
「………………」
「………………」
俺たちはで無言になる。
「ねぇ守」
「うん?」
「何があったか知らないし、深くは追求しないけど、僕は君を悲しませないから」
「ん。ありがとう」
小さな集落だが、流石に会わんだろ。
この心配が杞憂に終わることはなかった。
次の日、俺は母に連れられて紫音と一緒に、この地域の生活には欠かせないスーパーへと外出していた。
「野菜にお肉に、あ、醤油と味噌切れそうだったんだ。あんたたちはテキトーにぶらついて良いわよ」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
俺たちはお菓子コーナーに足を運んだ。
「ポテチにチョコにせんべいに」
「見て、守!」
「うん?」
「甘蜜のウェハースがある!」
「おお、こんな所で出会えるとは」
「1人1個ってことで2つ買おうぜー」
「おう!」
カゴにはお菓子がどっさり。
「あとはジュースだなぁ。紫音、何飲みたい?」
「やっぱり炭酸よ」
「おっけー、コーラとサイダーな」
「あれぇ!?誰かと思ったら、元金ヅルじゃない!」
ビクッ。
肩が震える。
「何なにぃ!?今度はこの車椅子の子に貢いでるの!?」
楽しそうにバカにしつつ叫ぶ。
くるり。
こいつに背を向ける。
「ちょっと待ちなさいよ!」
「俺はお前と話すことは無い」
拒絶の意を見せる。
「下着見た事、ここで言いふらそっか?変態に襲われてって」
「見せてきたのはお前だろ!?」
「あらー、そうだっけー?」
ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべている。
「それで?そんなにお菓子買って、この子にどのくらいお金貢いだの?」
「その言い方やめろ!」
「ねぇお姉さん」
空気をぶった切ったのは紫音だった。
「守との間に何があったか知らないけど、一方的に悪者にしたら僕、許さないよ」
紫音の低い言葉に一瞬相手は怯んだ。だが。
「何よ、車椅子から剥いでボコボコにしましょうか?」
相手は紫音に手を加える気満々だ。
「そんなことしていいの?この公共の場で」
「良いも悪いも、アタシの親警察だから簡単に揉み消せるわ」
「やめろ」
今すぐ紫音に手出しをしようとするそいつに詰め寄った。
「紫音に、俺の大事な人に手を出してみろ。許さないからな」
自分でもびっくりするくらい、低く獰猛な獣が唸るような声で相手に言葉を放った。
「ふ、ふん!このくらいにしておいてあげるわ!」
俺がこいつに怒ったのは初めてでは無い。
こいつと別れる時にも、同じく低く声音で関係を絶ったのだ。
「守、無理にとは言わないけど、訊いていい?」
「おう」
「何があったの?」
「アイツとは、中学の時に付き合ってたんだよ。付き合う前は影で自分からスカートめくって下着見せたり、俺の手を掴んで胸触らせてさ。最初はなんでこんなハレンチなことするんだろうって謎だったんだ。けど」
「けど?」
すぅーはぁーと息を整える。
「何度かそんなことがあって、ある日告白されたんだ。向こうから」
「ふむふむ」
「それで俺は嬉しくてさ、即OKしたんだ。そこから地獄の始まり」
「うんうん」
「付き合った直後、あいつは俺にセクハラ行為をして無理やり付き合わされてるって言いふらし始めたんだ」
「なにそれ?あの女、何がしたいの?」
「俺にもわからん。だけどさ、アイツそこそこ可愛くて入学当初から注目されてたんだ。それで被害者ぶって影で俺はアイツの周囲の人間に暴力を振られる日々流石に学校側も動いてくれてさ、そこそこ被害はあったけど、そこまで大きくなかった」
「いや、この時点で大きいって」
「まぁ、学校側からしたらそれっきり問題解決したと思ってたから、それ以降の介入はなかった。ただ、そこからどう話を盛ったのか、セクハラ行為、DV、学校を挟んでの脅迫。全部向こうが仕向けたのに、俺が加害者になってた」
「なにそれ、最悪」
「それでさ、俺は不登校になって、高校行ってもいじめられるのが怖くて中卒で働こうと思ったんだ。母さんに相談したら、せめて高校は出なさいって言われてさ。街の中の高校に寮で暮らすことになったんだけど、1度人間不信になると怖くてさ。結局、学校行けなかったんだ」
「で、島に来たってこと?」
「そう、あの頃の俺はゲームとアニメだけが友達だった」
「そっか。話してくれてありがとう」
「そんな礼を言われることじゃないだろ」
「ううん、守の抱えているものは、僕も背負いたいからさ。不信になったけど、こうやって僕たちは再会できたわけだし」
「ありがとう」
「どういたしまして」
「あ!いたいた!買い物終わったし帰るわよ!」
母から発見されてこの日の買い物は幕を閉じた。