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プロジェクトは、なんとか形になった。ここまできたらあとの運営は、別の部署に任せることになる。
仕事終わりに、簡単に打ち上げをしようということになった。チーム森下とそれに関わった希望者総勢13人が、近くの居酒屋に集合した。
「とりあえず、みんな頑張った!ありがとう!かんぱーい!!」
「「「かんぱーい」」」
「チーフ、あまり飲み過ぎないでくださいね、石をやっちゃった人は深酒はよくないみたいですから」
結城が隣にやってきた。
「ありがとう。もうあんな思いは嫌だから、気をつけるわ」
「結城せんぱーい、私も酔っちゃったら介抱してくださいねぇ、なんならわざと酔っちゃおうかなっ」
日下もやってきた。
「酔うのは自由だけど、俺はチーフの介抱で忙しいから別の…三崎さんとかにお願いして!三崎さん、日下さんのお世話をお願いしますね」
名前を出された三崎が振り返った。
「ん?いいよ、日下さんは可愛いからしっかり介抱してあげるよ」
「えー、私は結城先輩がいいですぅ」
日下は結城の腕をとって離さない。
「ダメだよ、日下ちゃん、結城はずっと一途に森下を思ってるんだから。実はもう付き合ってるんじゃないのか?って話だよ」
「え?なんでそうなるの。付き合ってなんかいないから」
私はキッパリと否定する。
「なんでだよ?結城みたいに森下に尽くしてる男はいないだろ?あんなに思われてるのに、あれか?森下は鈍感なのか?」
「尽くされてる?私が結城君に?」
私は、隣で日下と何か話している結城を見た。
「あれ?気づいてないの?可哀想に、結城のやつ。元々森下のそばで忠犬みたいにいたけどさ、森下が急病したあたりからはその忠犬ぶりはすごかったぞ。森下の書類のチェックや、電話連絡の漏れをすべてカバーしてた」
そう言われてみれば、少し前までは書類の記入ミスでよく舞い戻ってきたことがあった。金額がずれてるとか、英単語のスペルミスとか。それが今はない。電話連絡漏れもない。
「だいたい、森下の好みのコーヒーを淹れられるのも結城だけだろ、な?結城」
「え?あ、まぁ。チーフはコーヒーの酸味も苦味も苦手なので、基本より薄くいれてます、それだけですよ」
「それを知ってるのは結城しかいないってこと。わかるか?森下、おまえ尽くされてるぞ」
_____あ、美味しいと思ってたのは、私のために薄く淹れられたコーヒーだったのか
「そうだったの、ありがとうね、結城君。でももう必要ないから。プロジェクトも終わったし、私のことなんかより自分のことを優先してね」
「もうっ、なんでですかっ!俺はチーフのことが好きなんです、だからやってるんです。どうしてわかってもらえないんですか?あ、もしかして出世したら相手にしてもらえますか?新田さんみたいに」
近くにいた何人かが私を見た。
「え、何、今の」
「新田さんて、あの新田さん?なんで?」
ざわざわしだす。結城の顔色が変わった、言ってはいけないことを言ってしまった…と気づいたらしい。
「関係ないから」
低い声で返す。
「あの、すみません、つい…」
「だからぁ、先輩は私とお付き合いしましょうよ、元彼が忘れられない人なんてほっといてぇ」
_____また、よけいなことを!
「そうね、日下さんとだったらお似合いだから、そうしたら?私は堅実な結婚相手を探すから」
_____やばっ!言ってしまった
「チーフ、結婚相手を探してるんですか?」
「婚活してるんですか?」
ざわざわがさらに大きくなった。ギャンブルのアニメみたいだ。
私は大きくパンパン!!と2回手を叩いた。
「はいはい、この話は終わり。今夜はプロジェクトの成立の打ち上げなんだから、ね?今までお疲れ様、たくさん呑んで食べてくださいね」
もうさっさと結婚してしまおう!と思った。