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  九、雑な世界




リィナは、ミィアが大人しくベッドで寝ているかを確認しに、小屋に入った。


だが、ミィアはベッドの脇に立ててある姿見鏡の前に、全裸のまま座り込んでいた。



「ミィア。そんなとこに座ってないでベッドで休みなさ……」

リィナが目を疑ったのは、さもあらん。


「ちょっとあんた! 何やってんのよおおおおお!」

近付くとミィアは、ただ座り込んでいたわけではなかった。




「え~、なんか、気持ちいくってぇ……触ったらこうなちゃったぁ」

「あほかあああああ! なんで自分見ながらそゆことしちゃうワケ? ヌルヌル増やしてんじゃないわよ!」


「だってさぁ……鏡見たら、めちゃくちゃ美少女。もう、理想通りの美少女が全裸で真っ白な肌でぇ……たまんなくなっちゃうよねぇ?」


「ああもう……。ほっぺをピンクに染めてる場合か! とにかくもっかい外出て洗いなさい!」


「え~? ブランにみられちゃう……」

ちなみに、部屋にはミィアのそれの匂いが充満している。




「いいから出て。匂いが凄いのよ。こっちがクラクラするくらい。てか、こんな甘い匂いするんだ……」


女神の素体は、汗さえも花の香りと決まっている。

ゆえに、どのような体液であろうとそれは、悪い匂いなど一切しない。


「リィナも鏡みてみて~。ぜぇったい、触りたくなるからぁ」

「酒でも飲んだのかよ! 甘ったるい喋り方してフラフラしちゃってもおおおお!」




埒が明かないとふんだリィナは、ヌルヌルの液溜まりの上にぺっちゃりと座っているミィアを、嫌々ながら抱え上げて小屋から出た。


「ドラゴンさん、ちょっと、見ないでくださ~い! この子洗って小屋に入るまで!」


本当に酔っているのか、ご機嫌で絡んでくるミィアに水を出させようと四苦八苦していると……。




《えらく、理解し難い状況になっているな……。風呂を付け足してやるから、中でやるといい。湯も出るようにしてやる》


上から見下ろしているドラゴンはそう言うと、爪を小屋に向けて何やら念じた。

しばらくして小屋が光ると、一回り大きくなっている。


《酒は隠しておいた。後で見つけても、ほどほどにな》


「酒置いてたんかい!」




我慢出来ずにドラゴンにもツッコんだリィナは、全く水を出す気のないミィアを連れて小屋に入った。


寝室の隣に扉が増えていて、木製の広い――足を伸ばして入れるような湯船のある――湯殿が設置されていた。


「ほらぁ。お湯にはいるからね! てか、あんたがベタベタ触るから、私もあんたの液体まみれなんですけどねぇ」


服を着たまま、ミィアを抱えて湯船に浸かるリィナ。

だが彼女は、風呂の壁に備わっている鏡を見て自分も見惚れた。




「……めちゃくちゃ美人系可愛いコじゃん。なんだこれ……絶対ナンパされるやつ……」


「ねぇぇぇ? リィナぁ、かわいいいいいんだから。そしてぇ。私もかわいいいいいいい」


「だから股間触るなって! ヌルヌル止まらないんでしょうが!」

「だぁってぇ。きもちぃんだもん……」


「くそ……。こいつ酔ったらクソビッチじゃねぇか……」

「リィナもぉ……しよ?」


「するかボケええええ! あと、お前はお酒禁止だぁっ!」

「キャー。リィナこわぁぁい」




リィナは今日一日、酔ったミィアの介抱をしなくてはならなくなった。


ちなみに、一時間後にようやく寝たミィアの体を確認すると、指を突っ込んだりはしていないようだった。


「まさか、親友の股間状況を気にしてやる羽目になるとは……」


どっと疲れたリィナは、寝かせたミィアの隣で自分も眠ることにした。

まだ昼前だというのに、ドラゴンの側から一歩も動けないまま。



**



数時間して目が覚めたリィナは、ドラゴンに色々と聞いた。

この世界の文明、文化、魔法やスキルについてなど。


すると、中世レベルだった文明は、転生者がどんどん増えるにしたがって、徐々に近代化しているのを感じているらしい。


ただ、送り込まれてくる転生者の年齢層が低い事もあって、技術者的な人間が増えない事には、世界全体の文明はなかなか進まないだろうと言う。


文化も転生者の数と同じように色々と出現するが、根付く事は少ないらしい。





転生者以外の人々に関しては、かなりの男尊女卑である事、そして女性は基本的に、襲われても文句を言えない世の中だと言う。


それは、魔物という存在が居るためで、腕力、戦う力があまりない女性の人権は相対的に弱くなるからだった。


だから単純に、転生者のように戦う力を持った女性は、特別視されたり対等に見られる。




また、魔法やスキルを使えるのは転生者か、ごく一部の人間だけだろうというのが、ドラゴンの見解だった。


そして、魔法は体内の魔力を使うが、スキルは何の代償も必要としない事。


スキル持ちはほとんどおらず、魔法が主流である事。


及ぼす効果については、魔法もスキルも曖昧で、基本的に同じ事が出来るだろう事。


おおよそ、こうした情報をリィナは頭に入れたのだった。




「それじゃ、強くないと私達って……基本的に男に襲われるんじゃん?」


《だから龍脈の力を分けてやったのだ。よほど戦い慣れた転生者でもなければ、負ける事はないだろう》


ドラゴンの足元で、声だけで会話していたリィナはパッと上を振り仰いだ。


「そうなんだ! ありがとうドラゴンさん!」


《フ。たまには良い事もしないとな》


「ふぅん?」




村の人に対する容赦の無さを思い出したリィナは、もしかするとやっぱり、怒らせると怖いのだろうなと勝手に想像した。


《そうだ。忘れていたが》


ドラゴンは、本当にふと思い出したようにリィナに告げた。


《食べ物のいくつかは、魔物を倒すとそのまま落ちる事がある。慣れるまで苦労するぞ》


そう言われて、スライムグミを想像したリィナ。




「あれって、ばっちくないの~?」


《……たぶんな》


「きっつぅ……」




だが、これからリィナ達は思い知る事となる。


串焼き肉や焼きもろこしなど、おおよそ日本の屋台で売られているような食品が、本当にそのまま出現……落ちるのだという事を。


他にはもちろん、野菜や魚、生肉なども。


魔物の死骸が消えると同時に、その場に現れるのだ。


この世界がいかに雑な作りであるのか、その最たる片鱗がそれである。


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