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ギィ「夢、お前宛だ。」
そう言ってギィは私に封筒を手渡す。真っ白な封筒にほんのり甘いような、暖かいようなそんな、落ち着く匂いがする。
リムルからの手紙だ。
夢「リムル…」
封筒を手でビリビリとそっとちぎりながらあけ、中身を出す。
ギィは私の隣に腰掛け、じっと見つめている。
内容は簡単に書かれていた。
*祭りをやるから来ないか。*と。
…答えは簡単だ。
NOだ。
私なんかが外に出ていいわけない。
それに、きっとみんなを怖がらせてしまう。
魔素の制御も思うようにならない。暴走状態に陥る私が、みんなの楽しい雰囲気を壊してしまう。それだけは嫌だ。
ギィ「どうするんだ?」
夢「…行かない。行けないよ。」
ギィ「…そうか。」
お祭り…。行きたい。みんなに…会いたい。でもそんな権利私にはない。
その時。
ギィ「ん」
夢「…なんで…」
慣れ親しんだ気配が近づいてきた。
リムル「よ!夢、ギィ元気か?」
夢「り、リムル…」
ギィ「なにしにきたんだよ。手紙は受け取ったぞ?」
実に2年ぶりの対面だ。手紙でのやりとり…(リムルからの一方的)はちょくちょくあったが、言葉を交わすなんて久しぶりだ。
ギィや、ミザリー、レイン以外と話すのも久しぶりだ。
相変わらず、リムルは変わっていない。前に会った時より少しだけ強くなっている気もする。
対する私は?なにか変わっただろうか。体調も悪化も改善もせず、この2年、ずっと白氷宮から出ていない。
魔力を、魔素を制御する練習もしていない。償いといえるような行動もしてないない。合わせる顔がない。気まずい。
リムル「そんなにかしこまらなくていいぞ。夢。思うところが色々あるかもしれないが、今日は真面目な話をしに来たんじゃないしな!」
夢「話…?」
リムル「あぁ、夢!祭りに来ないか?」
夢「…、その手紙なら今受け取ったよ…。ごめん…行かない。」
リムル「ミリムもお忍びで来る予定なんだ。ラミリスも会いたがってたし…」
夢「私に…そんな権利ない。」
リムル「そんな権利ってなんだよ?」
夢「楽しいことを…する権利。」
リムル「はぁ…ほら!行くぞ!」
そう言って、リムルは私に手を伸ばす。
夢「あ…え…いや…」
リムル「俺が良いって言ってるんだ。ほら」
リムルは伸ばした手を私に近づけてくる。
私なんかが…。私なんかが、あの手を握っていいのだろうか。
夢「行けない…!!行けないよ…!!」
リムル「…夢…、」
夢「もう…誰も傷つけたくない!! 」
夢「もう…痛いのは嫌だ…」
そう言って、夢は小さく小さく、うずくまってしまった。小刻みに震えながら、なにか…大きなものから隠れるように。逃げるように。
ギィ「夢。逃げるな。」
夢の心の傷は計り知れないものだ。
昔、夢に合った頃に記憶をスキルで封印したのも、その心の傷、記憶が癒せる範囲を超えていたからだ。夢の心は、寄り添って、大切になによりも大切にしなければ治らない。しかし、夢1人の命よりも、この世界の均衡のほうが大切だ。だから、俺は封印という策をとった。
その選択が間違いだとも正解だったとも思わない。しかし、
今の夢は駄目だ。今のままでは。
夢が望むのなら、何ヶ月でも、何年でも、何百年でも|白氷宮に居場所を作ろうと決めた。彼女が安らげるように。
彼女が安心できるように。
でも、それでも夢には今までのように、昔のように笑って生きて欲しい。幸せに、自由に羽ばたき、危険を鑑みず、気まぐれで、危なかっかしい夢で生きて欲しい。
そのためには、全てから逃げちゃ行けない。辛いことからは逃げて良い。でも、幸せなことからすら逃げるのは許せない。
幸せからも辛さからも逃げれば償いも、なにもできない。
ギィ「夢、逃げるな。」
夢「…でも…!でも…」
ギィ「お前が辛いのは知ってる。お前がこの2年、罪の意識をずっと持っていたのも。でも、それじゃ変わらない。」
リムル「夢、行こう。」
夢「もし…もしも暴走したら……それに…」
ギィ「リムルがいるだろ。」
夢「それに…みんなを怖がらせてしまうかもしれない…」
リムル「ならオーラを抑えたり、姿を変えれば良いだろ?」
夢「でも…私は…魔法が使えないし…効果がないから…姿を… 」
ギィ「?お前自分の姿を自由に操れただろ」
夢「え…?あ…」
リムル「ん、そうなのか?」
ギィ「あぁ、小さくなったり、大きくなったりな。」
リムル「じゃあ、決まりだな!ほら、夢。」
そう言って手を伸ばす。
夢「…。ギィ、」
ギィ「なんだ 」
夢「ギィも…一緒に来てくれる…?」
ギィ「俺は構わないが、リムルにも準備があるだろ」
リムル「えっへん!!そう言うと思って既に2人分用意してあるんだな〜!!!」
ギィ「用意周到だな…」
リムル「端から二人とも誘うつもりだったんでね」
リムル「あ、そうだ。この前頼まれてたの完成したぞ。」
ギィ「早かったな。」
リムル「まぁな、俺が直接携わったし。今持ってきてるけどどうする?」
ギィ「…今渡すか。」
夢「…?」
リムル「形はどうであれ、無事覚醒できたことのお祝いをして無かったからな。」
ギィ「だいぶ遅れたが、お前への祝だ。」
渡されたのは青いひし形の宝石がついたピアスだった。
夢「これ…は」
ピカピカと控えめに、でも美しく輝く宝石に、シンプルにまとめられ、装飾された金具。調和のとれたデザインだ。
ギィ「お前の魔素、オーラを極限まで抑え、一時的に封印するものだ。」
リムル「俺とギィで共同開発したんだよ。」
ギィ「これを付けてる間は人間と変わらない。スキルも魔法も、耐性も一部しか機能しない。」
夢「封印…」
リムル「お前の力を人間と同じレベルまで退化させるものだ。これを着けてれば万が一暴走しても、被害はそこまでない。」
確かに宝石は違和感のあるものだった。
手に触れたときからすこし、嫌悪感のするものだ。
夢「これで…」
リムル「着けるか?」
夢「うん…!」
そう言って髪をかきあげ、耳を差し出す。
真っ白で、美しい肌。
ギィ「開けてやるよ。少し痛いぞ」
夢「大丈夫、痛覚無効が機能してるから」
ギィ「そうかよ。」
ギィのスキルなのか、なんなのか分からないけれど、優しくギィが耳たぶに触れた瞬間、耳に違和感が走った。
ギィ「よし、痛くないか?」
夢「うん。すこし違和感はあるけど。」
すこしだけ真っ白の肌に赤い鮮血がつたう。
リムル「傷が塞がる前にピアスつけたほうがいいんじゃないか?」
ギィ「あぁ、そうだな。」
カチャカチャと耳元でおとがする。ギィの手が擦れる音、金属が皮膚に触れる感触。どれも少しこそばゆい。
ギィ「よし。」
リムル「やっぱり、元がいいとなんでも似合うんだな…」
夢「似合ってる?」
リムル「あぁ、」
ギィ「綺麗だな」
夢「えへへ」
リムル「じゃ、気を取り直して行くか」
夢「まっまって?!荷物とか… 」
ギィ「要らないだろ」
夢「いるよ…」
リムル「じゃあほら!さっさと用意してこい!」