一面真っ白の雪景色。
実に2年ぶりに外に出た気がする。
夢「眩しい…」
リムル「さて、行くぞ!」
そう言ってリムルは魔法陣を起動させる。
ギィ「そういや、お前テレポートはできるのな。」
夢「うん、よく分からないけど。」
リムル「設置型の魔法なら効果あるのか?」
夢「どうなんだろ…自分でもあんまり分かってないから…」
ギィ「そもそも天間の数が少ないのに、追放された天魔なんてもっと少ないだろ」
リムル「少ないどころか…居るのか?」
夢「わかんない…会ったことないかも」
そんな会話をしていたらパッと輝き、目を咄嗟に瞑る。
リムル「もう目開けていいぞ」
夢「ん…わぁ」
目を開けると広がるのは、暖かく騒がしい、首都リムルだった。
夢「ね、ねぇ…」
リムル「どうかしたか?」
夢「わ、私オーラ出てないかな、ちゃんと制御できてるかな…」
リムル「大丈夫だぞ?」
ギィ「うん、ピアスも正常に機能してるな。」
夢「よ、よかった…」
リムル「さてと、先に宿に行くか。落ち着かないだろ?」
夢「うん…」
リムル「みんなへの挨拶はその後にしよう。」
不安そうな顔をしながらキョロキョロと周りを見つめている。あれ以来、2年間一度も外に出なかったのだ。戸惑い、不安がるのも無理ないだろう。
夢「ギィ…」
ギィ「どうかしたか?」
ぎゅと手を握ってくる夢。
そっとその手を握り返す。相変わらず小さな手だ。
夢「離さないで…ね。」
ギィ「あぁ、大丈夫だ。 」
リムル「ははwほら、行くぞ!」
夢「うん」
リムル「ここだな。周りはミリムとか、人は居ないようにしておいたからある程度くつろげるはずだ。」
ギィ「あぁ。」
夢「ありがとう…」
リムル「今回は各国の王を直々に呼ぶほど大きな祭りじゃないからのんびりして行ってくれ!」
そう言うとリムルはやらなきゃいけないことがまだあるからと言って、宿を後にした。
夢「…」
ギィ「不安か?」
夢「少しだけ。」
ギィ「暴走することか?それとも…」
夢「…人間は私のこと…良いようには思ってないよね。」
ギィ「…まぁな」
夢「…私のせいで、ギィもリムルも、リムルの仲間も、人間の敵と思われたらどうしよう。」
うつむき、涙目になりながら言う。
その涙を拭いながら答える。
ギィ「そもそも魔王である時点で俺は人類の敵だ。リムルは違うだろうがな。」
夢「…」
ギィ「でもよ、リムルはお前と仲良くするだけで崩れるような関係を人間ととってるのか?」
夢「それは…」
ギィ「なぁ、そんなに信用できないか?」
夢「違う…ただ…!」
ギィ「不安なのは分かるよ。でもお前にも仲間や味方はいるだろ?」
夢「…うん。」
ギィ「なら大丈夫だ。」
夢「うん…。ありがとう…」
ギィ「さてと、どうする?店を回ってもいいが…」
目線を夢に向けると、疲れたかのような顔をして、ベッドに座り込んでいた。
ギィ「少し休むか」
夢「うん…ごめんね」
ギィ「謝るな。」
夢「うん…」
ベッドはキングサイズが一つだけだった。
リムルが変なところに気を回したようだ。
ギィ「少し休んだら、店を見て回るか」
夢「うん、」
ギィ「気になる店はあったか?」
夢「…。」
ギィは私を気遣ってくれている。リムルもみんな気遣って、大切にしてくれている。でも、だからこそ、苦しくて痛い。
その優しさが、気持ちが痛くて、苦しくて…こんなことをした私がこんな優しさを受け取っていいのか、と考えてしまう。
特にギィは私を追い出さず、ずっと世話をしてくれていた。無気力に生きる私に、ただ、寝ては、起きて、また寝るを繰り返すだけの私を、大切に気遣ってくれていた。
でも、そんなギィに「逃げるな」と言われてしまった。幸せから逃げるなと。
そんなこと言われてしまったらもう、行くしかない。
私は怖い。人に向けられる敵意が、腫れ物を見るような目が。
「お前なんて、産むんじゃなかった。」
「このままだと滅んでしまう…!!」
「もう殺してしまおう!」
「誰が殺すんだ?!」
「私は嫌よ!!」
「お前が生まれてきたせいで。」
「産んでやったのに。」
夢「もう…ぃゃ…」
ギィ「夢、どうかしたか?」
気がつけば涙があふれていた。
怖い、もう、嫌だ。
ギィ「夢…?」
夢「私だって…私だって」
なんだろう、とても暖かい。優しい匂い。
落ち着くオーラ。
ギィ「夢、大丈夫だ。誰もお前を傷つけないし、俺がお前を必ず助け出すから。」
あぁ、そうだ。
私はもう、村にいた私じゃない。
私を大切にしてくれる人がいる。
私もその人を大切にしなきゃ。
迷惑をかけちゃいけない。
自分で解決できなきゃ。
自立しなきゃ。
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