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「――ああ、忙しい忙しい」


3体のガルルンたちに近付くと、そんな声が聞こえてきた。

その姿と言葉遣いのギャップに笑いそうになるが、そこは何とか堪えることにする。


「急げや急げ! 早くこの薔薇を赤く染めなければ、僕たちの首がはねられてしまうぞ!」


辺りを見まわすと、白い薔薇が咲いてはいるものの、それと同じくらいの黒く焦げた薔薇が見える。

不思議に思いながら、そのままガルルンたちを眺めていると――


「ファイアッ」


ボッ!


――何やら、火の魔法で薔薇を燃やしている。


……???

一体、何をしているんだろう?


「あのー、すいません」


「どちら様? 僕たちは今、忙しいんだよー」


「通りすがりの者なんですけど、今は何をしているんですか?」


「見て分からない?」


うん、分からない。

だから声を掛けたんだけど。


「えっとね、女王様から赤い薔薇を植えろって命令されていたんだけど、白い薔薇が咲いちゃったんだ」


「ふむふむ」


「だから女王様がここを通る前に、何とか赤色に染めなければいけないんだよ」


「ふむふむ」


「だからこうして、火の魔法を使っているんだ!」


「ちょっと待って!?」


「「「え?」」」


私の制止に、ガルルンたちは不思議そうな反応をした。


「何でそこで、火の魔法が出てくるんですか!」


「え? 火は赤いから」

「燃やせば赤くなるだろう?」

「他にどうしろっていうの?」


思いがけないトンデモ理論に、私の方がびっくりしてしまう。

ガルルン茸という奇跡のキノコを生み出したガルルン教のガルルンたちが、まさかまさか、こんなにおバカな子たちだったとは。


「火なんてつけたら燃えちゃうでしょう……。

ほら、今まで赤くなった薔薇なんてありませんよね?」


そう言いながら、黒く焦げた薔薇を指し示す。


「「「ほ、本当だ!!」」」


『不思議の国のアリス』だったら、確か赤いペンキで薔薇を塗っているんだよね。

それはそれでどうかと思うけど、ここのガルルンたちよりは賢いわけで……。


「ペンキみたいなものは無いんですか?」


「ペンキ? ペンキってなに?」


「それはお前、あれだよ。氷の世界に住むっていう――」


「それはペンギン」


思わずツッコミを入れる。


「……ああ、ペンキというのはもしかして、染料的な何かかな?」


「そうですそうです。

赤い染料があるなら、この薔薇は白いし、簡単に赤色になるんじゃないですか?」


「ふむふむ、なるほど。君は実に賢いね」


いやいや、それだけで賢いだなんて。

でもこのガルルンたちは、おバカな子ではあるものの、素直で可愛いところがある。

話していて、ついつい楽しくなってしまう。


「それじゃ、僕が赤い雨を降らせるね。

深紅の雨よ、ここに祝福を――クリムゾン・ブレッシング!」


「……え?」


1体のガルルンが、突然魔法を使った。

不安な予感がして空を仰いでみれば、遥か上空からは赤い雨が降ってくる。


「いやいや! そんなことしたら――」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




10分もすると、辺りは見事なまでに赤色で埋め尽くされてしまった。

私はといえば、隠れられるような建物も樹もなく、何とか顔を染められないようにするだけで精一杯だった。


「どう? どう? 薔薇が赤くなったよー」


「うん。実に良い赤色だ」


「これなら女王様にもバレないことだろう!」


ガルルンたちは、思い思いに喜び合っている。

……全員、上から下まで真っ赤だけどね!


「でも、花以外の……葉っぱや茎や、地面までも、赤色になっちゃいましたよ?」


私の言葉を聞いても、ガルルンたちはあまり気にしていないようだった。


「大丈夫、大丈夫。薔薇は赤いんだから!」

「葉っぱが緑色の薔薇を植えろ、だなんて言われてないから!」

「君はちょっと、細かいことを気にしすぎなんじゃないかな!」


三者三様、思い思いの言葉を私に向ける。

いやいや、さすがにポジティブすぎじゃない……?


「うーん……、でも……」


「大丈夫だよ! 女王様はそういった意味では寛大だから!」


寛大……?

もしかして、この子たち以上におバカな子っていうこと……?


「そんなに心配なら、もう少しここにいると良いよ。

女王様が通る予定だから、お会いしてみなよ」


うーん。確かに女王様と会わないと、話が進まないかもしれない。

それならば……どこかしらで会うことになるのであれば、さっさとここで会ってしまうことにしよう。


「分かりました。それでは待ちますか」


……とは言え、先ほどの赤い雨で私も結構赤くなってしまった。

さすがに『女王様』と会うのに、これはあり得ない姿だ。


服を乾かす魔法――ドライング・クロースを使えることだし、服を洗う魔法は使えないものかな?

レオノーラさんに装飾魔法を教わったときのことを思い出してみると、そう言えば名前だけは聞いたことがあるような――


「えぇっと……。

ウォッシング・クロース……だっけ?」


ドライング・クロースと同じ感覚で自分に向けて唱えてみると、赤い汚れが一瞬で消え去った。

それを見ていたガルルンたちは、驚きながら私に声を掛けてくる。


「わー、凄いね! ねぇねぇ、僕たちも綺麗にできる?」


3体のガルルンたちは、揃いも揃って全身が真っ赤だ。

折角だし、ここは綺麗にしてあげることにしよう。


「それじゃ、やってみますね。ウォッシング・クロース!」


……しかし、魔法の効果は発揮されなかった。


「あれー? できないの?」


「むむむ?

……もしかして、服限定なのかな……」


確かに私の服は綺麗になったものの、髪などはやはり赤く汚れたままだ。

全部の汚れを落とすだなんて、さすがにそこまで万能ではないか。


「それじゃ仕方ないね。僕がやるよー」


そう言うとガルルンの1体は空を仰いで両手を上げて――


「聖なる雨よ、ここに祝福を――ホーリー・レイン!」


……雨を、降らせた。


空は晴れているので、いわゆる天気雨の状態だ。

ほどほどの雨量があり、ガルルンたちは雨を浴びながら赤い色を落としている。


「……私も、落としておこうかな」


雨を手ですくうように受け止めてみると、どこか優しい雰囲気のする綺麗な水だった。

これ、装飾魔法よりもよっぽど高位の魔法なんじゃないかなぁ……。


そんなことを思いながら赤い色を落としていると、遠くの方から声が聞こえてきた。


「あ、女王様たちがいらっしゃるぞ! おい、雨をそろそろ止めるんだ!」


「おっけー」


ガルルンの1体が再び何かを唱えると、雨はすぐに止まった。

彼らの赤い色はすっかり落ちているし、私は濡れながらも何とか赤い色は落とすことができた。

となれば、このあとは――


「ドライング・クロース!」


……魔法で服を乾かせば、もう元通り。

身だしなみで気になるところはあるけど、鏡は無いし、そこは諦めることにしよう。



遠くの声はだんだんと近付いてきて、その主である一団の姿も視界に入ってきた。


「……うわぁ。

これはまた、たくさんのガルルンがおいでで……」


その数は30体といったところか。

2体のガルルンを先頭に、たくさんのガルルンたちが列を作っている。



それにしても何だか、他の生き物が支配する惑星……に迷い込んじゃったみたい。

そんな映画、元の世界にあったよね。

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