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55
はるん
2,033
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「雅夢、時々蜻燈篭。」――このタイトル、読んだあとにもう一度見返すとグッとくるものがありますね。達観した語り口の裏に、9歳の誕生日を境に「あの子」の人生を遠くから見つめ続けてきた時間の重みを感じました。特に「よく男の声が聞こえる」という一文が、薄汚れた家の描写と相まって、この先の物語に影を落としそうで…。語り手がどんな距離感でユナを見守るのか、続きが気になります。
あの子はいつか報われるのであろう。
夢見ていた、学校にだって通えるはずだ。
遠く眺めていた、友達だってできるはずだ。
そう思って、幾ら過ごしたのか…
ーー
そう思っていたのは7年前、9歳の誕生日だ。
よく考えたら達観した人生を送っていたと思う。
“あの子”の名前の“ユナ”というらしい。
柚子の柚に、奈良の奈。柚奈だ。
幼稚園の頃…いや、その前から右隣に住んでいた。
君が住んでいたのは普通の一軒家だ。
左隣の家、その左隣も普通の一軒家。差異といえば、色が違うくらいしかない。
…右隣はというと、薄汚れた2階建の家だった。屋根瓦は取れかけ、ペンキも落ちている。
同じガレージなのに、色の差も酷い。
言っては悪いが、貧乏そのものだった。
母親とユナの二人暮らしらしいが、よく男の声が聞こえる。
そんなただの人生。
物語のような、それにしては現実味のある人生だった。
…物語に名前を付けるなら?
そうだな…
『雅夢、時々蜻燈篭。』
これからの物語、そう名付けよう。