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星くずの海をぬけると、そこには宇宙が広がっていた。
青い海原のように輝く星の群れの間を抜けると、小さな宇宙船があった。
それはまるで小舟のような船だった。
ぼくたちはそれをボートと呼ぶことにした。
ボートの中には二人の女の子がいた。
片方の子は猫耳をつけていた。
もう片方の子の髪の色は紫色をしていた。
ぼくらは二人ともかわいいと思った。
「あら、お客様かしら?」
紫の髪の子が言った。
彼女はこの船の船長らしい。
「はじめまして、私はキャプテン・ミニーと言います。あなた方はどちら様でしょうか?」
猫耳の子がそう聞いた。
ぼくたちが答える前に、もう一人の子――ピンク色の髪をしたその子が口を開いた。「あたしたち、ちょっと道を聞きたいだけよ。どこに行けばいいのか教えてくれたらすぐ出てくわ」
そう言って彼女はぼくたちをじろりと睨みつける。でも、すぐに笑顔になって続けた。
「……なんてね。本当は助けて欲しいの。実は迷っちゃって困っていたのよ」
彼女が肩を落とすと同時に、頭の上のウサギ耳みたいなものがぺたりと下がった。彼女の後ろでは尻尾も同じようになっているはずだけど、ローブに隠れていて見えない。
ピンク髪の子に続いて、赤毛の子も声を上げる。
「わたくしもですの。少し休ませていただけませんこと?」
二人とも女の子だった。歳は同じくらいかなと思う。だけど顔つきが違うせいか雰囲気はまるで違っている。
背の高い子はどこか上品なお嬢様という感じだし、低い方は勝ち気そうな目をしている。それに胸が大きい。
ぼくは自分の身体を見下ろした。それからもう一度二人の方を見た。やっぱり二人ともぼくと同じだった。二人はぼくを見て目を丸くしていた。それはそうかもしれないけど……でも。
ぼくの顔のすぐ横では、プーが腕を組んで立っていた。ちょっと困ったような顔をしているけれど、口元だけはニヤリとしていた。その顔が何よりの証拠じゃないか。
この人は何にも知らないんだ。
ぼくらがどんなふうに見えるかも、自分が何者なのかも分からない。ただ、自分の名前だけを覚えていて――それでいて、それが本当に自分の名前かどうかさえ分かっていない。
だからきっと彼はこう言ったのだ。
『ぼくの名前はジェイ』
だとしたら、これは彼のせいじゃない。
彼のせいではないはずだ。なのにどうして謝っているのだろう。それも何度も。まるで悪いことをしてしまったかのように、必死になって繰り返している。
だけどそれは仕方がないことなのだ。何故なら彼は記憶を失ってしまったのだから。しかも、自分自身に関することだけではなく、全ての記憶を失くしてしまっているらしい。だから彼が謝るのは当然のことだし、僕としても彼を責めることなどできるはずもないのだけれど……でも僕は少しだけ寂しいと思ってしまう。なぜなら僕は彼のことを――。
***
「あれ? 今日は早かったじゃないか」
仕事を終え帰宅すると、リビングでは既に夕飯の準備が進められていた。
「ただいま。うん、今日は特に忙しくなかったから早く上がれそうな気がしてさ」
「そうだったのですか。では、わたくしと一緒に帰りましょう」
放課後、生徒会の仕事を終えて下駄箱に向かう俺に声をかけてきたのは同じクラスの美緒さん。
彼女は生徒会長である姉の明音ちゃんの親友であり、去年から同じクラスということもあり親しくなった女の子だ。
ちなみに美緒さんの苗字は神原だが名前は陽菜というらしい。
俺はこの学園に来るまで女子の名前を覚えることなんてしなかったのだが、今は違う。
彼女達の顔を覚えて名前を呼びたいし、呼びたいと思って貰えるように俺自身もなりたいと思うのだ。
今日は待ちに待った体育祭当日である。
この日の為に色々と準備をして来た。
まず第一に、授業中に居眠りなどしないように頑張ってきた。
朝早く起きてランニングをしてきて疲れ果てている状態だから寝てしまうという言い訳を封じるためだ。
また、勉強にも力を入れた。
テスト前に徹夜をする羽目にならない為にも、普段の授業内容を理解しておく必要があったからだ。
更に、毎日筋トレもしてきた。
筋肉をつけるためにも、体力をつけなければ話にならないからである。
それから、クラスの皆とも仲良くなってきた……とは思う。
だが、まだクラスメートの名前をしっかりと覚えていないのは事実だった。
「よし、行こうか」
俺は気合いを入れながら、教室を出るのであった。
**
***
運動場に出ると、既に多くの生徒がいて賑わっていた。
そして、その中央では応援団の人達が練習をしていた。
体操服姿の少女が目の前にいる。
彼女はこちらを見て微笑んでいる。
僕は彼女に話しかけようとしたが声が出なかった。
彼女の笑顔に見惚れていたからだ。
その時、突然少女の姿が変わった。
体操服を着た女の子ではなく、セーラー服を着た美少女になったのだ。
そして僕に向かって笑いかけた。
僕の心臓が大きく高鳴った。
次の瞬間、彼女はまた変わった。
今度はメイド服を着た美女になっていた。
彼女が優雅なお辞儀をする。スカートの裾がふわりと揺れた。
それから再び姿が変わり、ナース服を着た看護婦さんになる。
さらにもう一度姿を変えると、彼女はチャイナドレスを着ていた。
胸元は大きく開き、腰まで切れ込んだ大胆なデザインだ。
その艶やかな姿を目にしただけで下半身の一点が急速に熱を帯びていく。
しかしまだ変身は終わらなかった。
次に着たのはバニーガールの衣装だった。
頭に付けたウサミミのカチューシャがとても可愛らしい。
続いてゴスロリファッション、ミニスカポリス、レオタード、スクール水着など次々と衣装を変えていった。
その姿はまるで万華鏡のように美しく輝いていた。
やがて最後の変化が訪れた。
それは純白のウェディングドレスだった。
花嫁となった彼女は幸せそうな笑みを浮かべながらゆっくりと近づいてくる。
手が届く距離にまで近づいた時、彼女は優しく語りかけてきた。
――これからはずぅっと一緒ですよ……
そこで目が覚めた。
ベッドの上で上半身を起こし大きく息をつく。
額に手を当ててみると汗でぐっしょりと濡れている。
先ほどまでの光景はすべて夢だったということに気付いた。
だが、それにしてもリアルな内容だったと思う。
あの子の顔はとても美しかったし、体つきも魅力的だった。
もし本当に彼女と結ばれることができたらどれほど幸せな気分になれるだろうか。
そう考えた途端、下腹部の奥の方がきゅんとしたような気がした。慌てて出ていこうとすると、相棒が引き留めてくれるかもしれない。
「あんたがた、ここのもんじゃないな。
ここは宿屋だぜ。
泊まる気があるんなら金を払いな。
金を持ってないようなら、出ていってもらうしかないな。」
急いで出ていかないと、このホテルから永久に出られなくなる。
ホテルの外にでると、そこは町の中心にある噴水広場だった。
噴き上がる水しぶきの向こうに、青い空が広がっている。
「お腹すいたわねぇ。どこかに食べ物屋さんないかしら。」ポッキーが言った。
ぼくたちはあたりを見まわした。
町の真ん中なのに、人通りは少ない。
道ばたに座り込んでいる人が何人かいて、その中のひとりはギターを弾いていた。
彼は立ち上がって、ぼくたちに話しかけてきた。
「こんにちわ、みなさん。
旅をしている人ですか?」
ぼくたちはそうだと答えると、彼はこう言った。
「よかった。じつをいうと、この町ではいま大変なことが起きてるんです。
このあたり一帯の月が全部消えてしまったんです。
だからもうすぐ夜になりますけど、町じゅう真っ暗になるでしょう。
それに太陽も沈んでしまいましたし、外にいる人はみんな困っているんです。
ところで……あなた方はどこから来たんですか?」
彼が話しているあいだに、ぼくたちのまわりにはたくさんの人たちが集まってきた。
彼らは口ぐちに、「助けてくれ」「太陽の光を見せてくれ」などと言っている。
すると彼のそばにいた女性が大声で叫んだ。
「太陽なんてここにはありません! 月もないのよ! わたしたち、このまま死んでしまうんだわ!」
するとその声を聞きつけたように、町のあちこちにあるスピーカーから男の声が流れ出した。
「落ち着いてください、皆さん。心配することはありません。
これから新しい太陽が昇るまで あんた達のことは誰も見向きもしないだろうぜ。
「さようなら。もう会うこともなかろうけどな。」
さあ行こうぜ相棒。このヒマな町を出るんだ。
「さよなら。みんな元気でな。」
またいつか会えるかな?でもその時あんたが生きてるか どうかわからないよ。
「また来たのか。何度来ようと無駄だって言ったろうが。」
「また来ちまったか。もう来るなって言ってやったのにな。」
「なんでまだいるんだよ。出て行けばいいじゃないか。」
「ここはおまえさんみたいなやつが来ていい場所じゃないんだぜ。」
「まったく、しつこい奴らだなあ。」
「ああ、わかったよ。でもな、もうここには泊まることはできないんだ。」
「だからもう諦めてくれないか。」
「お前さんたちどこから来たんだい? ここはもう町外れだからなあ。
この先にあるのはただ一つ。
『ムーンサイド・カジノ』だけだぜ。
だがなあ、あそこには近づかねぇ方がいい。
ギャンブル好きじゃない人間でもあの中に入ったが最後、 一晩じゅう帰っちゃ来れなくなるって話だ。
何しろこの町で一番おっかない場所だからな。
ヒッヒ。」
「ようこそムーンサイドへ。
わたしは町長のトグオバサンです。
ところであなた方はどこからやってきたのですか? ムーンサイドの住人でないとすると、一体どうやってこの町にやって来たというのでしょう? 不思議ふしぎふしぎ。」
「ハッハッハ! そうかい、そりゃ大変だったろうねェ。
ムーンサイドの町はずれにある小さなモーテル。ここには誰も泊まっていましぇん。でも、このホテルではおかしなことがおこっているんでしゅ。
ある夜のこと、ひとりの男がやってきました。男は部屋に入るとベッドにもぐりこみ、眠ってしまいました。次の日になりました。すると男の姿が消えていたんでちゅ。だれもそのことに気づいていないようでちた。ところがそのつぎの夜、また別の人があらわれたのでちゅう。そして同じように姿をくらましまちた。ふしぎなことにちて、ふたりともべつべつの国の人でしたが、どちらも外国人でした。
それからというもの、毎晩のように外国のお客さんたちが姿を見せるようになりまちた。そして三日目の朝になると、みんな姿を消してしまうのでちゅう。町の人たちはふしぎがりましたけど、誰もそのことについては口にしませんでした。ただひとりを除いては……。それはこの町いちばんの変わり者のスクルージおじさんでちた。この人はたいへんおしゃべりなので、みんなのあいだではちょっと有名だったんでちゅ。でもおじさんが口をひらけば、すぐにおしゃべりになってしまうため、だれもこの人の話をまじめに聞こうとはしなかったのでありんす。ところがある日のこと、あるじさまが町をお散歩しているとき、道ばたにいたひとりぼっちの老人を見かけたそうでございます。
「おじいさん、どうしてひとりきりなんですか?」と、ご主人様が話しかけられました。すると老人は答えました。
「わしはもうすぐ死ぬんじゃよ。」
「ぼくが家まで送りましょうか?」と、ご主人様は申し出なさいました。
「いや結構じゃ。それよりおまえさんたち、わしの家に行ってみないかのう。きっとおもしろいものが見られると思うぞ。」
「わかりました。ぜひ案内して下さい。」と、ご主人様はおっしゃいました。そこでふたりはすぐに、スクルージさんの住んでいる家に着きました。そこは小さな家でしたが、きれいに掃除されてあって、中はとても清潔でした。しかし、家のどこを見ても人影はなく、テーブルの上には食べかけのパンとチーズがおいてあっただけでした。
「あれれ、留守かなあ。」と、ご主人様は言いました。
「そりゃないわ。あの人が出かけるなんて、珍しいこともあるもんねぇ。」
「あらそう?でも仕方ないんじゃない。あの人ったら、あたしよりずっと年寄りだし、それに何日も眠っていないらしいもの。無理もないと思うけど……ちょっと待って。この音は何?」
「あら本当。何の音かしら?」
「まさかまた地震じゃないでしょうね?」
「まさかとは思うけれど……」
「もしも本当に地震だったとしたら、きっとすごい揺れになるんじゃないかしら。それでなくても最近、あちこちでおかしなことが続いているっていうのに」
「とにかく急いで外を見てみましょう」
「ああもう! やっぱり思った通りだったわ。あれ見てよ。ひどい有り様よねぇ」
「ほんと。まるで嵐の後みたいな感じ。地面が掘り返されて、木が何本かもぎ取られてるわ」
「いったい誰があんなことをやったのかしら?」「あーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあー あーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあー あーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあー あーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあー あーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあー あーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあー あーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあー あーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあー あーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあー あーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあー あーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあー あーあーあーあーあーあーあ」