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kurara
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かめちょん
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#ご本人様とは一切関係ありません
kua
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雨の日だった。
朝から空が暗い。
しとしと、と静かな雨音が村を包んでいる。
「暇だねぇ……」
縁側で涼架がぼんやり空を見ていた。
今日は珍しく、最初から羽織をしっかり着込んでいる。
元貴はその隣で寝転がっていた。
「眠い……」
「元貴そればっか」
「雨の日って眠くならない?」
「ボクもなる」
少し笑う。
柔らかい声だった。
親しい相手の前だから、もう“妾”ではない。
その時。
どごん、と遠くで鈍い音が響いた。
空気が揺れる。
涼架の表情が変わった。
「……妖か」
立ち上がる。
元貴も身体を起こした。
「俺も行ったほうがいい?」
「いいよ。すぐ終わるから」
そう言って笑う。
「ボク、強いし」
赤い背中が雨の中へ消えていった。
夕方。
雨はまだ止まない。
「……遅くない?」
元貴が縁側から空を見る。
滉斗も眉を寄せた。
「確かにな」
その時だった。
ふらり、と赤い影が見える。
「涼ちゃん!」
元貴が駆け寄る。
だが。
近づいた瞬間、顔色が変わった。
「……熱っ」
涼架の身体は異様に熱かった。
顔も青白い。
息も浅い。
「大丈夫……」
「全然大丈夫じゃない!」
一歩踏み出して。
ぐらり、と身体が傾く。
「っ、危な!」
元貴が抱き止めた。
その瞬間。
あまりの軽さに息を呑む。
「……え」
細い。
軽い。
抱き上げた身体が、驚くほど小さい。
いつもの羽織のせいで隠れていただけだった。
「涼架、お前……」
「ん……」
力なく元貴の肩に額を預ける。
抵抗する力もなかった。
元貴はそのまま家へ運び込む。
布団へ寝かせて。
羽織を脱がせた瞬間。
部屋の空気が止まった。
「……細」
滉斗が思わず呟く。
白いシャツ越しでもわかる。
肩が細い。
腕も薄い。
身体の線が華奢すぎた。
村人たちも息を呑む。
「守護神様ってこんな……」
「折れそう……」
元貴はぴり、と眉を寄せた。
「見ないで」
「いやでも」
「見ないで」
滉斗が苦笑する。
「過保護すぎだろ」
「うるさい」
涼架はうとうとしていた。
熱で意識がぼやけている。
「水飲める?」
「……ん」
起き上がろうとして。
ふら、と揺れる。
「危な」
元貴が支える。
軽い。
片腕でも支えられるくらい軽い。
「だからちゃんと食べろって言ったのに」
「……食べてる……」
「絶対足りない」
「むぅ……」
いつもの余裕はなかった。
「……元貴」
「ん?」
「頭いたい……」
弱々しい声だった。
元貴の胸がぎゅっとなる。
「……無理」
「なにが……」
「かわいすぎる」
「病人相手に言うこと!?」
滉斗が吹き出した。
だが元貴は本気だった。
強くて。
綺麗で。
なんでもできそうな涼架が。
今はこんなにも弱々しい。
夜。
雨音だけが静かに響いていた。
滉斗も帰り、部屋には二人だけ。
元貴は布団の横に座っていた。
涼架はぼんやり天井を見ている。
「……元貴」
「ん?」
少し間が空く。
それから。
「……見た?」
「なにを?」
涼架が視線を逸らした。
「……ボク、全然強そうじゃなかったでしょ」
元貴は少し黙った。
誤魔化さなかった。
「……うん」
「細かった」
「軽かったし」
「びっくりした」
涼架の指が、布団をぎゅっと掴む。
「やっぱり……」
小さな声。
消えそうなほど弱い。
「嫌なんだよね」
「ん?」
「弱く見えるの」
雨音が静かに響く。
涼架はぽつりぽつりと話した。
「だから羽織も着てるし」
「ちゃんと強そうにしてる」
「守護神なのに、こんなのだったら……怖がられない代わりに、頼りなく見えるかなって」
元貴は静かに聞いていた。
涼架は少し笑う。
でも寂しそうだった。
「今日、倒れるところ見られたし」
「……嫌だった」
その声は “赤鬼”ではなく、 ただの涼架だった。
元貴はしばらく黙って。
それから、ぽつりと言う。
「誰も怖がってなかったじゃん」
涼架が瞬く。
「みんな心配してた」
「滉斗も、村の人も」
「俺も」
「……」
「それに」
元貴は、そっと涼架の手を握る。
「弱い涼ちゃん見れて、ちょっと嬉しかった」
「は?」
「なんか、ちゃんと頼ってくれてる感じした」
「そんな理由……」
涼架が呆れたように笑う。
でも。
少しだけ安心した顔だった。
「……変なの」
「知ってる」
「ボク、守護神なのに」
「うん」
「もっとちゃんとしてないと」
「別にしなくていいじゃん」
元貴はさらりと言った。
「強くなくても涼ちゃんは涼ちゃんだし」
「……」
「細くてもいいし」
「倒れてもいいし」
「隠さなくていいよ」
「でも、もうちょっと食べてほしいかなぁ」
静かな声だった。
雨音に溶けるくらい優しい声。
涼架は目を丸くして。
それから、少しだけ俯いた。
「……そういうこと、さらっと言う」
「本音だから」
涼架の耳が少し赤くなる。
しばらくして。
小さく、小さく。
「……ありがと」
そう呟いた。
翌朝。
熱は下がっていた。
涼架はいつものように羽織を手に取る。
だが。
元貴がその袖を引いた。
「今日はそのままでよくない?」
「え」
「似合ってるし」
羽織のない姿。
白シャツに赤の和装だけの、軽い格好。
細い身体の線が、そのまま見える。
涼架は少し落ち着かなさそうに視線を逸らした。
「……目立つ」
「かわいいからいいじゃん」
「というか、いつものほうが目立ってるよ」
「でも…」
少し迷ったあと。
涼架は羽織を置いた。
「……今日だけだからね」
その顔は、 昨日より少しだけ。
肩の力が抜けて見えた。
コメント
1件
読了しました。第3話、とても良かったです。 「強いふり」をしている涼架の、羽織の下の華奢な身体――あの場面は本当に胸にきました。元貴の「弱い涼ちゃん見れて嬉しかった」という台詞も、無理に肯定するでもなく自然に届く優しさで、じんとしました。雨音の静けさが二人の距離の変化をそっと支えている構成も、好きです。 庵野さん、続きが楽しみです。