テラーノベル
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静かな夜の家。涼ちゃんは、ふたりを見送ったあと、ふとトイレへと向かった。
扉を開けて洗面台を見た瞬間、
「あれ……片づけなかったっけ」
と、小さな声が漏れる。
血のついたカッター、包帯、睡眠薬――
「元貴に見られちゃったかな…」
心の中でそう思いながらも、どこかで“気づいて欲しい”という、言葉にできない感情が自分のなかに根を張っていることに気づく。
本当は、誰かに知ってほしい。
だけど、明日なにも言われなければ――
「……いいけどね」
と、ぽつりと独りごちた。
ため息混じりに洗面台の物をさっと片付け、そのあとベッドの脇で睡眠薬を2錠手に取る。
水と一緒に飲み込んで、静かにベッドへと身を横たえた。
天井を見つめながら、ほんの少しだけ、胸の奥に不安と期待が混ざったまま、
涼ちゃんは静かに目を閉じていくのだった。
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