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「……ジェシー」
一人で部屋にいた北斗のもとに、ジェシーがやってきた。その表情はいつになく重苦しい。
「…どうしたの?」
北斗もそれを察してか、声のトーンを下げる。
「北斗はたぶん気づいてるよね」
「…ん?」
「組織の名前。俺の両親をやったところ」
そのことか、と得心した顔になる。
「もちろん。メールが来たときにわかった。だから」
北斗はジェシーを見据える。
「トップはお前にやらせようと思ってる」
「え…」
わずかにたじろいだ。
「俺が?」
「うん。それでこそ敵討ちだろ」
少し逡巡したのち、うなずいた。「わかった」
今回のターゲットがジェシーの両親を襲った犯人がいる組織だというのは、受け取ったメールに書いてあったのですぐに思い出した。
しかし、敏感な北斗以外は気づいていないらしい。
仕上がった計画案を話そうと、自由な6人を呼び集める。
「なになに?」
「さあどんなのかな」
「みんな、よく聞いて。今回はマジで大事な話だから」
真剣な北斗に、5人は黙る。
「まずターゲットの組織のことなんだけど。そこ、ジェシーが親をやられたとこなんだわ」
「え⁉︎」「ホント?」などと口々に反応する。
「うん。で、組長はジェシーにやらせるつもり」
と言うと、みんなは驚いた顔になった。
「大役じゃん!」
「俺のナイフが…」
「俺の銃が…」
「まあジェシーならできそうだね!」
「で? どうやるの?」
樹が興味津々な目を向ける。
「ざっくり説明すると、まず俺が相手たちを山奥の廃倉庫に呼び出しとく。銃撃戦になるだろうしね。理由は今から考えるわ。人数は…大体10数人くらいかな。組の全員は来ないと思う。そんで、ジェシーが先に出て恨みを晴らすぞ的なことを言って、みんなが出る。でバンバンバンッと」
慎太郎が何か言いたげな顔をする。
「あ、ナイフももちろんいいよ」
やった、と笑みを浮かべた。
「じゃあ、6人みんなピストルは持ってくってこと?」
大我が訊く。
「うん。あと防弾ベストと、護身用ナイフも。まあ前にも組織相手は何回かあるし、大丈夫だよね」
そうだね、と自信に満ちた表情でうなずきあった。
と、「でも……」と不安そうな声を出したのは高地だ。
「どうかした?」
北斗が聞き返す。
「いくら廃倉庫とはいえ、銃の撃ち合いになったら音が気にならない? 警察とかにもしバレたら…」
「そんなわけないでしょ」
と慎太郎。
「今までだって全部穏便にやってきたじゃん。まさかここでバレやしないよ」
「うん、そうだね」と笑った。
「じゃっ、そろそろ飯の支度するかー」
立ち上がった北斗に、お腹すいた、とジェシーも続く。今日の食事担当は北斗になっている。
冷蔵庫から取り出したらしきバナナを持ったジェシーがリビングに戻ってくると、
「ジェス、以外と不安そうじゃないね」
大我が言った。
「だって俺に不安なんて似合わねーじゃん!」
それもそうだな、と慎太郎はいつもの笑顔だが、大我はもう一度口を開く。
「…俺もわかるよ」
ジェシーはそれで理解した。
大我も、前にストーンズで親の敵討ちをしたのだ。そのときもやはり、北斗の提案でトップを彼自身でこらしめた。
「怖いもんね、プレッシャーがでかくて。でも、みんながいるから大丈夫」
大我は笑いかける。ジェシーはこたえた。
「うん。大丈夫、きっと楽勝だよ!」
続く