※注意※
この小説は、純度100%の私の妄想で出来たnmmnです。ご本人様には一切関係ありません。
ご本人様はもちろん、その周辺の方々やnmmnが苦手な方の元に届かないよう、配慮をお願いします。
私の癖を詰め込んだので、誰かの地雷の上で踊り狂っているかもしれません。それぞれで自衛をするようにしてください。
読後の誹謗中傷等は受け付けておりません。チクチク言葉が届くと泣きます。
その他、BL要素(🍤×🟦🧣)、怪我、バース要素(ドースバース)あります。
膨大な文量になりそうですので、バースの説明は省いています。申し訳ありません。お手数をおかけしますが、ガーデンバースを知らない方は、ご自身で調べるようお願いいたします。
消毒液の匂いがする廊下を、1人で歩く。
ここにも何度来たのか分からない。重症患者やクランケが体調を崩せば昼夜問わず呼び出されるもんだから、途中から数えることも辞めてしまった。
ドラッグ失格と言われてしまうかもしれないが、俺は出来るなら病人の側にはいたくない。苦しむ姿が痛々しくて、こっちまでしんどくなってきそうで……すぐに、逃げ出したくなってしまうのだ。
だが、今日は違う。
俺はほぼ駆け足で、病室に向かっていた。
病棟の1番端の1人部屋。
俺が大好きな、可愛い可愛いクランケがいる部屋だ。
「らっだぁ、起きてる?……ありゃりゃ、だいぶしんどそうだね」
窓際のベッドに横たわる青い髪の男。腕にも顔にも点滴が繋がれていて、その瞳は固く閉ざされている。
病状が悪化したらしい。この前会った時は割と元気そうだったのに……今や見る影もない。余裕で退院できる、と自慢げに話していたのは、一体なんだったのか。
側のパイプ椅子に座って、カテーテルの刺さった手を握った。途端、冷たい手がみるみる内に温もりを取り戻していく。
「……お、はよ」
「おはよう、気分はどう?」
「ガチ最悪……だけど、良くなってきた」
目尻の垂れた目が開き、青い宝石が顔を出した。蛍光灯の光に顔を顰め、ぐーっと目を閉じてから俺を見る。
「ありがとう。もう平気だよ」
「ならよかった。今日は何する?ボドゲとか持ってきたよ 」
「お、いーねー。またボコボコにしてやんよ」
ニヤリと笑って、ゆっくり体を起こす。まだ少し苦しそうだが、良くなったみたいで安心した。
らっだぁは、数年前からずっと面倒を見ているクランケだ。最初は無愛想なヤツとも思っていたが、お互いゲーム好きな事もあってすぐ仲良くなった。
友達として対等に見てくれるから、俺はらっだぁが大好き。神様みたいに大げさにされると、俺だって気が引けるし。
それに、らっだぁは病人なのか疑うほど図太くて明るく、一緒に居ても苦しくない。こんなクランケは初めてで、最初はかなり驚いたものだ。
「らっだぁと居るときが1番楽しいよ、俺は」
「へぇー、いいじゃん。俺も、お前ほど偉そうにしないドラッグは初めて見たわ」
「偉そうにするやつキモくない?運がよかっただけなのにさぁ」
「ね!分かる、めっちゃキモい。まぁ、そいつらのおかげでこんな性格になれたんだけどな」
苦笑しながら、らっだぁは不格好にカードを混ぜる。手が震えている気がする、今日はあまり調子がよくないようだ。
「やろうか?」
「んーん。もう出来たからいいよ」
俺にカードを渡して、らっだぁは辛そうに唸って机に突っ伏した。そして、小刻みに背中を波打たせ始める。
「ヒュッ、ごホッ、けほ、……っ、」
「だ、大丈夫?噎せちゃった?」
「こほ……大丈夫、最近ちょっと咳が酷くてさ。手ぇ握っていい?」
「全然いいよ、1回横になろっか」
「ん、ありがと」
ゲホゲホと咳を繰り返し、倒れるようにしてベッドに寝転がる。背中を擦ってやると、だんだん落ち着いてきて深く息を吐いた。
不安そうに潤んだ瞳が、俺を見つめる。
「ぺいんとはあったかいねぇ……俺とは大違い」
「そう?」
「うん、凄くあったかい」
苦し紛れに微笑んで、らっだぁは俺の手を両手で弱々しく握り直した。それを見ていると、胸の奥がつーんと冷たくなった。
日に日に、らっだぁの体調は悪くなるばかりだった。元気なのは俺が側に居るときだけで、離れてしまえばご飯も上手く食べられない程に衰弱するらしい。
このままだと、もう長くはない。
ふと、最悪の結末が頭に浮かんだ。
そんなわけない、と振り払うが、中々不安は消えない。本当に、らっだぁが死んじゃったら……そんなのイヤだ。大切な友達で……俺の、大好きな人が死ぬなんて。
何年も苦しそうな姿ばかり見てきて、限界を迎えてしまった。もう、らっだぁのこんな姿見たくない。
俺は、思い切って口を開く。
「ね、らっだぁ。俺と番にならない?」
頼む、『いいよ』って言ってくれ……。
そう強く願いながら、真っ直ぐにらっだぁを見据えた。
ドラッグと番になれば、クランケの病気は治る。それに、俺はらっだぁが他のドラッグと番になるのは……なんというか、イヤっていうか……。
とにかく俺は、らっだぁと番になりたかった。
「……俺?」
「そう。俺は、らっだぁとがいいな」
「あー……ガチで言ってる?」
信じられない。
そう零したらっだぁの目は、酷く震えて濡れていた。
らっだぁは困惑して、恐る恐る体を起こして俺の表情を伺った 。俺が真面目だと分かったのか、何か言いたそうにパクパクと口を動かす。その口から言葉が出ることはなく、ただ吐息だけが漏れるだけだった。
何度か試した後、生唾を飲み込んでからようやく話し出す。
「……ダメだよ、ぺいんと。お前は、俺以外のクランケもたくさん助けなきゃ。そしたら、俺よりいい人見つかると思う」
「……」
「それにさ、俺はお前になんにもしてあげらんないよ?病気が治ったところで……何出来るかもわかんないし。なら、こうやって、治療のために会うぐらいが充分なんじゃない?」
時々声を裏返しながらも、必死に普通を装うらっだぁ。冷静なフリをして、自分を卑下して、なんとか俺から逃げようとしている。
そんならっだぁを見ていると、腹の底からふつふつと怒りが湧いてきた。 何が悲しくて、好きな人が自らを責めるような発言を黙って聞いてなきゃいけないんだ?
「……らっだぁ、俺のこと嫌い?」
「え?」
思ったよりも低く冷たい声が、無意識に俺の口から飛び出した。
「俺はらっだぁのこと大好きだよ。病院で会うだけじゃ足りないし、もっとたくさん話もしたい。らっだぁは違うの?」
「??好き、って……いや、ちがくない」
「なら、俺と番になってもいいでしょ。らっだぁは、俺がどこの馬の骨かも分からないクランケと番になってもいいの?」
そう問いかけると、途端にらっだぁは黙り込む。下唇を噛んで、今にも溢れそうな涙をなんとか抑えている。
イジワルしちゃったかな、と、少し申し訳なくなる。
病人相手になにムキになってんだろ、バカバカしい。急に自分が情けなくなって、慌てて謝罪の言葉を口にする。
「らっだぁ、ごめ───」
「全然よくない!!」
大声で遮られ、ビクリと肩が跳ねた。
らっだぁは泣いていた。それはもう、ボロボロと。 大粒の涙は止まることを知らず、次々と白いシーツに丸く跡を残す。
それを乱雑に拭いながら、らっだぁは声を荒げた。
「んグ、ふぅ……ッなんにもよくない!ほかの人と、つがい、になるとか……ぅ゙、ゔ……そんなこと、言わないでよ、」
「ら、らっだぁ?」
「分かってんでしょ……?そんな、ッ、の、俺だって…、ヤだよ……」
完全にやらかした。どうしたら泣きやんでくれるんだ?そもそも、イジワル言ったこと、許してもらえるのだろうか。
泣きじゃくるらっだぁの頬を両手で包み、親指の腹で涙を拭う。子供みたいに泣くらっだぁは初めてで、どうしたらいいのか分からなかった。
「ぅゔ〜〜〜っ゙、ぺいんとのばかぁ…、も、ほんときらいぃ……」
「ごめんじゃん、まさかここまで想ってくれてるとは思わなくて……ありがとう」
頭を撫でると、グスグス鼻を鳴らしながらも嬉しそうに目を細めた。潤んだ瞳にはもう影はなく、澄み切った青色に変わっている。
「はぁ……もう、勘弁してよほんと」
「ほんと申し訳ない。で、俺と番でもいいの?」
「それは……まぁ、構わんけど。ぺいんとがいいのならね」
「いい、いい!あんなこと言ったけど、俺もうらっだぁ以外と番になんてなりたくないよ」
「そう?なら、よかった」
顔を赤くして、らっだぁは微笑む。なんだ、あれだけ色々言っておきながら、俺と番は別にイヤじゃないんだ。
まぁ、らっだぁなりに俺の事を考えてくれた結果なのだろう。変なところで不器用なヤツ、なんだか少し可愛く見えてきた。
「楽しみだね、退院するの。絶対遊びに行こうな」
「ぺいんとは、ここの外でどんなことして遊ぶの?」
「うーん……友達とゲームしたり、かなぁ。たまに遊園地とか行ったりするぐらい」
「遊園地ねぇ、楽しそうだよね。写真ぐらいでしか見たことないけど……一緒に行ってくれる?」
「もちろん!」
もう離れないとばかりに手を強く握って、俺はらっだぁに笑いかけた。
「どこ行きたい?どんなことしてみたい?俺はいくらでも付き合うよ」
…
……
………
ガタン、ゴトン。ガタン、ゴトン。
喧騒の間を縫って、通り過ぎていく電車の足音がする。それも、すぐに誰かの電話声でかき消された。
忙しなく過ぎていく人々とは反対に、俺達はベンチに座って次の電車をゆっくり待っていた。
「次の電車って何時だっけ」
「あと5分ぐらいで来るらしいぞ」
「へぇ、以外とすぐだね」
「まーなー……」
間延びした声で、どこか上の空な返事が返ってくる。
隣をチラリと見ると、もう見飽きたぐらい馴染みのある青い髪が目に映った。その手には、髪の色とは似ても似つかないくすんだ青色がこびりついている。
「消えないね、点滴の跡」
痣の残る手の甲を、そっと指先で撫でた。
あれから数年経った今も、注射針の跡は中々消えずに居座っている。手の甲だけじゃなく、二の腕や手首にも。
何年も何年も同じ場所にカテーテルを刺していたからか、皮膚は青く染まっていて酷く痛々しい。
「んー……でも、薄くはなってきたよね」
「そうだけど、やっぱり中々無くならないなって」
「俺は、もう一生こいつと生きていくつもりだわ。いい思い出だと思わん?」
「うーん、いい思い出ではないんじゃないか?苦しかったでしょうに」
「んー……まぁ、そうだけど」
痣の持ち主であるらっだぁは、それを見て顔を綻ばせる。
「まぁ、ぺいんとと出会えたのはこれのおかげだからなぁ。そう考えたら、病院でのこととか全部めっちゃいい思い出じゃん」
「……そんなもんかな」
「そんなもんよ」
ニッと笑って、らっだぁは再びスマホに目線を落とす。
昔の俺達を思い出すと、 こうやって外で話せるのが奇跡のように思える。死に一直線に向かっているらっだぁの近くで、一旦マシになるまで付いてあげるだけの関係だったのが、今や一緒に電車を待っている。
陶器のような白色も健康な色に染まって、筋肉も付いてきた。真っ直ぐ背筋を伸ばして、前を向いて、自分の力で立てるようになった。
俺達ドラッグやノーマルと同じような生活が出来るようになるまでかなり時間がかかってしまったが、今のらっだぁはクランケである事を感じさせないほどに元気いっぱいだ。
「……すごいね、お前は」
「急になに?怖いんだけど」
「ふ、なんでもない」
気味悪そうに、青い瞳はこちらを見る。
綺麗な目。死に怯えていたあの頃とは大違いで、未来とは輝かしいものだと疑いもしない綺麗な目だ。
軽快なメロディーと共に、無機質なアナウンスが響く。風を引き込みながらホームに電車が滑り込む。
「ほら、行こうよらっだぁ。電車来たよ」
「言われんでも」
手を差し出すと、温かい手がそれを握る。隣に並んで、黄色い線の前に立った。
「楽しみだね、遊園地」
「ね。絶叫乗ろーぜ、あとお化け屋敷」
「ムリムリムリ、百歩譲って絶叫はいいけどお化け屋敷は勘弁して……」
「知らん知らん。遅れた退院祝いだと思って?」
「うぅ……わかったよ、あっち行ったら色々決めよう」
「よっしゃー、楽しみやね」
ふしゅー、とため息を付いて扉が開く。らっだぁに手を引かれ、暖房の効いた車内に乗り込んだ。
その笑顔に、どうしようもなく惹かれる自分がいる。じんわり胸に広がって、悪いところなんてないのに、どこかが治っていくような感覚に襲われる。
らっだぁはすっかり、俺にとってのドラ ッグになっているようだ。
『らいむさんの書くドースバースかアイスバース何方か見たいです』
リクエストありがとうございました!アイスは後日投稿します。
ドースはガチで欠片も浮かばなくて、シチュまでリクエスト貰ってやっと書き進められました。
普段は、絶対書きたいメインの場面、それに伴う書きたい場面を先にバラバラに書いて、後から頑張って繋げる感じで書いてます。中々楽しい書き方ですが、今回みたいに浮かばなかったら一文字も書けないので困る……。
文字書きを趣味にしている方がいれば、ぜひ各々の書き方も教えてくださいな。参考にします。
コメント
6件
ガーデンバースも気になってきてしまいました…バースものやっぱり好き
長文失礼します リクエストしたドースバースありがとうございます 自分がお願いしたシチュエーションの(俺と番にならない?)が出てきた時とか良すぎて死にそうでしたらっだぁがぺいんとに(写真でしか見たこと無いけど遊園地に一緒に行ってくれる?)て言ってから数年後に2人で遊園地に行くのとか超最高です 明日卒業式で緊張してたんですけどらいむさんの作品見てたら落ち着きました本当にありがとうございます