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第11話 持っていた物
28日。美容院の日。
梨柚は、少し緊張しながら美容院へ向かった。
なぜなら、梨柚は美容院で髪を切ったことがないのである。
美容師さんと話すのが嫌だからと、小さい頃からお母さんに切ってもらっていた髪。だから、美容院に行くと言った時、お母さんは目玉が飛び出るんじゃないかと思うくらいびっくりしていた。でも、少し嬉しそうに見えた。
美容院に着き、梨柚は担当の美容師さんに案内されて、席に座った。
「どんな髪型にしましょうか?」
美容師さんにニコニコと聞かれる。
今日のために、ネットで調べて探した髪型。
「こ、これで…..」
梨柚がスマホを見せると、美容院さんはニコッと笑った。
「とっても似合いそうです!それじゃ、始めますね!」
1時間半後。
梨柚は鏡を見て目を丸くした。
そこに映っているのが自分だと思えなかった。
家に帰ると、お母さんもとても驚いていた。
「とっても似合うじゃない!かわいいわ〜」
お母さんは梨柚の頭を撫でたあと、ポロッと涙を零した。
あたふたする梨柚に、お母さんは言った。
「大きくなったね」
なんでそんな事を今言うのか、梨柚には分からなかった。でも、そこには特別な意味がある気がした。そして、気づいた。
────私は愛されてたんだ。
少し前まで学校に誰も味方が居なくて、ずっとひとりぼっちで自分には何も無いと思っていた。でも、自分は、親からの大きな愛を持っていた。
お母さんの顔を見る。
その泣き顔につられるように、梨柚の頬に一筋の涙が零れ落ちた。