コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
無に等しい場所で自分の存在価値について考えたかった。自分の価値を見出したかった。自分がどれだけの人に迷惑を掛けているのか。自分が存在する理由。自分の未来。やるべき事。そして昔からの友人。その頃の自分は、それについて考えることがしばしばあった。渦巻く自己嫌悪と罪悪感に呑まれながら。
---自分は昼が嫌いだった。あの太陽の眩しさ、直視できないような眩しさ。昔からの友人にそっくりだった。傍にいるだけでひしひしと感じる「違う世界の住民」だと感じさせられるあの感じ。自分で自分を卑下しつくしていた癖に、他人からそれを実感させられるのが嫌だった。この感覚もまた、自己嫌悪に陥るきっかけで。
こんなことを言っておきながらも、その友人が嫌いな訳では無い。むしろ、憧れもあった。そしてその憧れに混じり込む罪悪感。友人の笑顔を見る度にその罪悪感が自分の心を蝕む。その友人は過去に自分がやった事を覚えているのだろうか。笑顔を見る度にどうしようもなくいたたまれなくなって。惨めな罪滅ぼしの為にその友人に何か言葉を掛けたりしてできることは精一杯やった。そんな自分の行動に気づいてまた自己嫌悪。終いには、罪滅ぼしの為の行動と、友人と仲良くしたいという純粋な気持ち故の行動の区別がつかなくなった。
そんな自己嫌悪と罪悪感に苛まれた結果、被害妄想をするようになった。友人が復讐の為に今も自分と関係を続けているのでは無いか。と、そんな考えが頭を過ぎる日々。思い切って、「どうして自分と友達で居てくれているのか」と聞いてみた事がある。友人はきょとんとした顔で「仲が良いから」と首を傾げながら答えた後、無邪気な顔で笑った「どうしたのさ、突然」と。それを思い出した途端、自分の眉が寄ったのを自覚した。
友人は自分がやったことを覚えていないのだろうか。この疑問は、もう数え切れないほど抱いたことがある。もし、忘れていたと仮定して。過去に自分がやったことを思い出したら、どんな反応をするのだろう。自分のことを拒絶するのだろうか。自分が幾ら罪悪感の混じった渦巻く疑問を持とうが考えようが、友人はいつもと変わらない呑気な笑顔でいた。きっと、自分の友人に抱く感情も知らずに。自分と友人は同世代だった。その頃は中学三年生で、先程の疑問とはまた別の疑問を抱いていた。「友人が精神的に参っているのかどうか」これまた在り来りな疑問だが、受験生、そして思春期。精神的に不安定になってもおかしくない時期だった。週に一度は友人と遊びに出かけていた。いつも、友人は変わらない笑顔でいた。「世界にこれ以上の純粋なものがあるのかどうか」本気で考えるほどには純粋で、綺麗で、向日葵のようだった。
その時の自分は本気で友人が「精神的に参る」ということを知らないのではと考えていた。だからこそ、直接的に「辛いこととか無いの?悩みを抱えてたりしない?」なんて聞けるわけが無かった。純粋な向日葵に泥水をかけるようなものだと思っていたから。純粋な向日葵に「辛い」「悩み」なんて暗い単語を知られたくなかった。友人はいつでも能天気だった。きっと、自分の様に答えの無い無駄な哲学的な事を考えるこなんてことも、深く物事を考えることも無いのだろうと考えていた。実際、その通りだった。だからこそ、その友人と深い話をした事は無かった。
そんなことを話し合わなくても信頼関係は出来ていたと思う。小学生の時、お泊まりをした時に深夜に一緒に布団にくるまって学校の話をした。くすくすと笑いあって。そんな出来事で信頼関係は築けるものだ。些細な出来事に見えながら、あの空間はかけがえのないものもので、幸せだった。親に気づかれないようにこそこそとスリルを感じながら話していたあの瞬間は、自分の罪悪感を消し去ってくれた瞬間でもあった。あの頃は楽しかったな、とふと心の中で一人呟く。
---刺激の強い匂いが鼻をついて回想が途切れた。友人の腐った肉塊だった。友人の肉塊が腐るまでの時間の間、ずっと自分は回想を続けていたんだ。今この瞬間まで、ずっと。自分の眼に〝それ〟映っている。肉塊が、腐ったんだ。生命力が無くなった故に、黴菌に対抗出来なくなった〝それ〟はその黴菌に蝕まれている。肉塊の元があの友人であると気づけるのは、きっと自分だけだろう。肉塊になるまで、そして腐るまでを見届けていたからだ。この世界でこの出来事に気づいている人は〝私〟だけなんだ。言葉に表しきれない程の高揚感を覚えた。友人の最期を見届けたのは〝私〟友人の初めての友達も〝私〟友人にとって、人生で最後に会話した人物も〝私〟最後に眼に映した人物も〝私〟。「友人にとって、1番思入れのある人物も〝私〟であれば良いのに。」と、心の中で呟いた。ここで思考が途切れ途切れになってきた。どうやら、自己意識が腐敗を始めたらしい。じわじわと自分の思考が蝕まれていく。終いには自分までもが自己意識の無い肉塊になるのだろう。途切れかけの最後の思考が、自分の成り果てる姿を悟っていた。
曖昧な部分も山ほどあるので解説と補足をしていきます。度々主人公が話す「自分が過去にやった事」についてですが、少し分かりやすく言うとすれば、〝人間の醜い部分〟というのが重要な所です。例を挙げるとすれば自己顕示欲や支配欲、傲慢さなどです。そういう気持ちの現れた言動や行動で昔からの友人を傷つけた事を、主人公が引きずっていました。
実はを言うと主人公が肉塊になっていたのは最初からです。全て自己意識が無くなるまでの間に考えた主人公の回想や心中の言葉です。度々、論理観に欠けるような言動をしていたところがありましたが、思考の腐敗が進んだ故、というのが私の自己完結した見解です。まぁ、その論理観に欠けた言動というのはほとんど最後の友人が肉塊になった場面に出ていたものですが…笑
物語の終盤で、突然主人公が友人に歪んだ愛情?のようなものを抱いた言動がありましたが、それらの感情は元から主人公が抱いていました。思考が蝕まれていた故、罪悪感や自己嫌悪が友人への愛情へと変換されていました。そして同じ終盤の部分ですが、主人公が自分の一人称を〝私〟と表現する場面があります。感情の高まりがあった際に一人称が私となる謎設定です。「自分」というのは自己意識に最も相応しい一人称というイメージがあったので…冷静な時は自分で、感情の高まりや本能が顕になった際は「私」となるという設定です。
そして友人と主人公が肉塊になった理由ですがご想像にお任せします。主人公が友人と無理やり心中しようとしたというのが1番ありえそうですね。
集中力が途切れ途切れで解説の文がおかしなことになってます。読みにくければすみません。この小説の設定の構想と文を書いて終わるまで1時間半かかりました。考えている間や書いてる間はとても楽しかったです。今回も伝えたい意図や考えなどはありません。ここまで読んでくださりありがとうございました。