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「いいえ! こちらのかたは、わたくしに恨みを抱いているのです」
「それは、わたくしのセリフですわ! よくも自分の失態をわたくしに擦りつけましたわね!」
「なんですって!」

今にも掴みかからんとする二人の令嬢を前に、アンジェリカはオロオロとやり場のない白い手を宙で行ったり来たりさせるばかりだった。

その様子を眺めていた令嬢が一人、ニヤリと笑う。

「まあ……」

扇で優雅に口元を隠して笑う令嬢。
少々派手な姿の彼女は、名をヴィオラと言った。

「ブラウン伯爵家とスミス子爵家は、領土をまたがって流れる河川の使用利権をめぐって、ここ十年争われている関係」

ヴィオラはアンジェリカや周りに言い聞かせるように、今まさに目の前で争っている令嬢たちの話を始めた。

「こちらの家門のお嬢様は、お茶会やサロンにはけして同席させてはならないと」

ゆっくりと辺りを見回し、困った顔の***********************

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