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第五話「車内での平和」
「と、都内ってすげぇぇー!」
「ったく、これだから田舎もんは…」
やはりこういう花山さんの人を下に見下すところも俺は人間として嫌いなんだと思う。
「埼玉って田舎なんすか…?」
「もうそんなんどーでもいいよ。東京以外
全部田舎でいい。」
日本国民の9割以上を敵に回した発言…
この人、なんか性格がふわふわしてて読み取りづらい…。エージェントってのはこういうもんなのか…?
「あとどんくらいで着くんすか?」
「寄っていきたいとこがあるからな。30分
程度だ。」
なが…
「文句言うなクソガキ。」
花山さんお得意の思考読み。
「え?別に文句言ってないんすけど。」
「随分とお喋りになったな。母親のことはもういいのかい?」
いいわけないだろう。…そのことを思い出しただけでなにもしたくなくなるからあえて考えないようにしてるんだ。
「ん…」
「あ、鬼道さん」
このタイミングで俺の肩にずっと寄りかかっていたクマ男こと鬼道さんが起きる。クマ男という呼び方は流石に失礼なので心の奥底に一生
封印しておこう。
「これは…どういう…」
「あ、これはですね…」
自分で聞いておきながら俺の口を二本指で
塞ぐ鬼道さん。
「ふむ…なぁるほど、大体状況は推測できたよ。…しかし驚いたねぇ、あの時は。なぜ俺が大のハチ嫌いだって分かったんだい?」
すげぇ切り替え速度。状況を推測して常に頭を最速で切り替える…こんなすげぇ人なのかエージェントって。
「いや…あれはたまたまだったんすよマジで。正直考える暇もたいしてなかったので
即興で思いついた策があれでした。」
「ハッハァ〜強運の持ち主だね。正木君は。まさか俺が気絶させられるとは思ってなかったけど…これでも俺、プロなんだぜ?」
うん…あの滲み出るオーラでそんなのはすぐにわかりましたよ…
「正木。ちなみにそいつは一応新人だぞ。」
高速道路をかったるそうに運転しながら花山
さんが言う。
「そ、そうなんすか…?」
「あぁ。まぁ期待の新星ってやつだ。ステルスキッドではないぞ。もう大人だからな。」
「わぁ〜そんなふうに花山さんに言われるなんてうれしーな?」
ってことはただのプロじゃねぇじゃん…才能
アリアリの期待のルーキー相手にしたのかよ…、やっぱ俺って意外と凄いのでは!?
「だが、お前昔も教官によく言われたと思うが殺気が出過ぎだ。ドバドバ出ていたよ
オーラが。外にいた僕もわかるほどにね。」
「マジすかぁ〜やっぱそこだけはなおさねぇとなぁ…」
…?まてよ。あれ演技じゃなかったのか…?
ガチの殺気を出していたってことはまさか…
「あのぉ〜鬼道さん、あれ試験みたいなもんだったんすよね。」
「うん…?そーだよ。花山さんから聞いてないかい?」
「いや、聞いてましたけど…無意識に殺気出してたってことは俺のことガチでヤりにきたんじゃ…」
「うん…?そーだよ。試験に手を抜いてどーするんだい?だからこそ君がすごいんだろ。」
あ…頭おかしいんだこの人。
「あ…はい、そーっすね、なんでもないっす…」
「鬼道。目的地につく前に正木に色々教えてやってくれ。大体は説明した。」
「りょーかいでーす」
つ、ついに詳細が知れるのか…
「はぁい、正木君。俺の名前は鬼道修平ね。よろしく頼むよ。このクマがチャームポイントだよ!」
「は、はい…俺は遠藤正木っす。中2で…
バスケ部所属です。」
「うん。知ってる。」
そして流れる沈黙。…あれ?これ前にも
なかった?
「うーんまずはエコーの役職をおおまかに教えよう。まずは一般諜報員。俺はこれだ。
そして研究員。これはまぁ様々なテクノロ
ジー開発等の研究などいうなれば機械系の
プロ。そして上層部にわかれている。ここからも例えば研究員だと何部門とかに枝分かれしてくんだけどね。そしてもうとにかく
めちゃくちゃ役割が多いんだよ。暗号解読官なんてのもいるし。エージェントなら大体は暗号解読はたしなんでいるが、特殊なものはプロじゃないと厳しいからね。諜報員が盗ってきた
特殊暗号を解読する仕事さ。
あとはまぁ仲介人なんてのもいるが、これは
情報屋だな。ウチ専属なわけじゃないが仲良い情報屋1人くらいは作っといたほうがいいと思うぞ?」
「そうなんすね?」
あながちにエージェントといってもひとくくりにできるわけじゃなさそうだ。予想の百倍くらい複雑。…あれ?、花山さんは一般
諜報員として説明されなかったがどこに入るんだ…?
「あのー、花山さんも一般諜報員なんですよね…?」
一瞬ビクッと花山さんが肩を震わせる。
「ん、あー…いやw立場上それ以下さw」
「あ?」
肩を震わせながらも鬼の形相でこちらを振り向く花山さん。…前見ろよ事故んぞ…
「まぁまぁそう怒らずに…いいかい正木君。花山さんの役職は、俺たちの間ではガイド、と呼ばれている。案内人というような意味合いでね。おおまかに説明すると任務場所まで諜報員を運んだり任務内容を伝えたり…時により俺らのサポートをしてくれる人たちだ。ステルスキッドの場合だとなにか特殊な場合未成年の諜報員の保護者的役割も果たしたりする。…まw言うなれば雑用って感じ?w」
「へぇぇぇ〜?」
あんなに偉そうにしてたのにそんな下の位
だとは花山さん…いや、俺が正式にエージェントになったあかつきには花山と呼ぼう。
そしてこき使ってやるんだ。
「あのなぁ…」
呆れ顔で何かを言おうとする花山…さん。
「まぁまって」
それをさえぎるように運転席を軽く蹴る鬼道さん。
「だけどね…この花山将吾って男は一味違うんだよ。一応元凄腕…とまでいくかいかないかくらい活躍した人だからね。」
「元エージェントなんすか…?」
「あぁ。意外と歴戦の猛者なんだぞこの人は。だからガイドの中でも結構尊敬されてる方なんだぞぉ。」
でも歴戦の猛者というわりには若くないか…?
「それにしては若い気が…」
「それ!それな!それなんだよ。僕も初めて聞いた時は同い年くらいじゃんって思ったんだけどね!」
いやあんた何歳かしらん…
「この人詳しくは言えないけど30代後半の
おっさんだよ?」
「えぇええええええええぇ!」
マジかっ、…外見はマジで21とかそこらへんのバリバリの大学生みたいなのに…
「三十代で一人称僕…」
「痛いよねぇ…わかるよぉ〜…」
「あ?」
今度は鬼というよりも悪の権化のような顔でグルンッと振り向いてくる花山さん。…いやだから事故るて…
花山さんが悪魔の権化顔をこちらに向けるのをやめたその時、誰かの携帯電話が世界が終わるまではの着信音とともに鳴る。
…世代的に花山さん…だな。
そして花山さんは右ポケットに右手をつっこみスマホを勢いよく取り出す。
「花山さぁーん、利き手じゃない左手で運転するのは危ないんじゃないんですかぁ〜?」
鬼道さんがニヤリながら言う。
「うるせぇ。舐めんな。」
そう一言放つと速攻で電話に出る花山さん。
…左手運転かっくいぃぃ〜!
「はい…花山です。…はい、は…え?」
電話に出て数秒もしないうちに驚きを見せる花山さん。
すると、鬼道さんが俺の耳にささやく。
「ワンチャン振られたんじゃねーか?あの
おっさんw」
「ぶぐっwww」
思わず吹きそうだった。…危ない危ない。
意外と電話中は相手の生活音とかが聞こえるもんだ。
「まじすか…はい…、、わかりました。では
直行という形で…?はい。了解しました。
失礼します。」
そして電話を切り終えスマホを右ポケットに滑り込ませる。
「…予定変更だ。」
「…え?」
俺と鬼道さんは同時にアホらしい[え?]を
放った。