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「いやー、やっぱり宝石って良いですよね！
あ、もちろん綺麗ですよね、って意味で！」
宝石屋を出て、若干の白々しさを織り交ぜながらエミリアさんに話し掛ける。
私だって一応は女の子だからね。
綺麗なものは綺麗だとは感じるんだよ。いや、本当に。
「はい、そうですね！ とっても綺麗な宝石がたくさんあって――
……わたしはキラキラしたものが好きなので、ダイヤモンドとかアクアマリンが欲しくなりました。
ほら、わたしのローブにも合いそうでしたし」
「うーん、確かに合いそうですね。
ちなみに私も透明でキラキラしたのが好きですよ。光が織りなす煌めきというか――」
「心にぐっと来ますよね！」
「ですよね！」
「……ところでアイナさん、最後に何か買っていました？」
「あ、はい。
でも、お見せするほどのものでは無いですよ
「えーっ。いいじゃないですか、見せてくださいよー」
「えぇ……？ いや、でも本当に……」
「みーせーてーくーだーさーいー！！」
あんまり、見せたくなかったんだけどなぁ……。
私は観念して、アイテムボックスから宝石屋で受け取った頑丈な紙袋を取り出した。
「はい、どうぞ……」
ガサッ
「……え？
何か重いですけど、これって……？」
エミリアさんは紙袋を覗きながら、少し困惑して言う。
「宝石……というか、屑石ですね」
「はい、加工のときに出た欠片でして」
「え？ これ、何に使うんですか？」
「錬金術の素材に……」
ここまで言い掛けてエミリアさんの方を見ると、『あ、そうでしたね……』みたいな顔で見られていた。
ですよね！ 分かってました！
だから見せたくなかったのに！！
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
次に来たのは、鍛冶屋が並ぶ一角だ。
さすがに鉱山都市だけあって、かなりの鍛冶屋や武器屋が軒を連ねている。
「ははぁ……、壮観ですねぇ……」
「まったくですね。
ルークさんはどこか、ご存知のお店はありますか？」
「いえ、特には。
仕事で来たことはあるのですが、それなりに大きいところで、発注したものを受け取るだけでしたからね。
顔馴染みの鍛冶屋はありませんよ」
「そうなんだ？
とりあえず、そこの大きいお店に入ってみる？」
「そうですね、そうしましょう」
ルークの案内で、ひとまずはめぼしいお店に入ることにした。
「うーん、結構広いね」
お店の中に入ってみると、想像以上の広さだった。
壁にはたくさんの武器が飾られており、気軽に手に取れるようになっている。
「そういえば私、武器屋って初めてかもしれない」
ゲームでは散々お世話になったものだけど、実際に入るなんて初めてだ。
クレントスでは最後の最後で杖を頂いたものの、お店で買ったわけでは無かったし。
「それじゃ、武器屋デビューですね！
早速良い武器を――
……って、アイナさんの場合はその杖が立派すぎて、そこらのお店じゃこれ以上のものは見つかりませんよ」
「そういうエミリアさんは？」
「わたしはこの杖で満足してますから……。
どちらかといえば、魔石が欲しいですね」
ああ、お金が無くて買えないって言ってたもんね。
「さっきの宝石屋には魔石はありませんでしたが、ここにはありますかね？」
「えーっと……あそこでしょうか？
でも、スペースが狭いですね。大したものは無いかも……」
「とりあえず行ってみますか。
ルークは――」
……真面目な眼差しで、剣を物色している。
飾られている剣はルークのものと同じくらいか、それより上のランクも少しはあるようだ。
やっぱり主戦力なのだから、ルークには良い武器を持ってもらいたいな。
「私たち、魔石を見てくるね」
「それでは私も……」
「ああ、大丈夫、大丈夫。
すぐそこだから、ルークはここで剣を見てて？」
「あ、はい。分かりました」
ルークは引き続き視線を剣に戻して、再び集中し始めた。
いつもより何となく素直なところを察すると、やっぱり武器屋には来たかったんだろうなぁ。
エミリアさんと一緒に魔石のスペースにいくと、30個くらいの魔石が綺麗に並んでいた。
「うーん……。やっぱり、量は多くありませんね」
「そうなんですか？」
「たくさん売っているお店に行けば、それこそずらーっと並んでいますから。
量があれば面白い魔石もあるんですが、ここは実用的なものばかりですね」
「……面白いもの？」
「はい。魔石っていうのは色々な力が混ざり合って結晶化する石なのですが――
……混ざり方次第で、変な効果を持つ魔石が出来ることもあるんです」
「へー。例えば？」
「歩くたびに『ぷぎゅ』って鳴る魔石とか」
「……それ、何の使い道があるんですか？」
「さぁ……？
魔石は誰かが狙って作ったものじゃなくて、自然に結晶化するものですからね……。
全部が全部、役に立つものでは無いんです」
「ふむ……」
「とはいえ、さすがにお店に並んでいるものはそれなりのものが多いですけどね。
まずはそういったもので、目を肥やしていければ良いと思います」
なるほどなるほど。
魔石は多分、錬金術では作れなさそうだからなぁ。
少し前に空箱の魔石を調べてみたら、素材には『無垢の魔石』やら『空箱の力』が必要だったし。
『空箱の力』のようなもの――
……『無垢の魔石』に入れるものを自由に扱えれば、どんな魔石でも作れそうなんだけど……。
「それじゃ、どんな魔石があるのか見てみますか」
私は目の前の魔石に、鑑定を掛けていくことにした。
──────────────────
【剛力の魔石(小)】
力が1%増加する
──────────────────
【斬撃の魔石(小)】
斬撃の攻撃力が1%増加する
──────────────────
【粉砕の魔石(小)】
破砕の攻撃力が1%増加する
──────────────────
【増幅の魔石(小)】
魔力を1%増加する
──────────────────
【空箱の魔石(小)】
重量を15%軽減する
──────────────────
――おっと、空箱の魔石(小)があるぞ。
お値段は……金貨12枚！
「エミリアさん、これ、金貨12枚ですって」
「空箱の魔石ですか？
そうですね、金貨10枚は底値くらいなので……売っていれば、大体こんなものですよ」
頭の中ではすっかり金貨10枚のイメージだったけど、流通量が少ないものは値段に幅が出てしまうのか。
欲しいときに買うべきか、安いときに買うべきか……。
うーん、そういう買い物は苦手なんだよなぁ。
「エミリアさんは、何か良さそうなものはありました？」
「特には無いですね。空箱の魔石、くらいでしょうか。
やっぱりこのお店のメインは武器……ということで、魔石はオマケくらいなんでしょうね」
「なるほど……。
それじゃ、ルークのところに戻りますか」
「はーい」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「それではルーク君。欲しい武器を教えてくれたまえ」
「無いです」
――うぉい！
「え、えー？
あんなに真剣に見ていたのに……？」
「ああ、いえ……。確かに良いものもあるのですが、今とそんなに変わらないというか……。
それに武器というのは、自分の命を預けるものなので。
どうもこう、ピンと来るものが無いといいますか――」
……うーん、なるほど。
ルークがそう言うのであれば、多分きっとそういうものなんだろう。
「そっかー。それじゃ、もし何か欲しいのがあったらちゃんと言ってね。
こういうところで遠慮するのは無しだからね！」
「分かりました。ありがとうございます」
「……というか、鍛冶屋もたくさんあるからね。
ここで決めなくちゃいけないわけでもないし」
「え？ まだ剣を見て回るんですか？」
「ダメ？」
「時間がちょっと……。
それでしたら今度、私一人で来ようかと思います」
おや？ 理由があるとはいえ、ルークから一人になろうとするなんて珍しい。
やっぱりじっくり探したいんだろうね。
別に側で待つなんてどうってことは無いんだけど……まぁ、一人で集中したいのかな？
「それじゃ今日は止めておいて、次の自由行動の日はそれで……って感じで良い？」
「はい、分かりました」
私たちは武器屋から出て、次は防具屋に――
……向かおうとしたのだが、太陽がずいぶんと高い位置にある。
「大したこともしてないのに、もうお昼だね。そろそろご飯にします？」
「はい」
「はい！」
というわけで、ご飯タイムに突入することにした。
どこか良いお店はあるのかな……？
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