チュッ……と音をたてた颯ちゃんの唇は、離れることなく微かに動く。
その甘美な柔らかさを味わいたくて、同じように微かに唇を動かす。
互いに上下の唇は閉じたまま、時折角度を変え唇を押し付け合うと……唇に動くモノを感じる。
それはゆっくりと上唇の真ん中のなぞり、次に下唇の真ん中をなぞるとチロチロ……と、上下の唇の合わさるのを溶かすかのように動いた。
はっきりと舌だとわかるその行為に、私はどうしていいのかわからなくなる。
すると
「唇…開いて……」
私の唇を食べながら颯ちゃんが言う。
そう言われても……たぶん開いてはいないと思うけど、きゅっと閉じていた唇が緩んだとは思う。
同時に、頑張っていた爪先立ちも緩みかかとが床に着くと、颯ちゃんの片手が私の後頭部を支えるように添えられ、温かい舌が私の唇の湿った部分を舐め始めた。
一瞬、ゾワッ……と鳥肌が立ったような気がするのは、歯医者でも同じだ。
歯を診るため指を唇の内側に入れられるとき必ず、ゾワッ……として体温が上がる。
それを颯ちゃんの舌でされる……唇の内側、裏側をチロッと舐められると、私の手が脱力し、その手は颯ちゃんの鎖骨辺りに降りた。
「リョ…ウ……」
唇は触れたままに呼ばれ、返事のしようがない。
代わりに彼に触れている手で、ぎゅっ……とそのカーディガンを握った。
「リョウ…止めて……俺を止めてくれないと…」
颯ちゃんの初めて聞くような戸惑う声に
「そぅ…」
彼の名前を呼ぼうとしたが、それは彼の口内に消え、再び温かい舌を……今度は上顎に感じる。
「ぅ…ん…」
唇の隙間から漏れた自分の声が、ただ漏れただけと思えぬ大きさで耳につき、カッと体温が急上昇した。
私の口内もさらに熱くなったのだろうか……彼の舌の動きが加速する。
颯ちゃんの舌のせいで行き場を失っていた私の舌を、彼の舌が弄び時折ねっとりと合わさりチューッ……と吸われた。
慌てて、彼の肩か胸かもわからないままバンバンと叩くと
「リョウ…すげぇ気持ちいい」
想定外の言葉が耳元で囁かれ、彼の腕に強く抱きしめられる。
「颯…ちゃん……」
黙って、ただ私をきつく抱きしめる彼に声をかける。
「…寝たの……?」
「くっ…寝てない……寝て欲しいけど起きてる…寝かしつけの真っ最中」
「…ちょっとわからないけど……寝たいなら、すぐにお風呂沸かそうか?」
「イヤ」
私はどうすればいいのだろうか…上昇した体温のまま包み込まれて……
「颯ちゃん…私、いろいろわからないけど……イヤじゃなかったから…」
「がぁ…ぁ…寝た子を起こすなよ…まあ、寝てもいないが…」
颯ちゃんは、ガバッと私から離れるとクルリと後ろを向き、やけにゆっくりと前屈みになって…何してるの?ってくらいゆっくりと前屈みの姿勢でコンビニの袋を持ち上げた。
私は台所でお湯を沸かしながら
「これとこれしかない。あとはグラスが1個」
と、マグカップと湯飲みを颯ちゃんに見せる。
「それで十分」
彼は言葉と裏腹に眉間にシワを寄せながら、真新しい焼酎の封をきった。
コメント
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甘い甘いキス💞に(〃ノдノ)テレだったんだけど… 2人の『寝る・寝た・起こすな』トークにもう笑っちゃって😆もう何回でも言っちゃう!!!良子ちゃんが可愛くてしょうがない〜っ•͈ᴗ•͈♡