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3件
めめ、かっこよ🖤
今日、最後の仕事を終えて、楽屋に向かって歩いていると
「おや、久しぶり」
以前お世話になったプロデューサーに出くわした
「お疲れ様です」
渡辺と目黒は丁寧に挨拶をし、そのまま別れようと思っていたが
「2人共、今日はもう仕事終わり?良かったら、夕飯ご馳走するから食べに行かない?」
突然の誘いに戸惑ったものの
特に予定の無かった2人は、その誘いに乗る事にした
◇◆◇◆
「好きなモノ頼んで良いからね。全部俺が奢るから」
「ありがとうございます」
一昔前の古いタイプのプロデューサーで【どう?俺って凄いのよ】という感じが、言葉の端々から透けて見える
「うわっ!これ美味いです!」
「そうだろ、渡辺君分かってるね〜」
素直に驚きを言葉に出す渡辺に、プロデューサーの気分も上々になる
「ここさぁ食べ物も美味しいんだけど…置いてる酒も、美味いんだよね〜。2人ともいける口?」
「いや、僕はちょっと…」
目黒は素早くそれを断り、プロデューサーは渡辺に的を絞り…酒をしつこく勧めてきた
「大丈夫だって…高い酒だから、どれだけ飲んでも次の日に二日酔いにならないし…一度、飲んでみて欲しいんだよな〜」
「でも俺、酒弱いので…少し飲んだらすぐ酔っ払っちゃうし…」
「へぇ…そうなんだ」
「?」
ほんの少しだけ…プロデューサーがニヤリと笑ったように見えた
「大丈夫だって。ほんの少しで良いから…少しだけ、ねっ」
何が大丈夫なのか分からないが、何度断ってもしつこく勧めてくる為…渡辺は渋々了承した
◇◆◇◆
「翔太君…大丈夫?」
案の定、すぐに酔ってしまった渡辺は…目黒に肩を支えられながら店を出る
当然、自分が送って行くのだろうと思っていると
「目黒君は、ここまでで良いよ。渡辺君は俺が送って行くから…」
そう言って、肩に乗っていた目黒の手を払いのけ…強引に渡辺を自分の方へ引き寄せる…
「大丈夫。飲ませたのは俺から…責任持って送って行くよ」
渡辺の腰に手を回し、お互いの身体を密着させるその姿に…目黒はようやく思い出す
それはこの男が、渡辺の事を異様に気に入っていたと言う事実…
何かあると、すぐ身体に触れて話し掛け…
お気に入りだった渡辺は、この男の手掛ける他の番組にも【特別ゲスト】としてよく呼ばれていた
「………」
最近会っていなかったから、そんな事すっかり忘れていた…
クセの強いプロデューサーや、業界人はたくさんいて…その一つ一つを全部忘れずに覚えているという事は到底無理な話なのだ…
「………」
目黒は、凄く嫌な胸騒ぎがして…再び渡辺を自分の方へ引き寄せる
「心配には及びません…翔太君は俺が責任を持って送って行きますので、大丈夫です」
その申し出を丁重に断って
「いや…でも、俺が…」
まだ何か言おうとしていたプロデューサーに向き直り
「今日は本当に、ご馳走様でした。失礼します」
そう言って深々と頭を下げ…そのまま、その場を立ち去った