短編集1
☃️、🍌
死、血表現あり
「また明日」
『また明日ね。』
君はそう言って道を進んで、
自分も来た道を折り返して進んだ。
それが、間違いだった。
ふっと、君は世界から消えた。
人々の悲鳴がして、振り返ると
“誰か”が倒れていた。
それが最愛の仲間だと、認めたくなかった。
あの時引き留めていれば。一緒に行けば。後悔が押し寄せる。
駆け寄っても、息をしていない。
蝋燭の灯火が誰かに消されたかのように。
命は儚いと知った。
どれだけ元気だったとしても。
〈そんなっ…なんでっ…なんでっ…‼︎〉
大通りの中央部で、
夕方の空にかき消されないように、君に届くように。
泣いて叫んだ。
救急車やパトカーの音にも、人々のざわめきにも負けないくらい、
叫んで、叫んで。
力尽きて。ただ涙を溢す事しかできなくて。
だんだんと熱を失って行く君の頬に、大粒の涙が溢れる。
身体を離さまいと強く抱きしめる。
涙のぬくもりで、
体のぬくもりで、
少しでも体温を失わさないように。
息をふきかえしてくれるように。
溶け切った蝋に着火剤で火を灯そうとする。
無駄な事なのに。
君が笑えば、僕も笑う。
君が泣けば、僕も泣く。
君が怒れば、僕も怒る。
君が消えちゃったら、僕は何もかもを失う。
それくらい、大切だから。
もう一度抱きしめる。
僕の頬には君の血液が、
君の頬には僕の涙が。
涙で歪んだ瞳からは、
自分の腕の中に息絶えた君が居る事、
周りが哀れむような視線で見つめている事しかわからなかった。
〈なんで…なんでなの…〉
ー
夜、夢を見た。
君が、僕を見ている。
『 また明日ね。』
そう言って、君は進む。歩行者用信号は、青だった。
その瞬間。右から曲がってきた黒いワンボックスカーが視界に入り、意識が朦朧とする。
自分が駆け寄ってくる声を感じながら、完全に意識が飛んだ。
そこでハッと、目が覚めた。
横をみると、君が立っている。
なあんだ、全部全部、夢だったんだ。
そんな微かな希望を掴もうとする。身体に触れようとする。
あと少しで手が届く。けれど。
君の身体は見えなくなった。
触れたはずの手は支えるものがなくなり、力を失って下がる。
〈あはは…あはは……おんりーッ…おんりーッ‼︎〉
声が聞こえた気がしたんだ。
『ばいばい、おらふくん。また…いつかね。』
って。
短編集楽しい
コメント
1件
短編集って書きやすくていいよね〜