テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
の前に立ったその時――リクたちは、確かに「カチリ」と何かが外れるような音を聞いた。
次の瞬間、頭上からドスンッッ!!と地面が揺れ、巨大な赤黒い影が舞い降りた。
⸻
リク
「な、なに……⁉︎」
アイビー
「うそっ……なにこれ、ザリガニ⁉︎……いや、デカすぎでしょ!!」
ロビン
「……来た。門の番人(ガーディアン)……クラスタクス。俺……知ってる」
巨大ザリガニ・クラスタスクは両方の鋏を大きく開き、威嚇するように「カチ、カチ……」と甲殻を鳴らす。
まるで、通ろうとする者は全て粉砕すると言わんばかりの存在感。
リク
「ってことは、こいつを倒さないと……次に進めないってことだな……!」
ロビン
「ああ。……逃げ道は、もうない」
鋏を振り上げたクラスタクスが、地面を抉るほどの一撃をリクたちに振り下ろした。
リク
「くっ……っ、でかいくせに速い!!」
間一髪で横跳びしながら叫ぶ。破壊された地面の破片が飛び散り、風圧だけで身体が吹き飛ばされそうだった。
⸻
ロビン
「まずは……動き止める」
そう言うと、ロビンは矢を素早く三本構え――その場でスキル発動。
《スキル:シュラプネルアロー》
放たれた矢が空中で分裂し、十数本の細かい矢がクラスタクスの脚部を狙い撃つ。
アイビー
「今だリク!前からいって!!」
⸻
リクはアイビーの声に頷き、地面に転がっていた鋭い岩を手にして突撃した。ザリガニの関節部の隙間――防御の薄い腹部に向かって跳び込む。
リク
「ここなら……通るはずだッ!!」
全身の力を込めて、鋭く尖った岩を振り下ろす――が、クラスタクスの鋏が迎撃しようと動いた。
アイビー
「させないッ!!」
直後、アイビーが鉄パイプを構えて横から突撃。全体重をかけた一撃がクラスタクスの鋏に直撃し、軌道を逸らした。
⸻
ロビン
「リク、今だ――!」
リク
「うおおおおおッッ!!!」
ズブッッ!!!
鋭い岩が、クラスタクスの腹部装甲の隙間に深く突き刺さった。
叫びのような異音を発し、クラスタクスの動きが一瞬止まる。
⸻
アイビー
「決めるよ、ロビン!!」
ロビン
「……了解」
アイビーとロビンが左右から同時に跳び上がり、それぞれの武器を構える。
鉄パイプの全力の一閃
空中からの弓矢・一点集中射撃
そしてリクも、再度岩を握りしめて渾身の一撃を振り下ろす。
⸻
三人の攻撃が同時にクラスタクスの心臓部を貫き――
ズドォンッ!!!
クラスタクスの巨体が、地響きを上げて地面に崩れ落ちた。
⸻
リク
「……やった、のか……?」
アイビー
「はぁっ、はぁっ……完全に……沈黙してるね」
ロビン
「……三人なら、倒せる。次、進める」
崩れ落ちた巨大なザリガニの亡骸。戦闘の余韻がまだ空気に残る中、リクとアイビーの体に、淡く輝く金色の光がふわふわとまとわりついていた。
リク
「……ん? な、なんか俺……光ってる……?」
アイビー
「私も。これ……さっきの戦いのあとから……」
二人は腕を見たり手を振ったりしながら、その光の正体を不思議そうに眺めていた。
そのとき、ロビンがすっと近づいてきた。
ロビン
「それ……XP。倒すと、もらえる」
リク
「XP……? ああ、なんかゲームで聞いたことあるけど……経験値ってやつ?」
ロビンは無言でうなずいた。
ロビン
「ここでは、戦って……進むと、力がつく。XPたまると、スキルとか……強くなる」
アイビー
「つまり、この光は成長の証……?」
ロビン
「そう。ドリームコア……そういうルール」
⸻
リクはゆっくりと自分の手の甲にまとわりつく金色の光を見つめ、拳を軽く握った。
リク
「そっか……だったら、俺、もっと強くならなきゃだよな。こんな世界で……生き延びるには」
XPの光がふわり、ふわりと空気を漂いながらリクとアイビーの身体へと吸い込まれていく。
肌に触れた瞬間、その光は粒となって溶けるようにして吸収され――
次の瞬間。
アイビーとリクの身体が淡く、しかしはっきりと光り出した。
金色とも銀色ともつかない、不思議な輝きが二人を包む。まるで内側から発光しているかのようだった。
リク
「な、なにこれ……!? 体が……熱いような、でも痛くはなくて……」
アイビー
「私も……力が、流れ込んでくるみたい……!」
リクの目の前で、アイビーの髪がふわりと宙に揺れた。彼女の瞳は一瞬、淡い金色に輝いたように見えた。
ロビン(ぼそりと)
「……スキル覚醒、ちかい。たまると……変化、おきる」
リク
「スキル……!?」
アイビー
「じゃあ、これって……」
ロビン
「XP、あるレベルで……体、進化する。限界、こえる。ドリームコアの、掟」
光はやがてすっと収まり、二人の身体は元に戻った――だが、確かに“何か”が変わっていた。
光が収まり、リクは静かに息を吐いた。だが、その直後――
――キィィン……という耳鳴りのような音が脳内に響いた。
そして、誰の声でもない。明らかに“人間ではない”、無機質な音声がリクの脳に直接届いた。
「……おめでとうございます。スキル:分析 を取得しました。」
リクの瞳が一瞬、ピクリと揺れる。聞き覚えのない言葉、機械のような冷たい女性の声。
リク(内心)
「今……何か聞こえた……? 機械の声……? 分析って、なんだ……?」
周りを見ると、アイビーもロビンも平然としている。どうやら、この声はリクにしか聞こえていないようだ。
そしてリクの視界に、今まで見たことのない青白いウィンドウのようなものが一瞬だけ浮かんだ。
【スキル:分析】
状況や対象を観察し、内部構造・弱点・真偽などの情報を取得する能力。
※連続使用による負荷注意。
リク(内心)
「スキルって……まさか、ロビンの言ってたやつ!?」
アイビーが光の中で静かに目を閉じていた。ふと、彼女の身体を包んでいたキラキラとした光が再び輝きを増し、彼女の皮膚を伝ってゆっくりとその内側へ吸い込まれていく。
そして、リクと同じく、アイビーの脳内に無機質な機械音声が響いた。
「……おめでとうございます。スキル:強度増幅 を取得しました。」
アイビーは目を開けると、自分の身体にほんのりとした熱を感じた。筋肉の奥から力が湧き上がるような感覚――今までとは違う、確かな変化だった。
アイビー(内心)
「強度増幅……。これが、私に与えられた力……?」
目の前のリクが戸惑いながらも何かを掴んだ様子を見て、静かに微笑んだ。
混乱しながらも、胸の奥が高鳴る――
今、確かに何かが“始まった”という実感があった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!