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#夢主
そら
255
みゅう

68
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朝日が薄いカーテンの隙間から差し込んでいた。
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静かな部屋。
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遠くで鳥の鳴き声が聞こえる。
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〇〇はゆっくりと目を開けた。
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知らない天井。
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いや。
任務先の宿舎だ。
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思い出すまで数秒かかった。
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そして。
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隣から規則正しい呼吸が聞こえる。
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「……」
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そっと顔を向ける。
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リヴァイが眠っていた。
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驚くほど穏やかな寝顔だった。
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兵士長でも。
人類最強でもない。
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ただの青年の顔。
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長い睫毛。
少し乱れた黒髪。
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普段なら絶対に見られない姿。
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〇〇は思わず見入ってしまう。
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「何見てる」
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突然声がした。
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「わっ」
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リヴァイの目が開いていた。
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「起きてたの!?」
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「今起きた」
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明らかに嘘だった。
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絶対もっと前から気付いていた。
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〇〇が頬を膨らませる。
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「寝顔見てたな」
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「少しだけ」
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「少しか?」
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図星だった。
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思わず笑ってしまう。
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リヴァイも小さく息を吐いた。
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その表情は柔らかい。
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兵団では絶対に見せない顔。
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しばらく二人で黙っていた。
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不思議な静けさだった。
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気まずくない。
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ただ落ち着く。
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そして先に口を開いたのは〇〇だった。
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「なんか変な感じ」
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「何がだ」
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「だって」
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少し照れながら笑う。
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「十五歳の頃は想像もしてなかった」
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屋根の上で星を見ていた頃。
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訓練で言い合っていた頃。
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片想いなんて知らなかった頃。
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その頃の自分たちが見たら驚くだろう。
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「そうだな」
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リヴァイも珍しく否定しなかった。
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むしろ。
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少しだけ遠くを見るような目をした。
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「俺も想像してなかった」
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地下街育ちの少年。
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誰も信じなかった。
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未来なんて考えなかった。
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そんな自分が。
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誰かと朝を迎えることになるなんて。
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「でも」
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リヴァイは〇〇を見る。
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その目は優しかった。
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「悪くねぇ」
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〇〇は吹き出した。
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「それだけ?」
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「十分だろ」
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「もっとこう、あるでしょ」
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「ねぇな」
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即答。
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だが。
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数秒後。
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少しだけ視線を逸らしながら続けた。
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「……幸せだ」
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〇〇が固まる。
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リヴァイ自身も少しだけ居心地悪そうだった。
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慣れていない。
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こういう言葉に。
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だが嘘ではなかった。
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何年も想い続けた。
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失いかけた。
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諦めようとした。
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それでも今。
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〇〇が隣にいる。
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その事実が何より嬉しかった。
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〇〇はしばらく黙っていた。
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そして。
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少しだけ身を寄せる。
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肩が触れる。
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「私も」
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小さな声。
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「幸せ」
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リヴァイは何も言わなかった。
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代わりに。
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そっと〇〇の手を握る。
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初めて会った十五歳の日から。
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何度も隣にいた。
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けれど今は違う。
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ようやく手に入れた場所だった。
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窓の外では朝日が昇っている。
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今日には本部へ帰る。
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また忙しい日々が始まる。
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兵士長と分隊長として。
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人前では今まで通り。
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けれど。
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二人だけの時は違う。
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それが少し嬉しくて。
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少し可笑しくて。
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〇〇は笑った。
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その笑顔を見ながら。
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リヴァイもまた、誰にも見せない穏やかな表情を浮かべていた。
コメント
1件
ああ、もうこの朝の空気感がたまらなかった……。知らない天井から始まって、隣のリヴァイの寝顔——あれは反則ですよ。兵士長でも人類最強でもない「ただの青年の顔」って一文だけで、二人がここに辿り着くまでの時間が全部滲んでくる。それでいて「何見てる」「今起きた」ってすぐ憎まれ口に戻るところも彼らしくて笑った。でもその後の「……幸せだ」は本当に効いた。リヴァイが視線逸らしながら絞り出すみたいに言うから、〇〇が固まる気持ちが分かる。お互い十五歳の頃から見てきた関係性だからこそ、この朝がどれだけ特別かが伝わってくる。短いエピソードなのに、二人の時間をたっぷり味わえる佳作でした。