テラーノベル
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◇
「わぁ……!」
ニアが目を輝かせる。
「いっぱいある……!」
並んでいるのは、焼きそば、たこ焼き、りんご飴、わたあめ、焼きとうもろこし。
「どれから食べるアル?」
鈴凛も完全に目移りしている。
「全部食べればいいんじゃないかな?」
フローがさらっと言う。
「……全部?」
ルカが真剣な顔で屋台を見渡す。
「……それはお腹いっぱい…。」
「ルカくん?そこは真面目に考えなくていいんだよ…?」
ソフィアが苦笑する。
その横ではラテが、
「焼き魚があるにゃ!!」
と、魚の屋台へ一直線に走っていた。
「ちょっ、待ってラテさん!?」
テルが慌てて追いかける。
「あぁもう…やっぱりこうなる…。」
その様子を見ていたリーナは頭を抱えた。
◇
「射的……?」
ミシェルが屋台を覗き込む。
「え、やってみたいです!」
ラグドールが銃を手に取った。
「こういうの得意だったっけ。」
ララビットが呟く。
「ふふん。任せてくださいよ。」
「欲しい景品は?」
ローラが少し考える。
「そうね…あのぬいぐるみとか。」
「了解です、絶対取ってみせますから!」
ラグドールが構える。
パンッ!
景品が少し揺れる。
「……。」
パンッ!
また揺れるだけ。
「……。」
パンッ!
「…………。」
「全然当たってないじゃん。」
ララビットが呆れたように言う。
「うるさいですね。」
そこへヴェルクが無言で銃を受け取る。
パンッ。
一発で景品が落ちた。
「…………。」
ミシェルが固まる。
「ちょっと、私への当てつけですか〜?」
「何が?」
ヴェルクは本気で分かっていなかった。
◇
「ナターシャさん、これ見てくださいまし!」
プリムローズが差し出したのは、大きなりんご飴だった。
「……?」
ナターシャは不思議そうに眺める。
「これ……どうやって食べるの?」
「えっ。」
#廃校past complex
ユメミリ@夏の絶不調祭り
315
るる
74
#闇
ruruha
1,447
プリムローズも固まる。
「……こう、ですわ?」
恐る恐るかじる。
「……硬いですわ〜…!」
「……やっぱり?」
二人でしばらくりんご飴と睨み合う。
そこへイリアがやって来た。
「お二人とも、何してるんですか?」
「りんご飴が……。」
「食べられませんわ……。」
「……なるほど。」
イリアは少し笑いながら。
「りんご飴は一気に食べるんじゃなくて」
「ちょっとずつ地道に食べるんですよ。」
「なるほど…!」
ナターシャも感心したように頷いた。
「…お祭りって……難しいね……。」
◇
「金魚すくい……!」
ラテの目が輝く。
「やりたいにゃ!!」
「ラテさん、金魚……。」
テルが少し不安そうに見つめる。
「取って食べませんよね…?」
「た、食べないにゃ!」
店主からポイを受け取ると、慎重に水面へ近づける。
「……。」
「…………にゃっ!」
金魚がポイの下をすり抜ける。
「……今のはノーカンにゃ。」
「いや、普通に逃げられただけですよ。」
もう一度ポイを慎重に、慎重に水面へ近づける。
「今度こそ……!」
そーっとポイを水へ入れる。
「……とっ、取れたにゃっ!!」
「おおっ…!」
一同から歓声が上がる。
しかし。
「……にゃ。」
ポイが破れる。
「…………。」
ラテは金魚を見つめる。
「……。」
「…………。」
「つ、強すぎるにゃ……。」
そんな様子を見て鈴凛がボソッと言う。
「金魚に負けたアル。」
フローが思わず笑う。
「でも、楽しそうだったね。」
ラテは少しだけ悔しそうに言う。
「……来年絶対リベンジするにゃ。」
◇
「ルカくん、何か食べたいものある?」
ニアが屋台を指差す。
「……。」
ルカはしばらく屋台を眺めていた。
「……あれ…。」
指差した先にあったのは、巨大なわたあめ。
「あっ!わたあめだ〜!」
するとルカは、わたあめをじっと見ながら呟いた。
「……あれって…雲?」
「えっ?」
「…空にあるやつと…同じ?」
ニアは少し考える。
「……気持ちは分かるけど、違うかな…。」
「あれは、わたあめっていう甘ーいやつだよ!」
「…そっか…。」
ルカは納得したように頷く。
ニアが店主へと話しかけ、わたあめをルカへ渡す。
ルカは両手で持ち、じっと見つめる。
「……食べ物?」
「そうだよ!」
「……。」
恐る恐る一口。
「……。」
「どう?」
「……甘い。」
ニアが嬉しそうに笑う。
そしてもう一口。
「……雲より…こっちの方が好き。」
「良かった!」
ニアは嬉しそうに笑った。
◇
「……そろそろ十九時ですね……。」
イリアが空を見上げる。
いつの間にか、夕方の空はすっかり薄暗くなっていた。
海の向こうには夕焼けの名残がわずかに残っているものの、村には少しずつ夜の気配が降り始めている。
屋台の明かりが一つ、また一つと灯り始め、先ほどまで賑やかだった通りも、海岸へ向かう人々の流れで少しずつ様子が変わっていた。
「すっかり楽しんじゃったわね。」
ローラが小さく笑う。
「……もう帰るの……?」
ナターシャが少し寂しそうに呟いた。
その言葉を聞いて、プリムローズがくすっと笑う。
「ふふっ、まだ帰りませんわよ!」
「これからが本番ですもの!」
「……?」
ナターシャが首を傾げる。
イリアはそんなナターシャに微笑みながら、海岸の方へ視線を向けた。
「皆さん、村長さんから説明を聞きましたよね?」
「『千夜の漂着祭』……。」
イリアはゆっくりと言葉を続ける。
「それが、これから始まるんですよ。」
海岸の方から、波の音が聞こえてくる。
昼間は屋台の呼び声や笑い声にかき消されていたその音が、今は不思議なくらいはっきりと聞こえていた。
遠くでは、祭りのために集められた灯篭が並べられている。
その数、千個。
一つ一つに村人たちの願いが込められ、これから海へと流されるのだ。
「……灯篭…。」
ラグドールがぽつりと呟く。
「そうですわ。」
プリムローズは嬉しそうに頷いた。
「願いを乗せた灯篭が、海の向こうの神域へ漂着することを祈る……。」
「それが、このお祭りですわ。」
ミシェルが海を眺める。
「もうすぐ、あの海が灯りでいっぱいになると思う。」
「これを見にわざわざ来る旅人もいるから。」
「……綺麗そう。」
ナターシャの目が、少しだけ輝いた。
プリムローズはそんな彼女を見て、嬉しそうに微笑む。
「えぇ。きっと、とっても綺麗ですわ。」
その時。
海岸の方から、祭りの開始を告げる鐘の音が響いた。
カラン……。
先ほどまでの賑やかな空気とは違う、どこか厳かな音だった。
イリアはゆっくりと振り返る。
「……行きましょうか。」
一行は、灯篭の待つ海岸へ向かって歩き始めた。
コメント
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作者コメント┊︎ まだ祭りは始まっちゃいないぜ
お祭りの屋台、すごく楽しそうでしたね!特にルカくんのわたあめを雲と勘違いするところが可愛くて、思わず笑顔になりました。「雲よりこっちの方が好き」って言うシーン、じんわり温かい気持ちになりました。ラテの金魚すくいリベンジ宣言も好きです。そして最後の鐘の音で一気に夜の祭典へ──灯篭がどう流れるのか、すごく気になります!