テラーノベル
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この世界は、古くより魔法世界と呼ばれている。
ここでは歯車や蒸気ではなく、
魔力と術式こそが文明の根幹を成してきた。
科学的原理に頼らず、
世界そのものに流れる魔力を利用して発展した文明──
それが魔法世界である。
興味深いことに、この魔法世界における
時間、暦、距離、質量、温度をはじめとするほぼすべての単位体系は、科学世界と同一のものが用いられている。
年は365日として数えられ、
一日は二十四時間に区切られ、
距離は同じ尺度で測られる。
これは偶然ではない。
後述する世界間交流によって、
科学世界の体系が合理的であると判断され、正式に導入された結果である。
魔法世界には現在、大きく分けて八つの種族が存在している。
その中には科学世界とほぼ同じ姿形を持つ種族も存在するが、
多くは魔力環境に適応した独自進化を遂げている。
だが、あえてここでは記さない。
重要なのは、この世界が単一の種族による文明ではなく、
複数種族が共存する魔法文明圏であるという点である。
魔法世界は、決して閉じた世界ではない。
定期的に、
科学世界から***「勇者」***と呼ばれる存在を召喚する儀式が行われている。
彼らは異世界人でありながら高い適応力を持ち、
しばしば世界規模の災厄や国家存亡の危機を解決してきた。
魔法世界の歴史は、
勇者の介入によって幾度も書き換えられてきたと言っても過言ではない。
一方で交流は一方通行ではない。
魔法世界は密かに、
科学世界へ調査団を派遣している。
彼らは存在を悟られぬよう慎重に行動しながら、
科学技術、思想、文化、制度の一部を収集し、魔法世界へ持ち帰る。
現代の単位体系、暦制度、時間管理の概念は、
この調査活動によってもたらされた成果である。
また調査団は同時に、
将来の勇者となり得る適性者を探し出す役割も担っている。
つまり勇者召喚は偶然ではなく、
長年の観測と選定の結果なのだ。
こうして魔法世界は、
魔法による文明を基盤としながら、
科学世界の合理性と制度を取り入れて進化してきた。
二つの世界は隔てられていながら、
水面下では確かに影響し合っている。
そしてその交差点に立つ存在こそが──
勇者なのである。
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