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フェリスさんから聞いたニコラさんの話……それはかなり衝撃的な内容であった。ニコラさんはおよそ2ヶ月に渡り、リアン大聖堂にある懺悔室に通っていたというのだ。
ニコラさんが懺悔室で語った内容が分かれば、彼女が失踪した理由も解明されるかもしれない。私たちの期待は高まった。ところが、様々な要因によりニコラさんの告白を第三者が知ることは不可能であると結論付けられてしまったのだった。
「なんだかすみません……捜査協力に来たはずなのに皆さんの頭を更に悩ませてしまうことになって」
フェリスさんの話を聞いて『とまり木』の方たちは無言で考え込んでしまう。私も今後の捜査がどのように進められるのか気になっている。室内は重々しい雰囲気に包まれていた。そのせいでフェリスさんは不安になってしまったようだ。
「そんなことないよ。フェリスさんのおかげで色んな事が分かったんだから」
「ミシェルさんの言う通りです。ニコラさんがリアン大聖堂に通っていた理由に、失踪前の彼女の様子など……フェリスさんの証言でより詳細が明らかになったと思います」
「バルト隊長に報告したってことは、ボスとルーイ先生にもこの話は伝わる。ここにいる俺たちに良い案が浮かばなくても、あの2人なら解決の糸口を掴んでくれるだろ」
「またしても殿下と先生任せになってしまうのは臣下として不甲斐ないですが、実際頼りになりますからね。殿下は言わずもがな……ルーイ先生は」
「私は殿下の先生にお会いした事がないのですが……『とまり木』の皆さんがそこまで信頼を寄せているなんて、凄い方なのですね」
少し落ち込んでいたように見えたフェリスさんだけど、ルーイ様の話題に興味をひかれたようだ。ルーイ様は正体を隠している都合上、私よりも交流する人たちが限定されている。フェリスさんも話だけは聞いていたみたいだけど、実際に顔を合わせたことは無いのだった。
「見たらびっくりするよ。ルーイ先生超絶美形だから」
「えっ……そうなんですか」
「ミシェルはほんと先生好きよなー……」
「いいでしょ。だって事実なんだもん。ですよね? クレハ様」
「は、はい!! もちろんです」
まさか私まで会話に巻き込まれるとは思っておらず、油断していたためか、変に力の入った返しをしてしまう。
美形と聞いてフェリスさんの目が生き生きとしていた。ルーイ様は誰がどう見ても格好良いので、ミシェルさんの主張には全面同意だ。フェリスさんもミシェルさんみたいにルーイ様のファンになっちゃったりして。
「クレハ様のお墨付きまで……これは、お会いするのが楽しみになりました。先生は殿下とオードラン隊長に付き添い、ニュアージュの者たちとの話し合いに参加なさっていると聞いていますが……」
「そうそう。もう終わってもいい頃だと思ってるんだけどね。ルイス、ちょっと様子見てこようか?」
「そうだな。ニュアージュの奴らからどのくらい情報もぎ取れたかも知りたいしな」
話し合いは思った以上に長丁場になっているようだ。こちらに報せが来るようなアクシデントは起きていないみたいだから良かったけど……
あまり心配し過ぎるなと忠告を受けたばかりであるが、やはり気になってしまう。レナードさんとルイスさんが様子を見に行こうと相談なさっているので、是非お願いしたいところ。
「姫さん、俺とレナードで別館に行ってみようと思うけどいいかな? すぐ戻るから」
「はい。私も経過が気になっておりましたので……お願いします」
「分かりました。それでは、少しだけ席を外します。2人とも、私たちが戻るまでクレハ様をよろしくね」
「了解でーす」
ミシェルさんとフェリスさんが揃って良い返事をしたのを見届けて、レナードさんとルイスさんは部屋の扉を開けた。その時だった――――
私の視界に飛び込んできたのは……見慣れた赤茶色と、眩しささえ感じるほどの純白。
「俺、参上!! 約束通り来たよー、ミシェルちゃん」
「……ルーイ様?」
なんと話題の人物の登場だ。クラヴェル兄弟が部屋から出ようとしたタイミングで部屋の前に到着したのだろう。私たちは一瞬時が止まったかのように、茫然と立ちすくんでしまった。そんな私たちの状態など知らんぷりで、ルーイ様はニコニコと笑顔で手を振っていたのだった。
「ルーイ様、お話はもう終わったのですか」
「ひとまずね。予想以上に色んな事が分かったよ。今は新しく得た情報を一旦整理してるとこ。レオンとセディはジェイク隊長と一緒にいるよ」
「そうですか。ルーイ様は怪我もあって大変だったでしょうに、長い時間ご苦労様でした。無事に終わって良かったです」
これが噂の『アルバビリス』か……
私はルーイ様の服装に注目した。ミシェルさんのテンションが上がったのも頷ける。アルバビリスは教会の司祭様が着てるような服で、ルーイ様に凄くよく似合っていた。髪型も服装に合わせたのか、前髪を後ろに撫で上げたオールバックなのも良い。
「てか、先生その格好めちゃくちゃ似合うね。あつらえたみたいじゃん」
「アルバビリスですね。さすが先生。ばっちり着こなしていらっしゃる」
「そう? レナード君もルイス君もありがとう。国王陛下にお願いして借りたんだ。ニュアージュの子たちに舐められないように気合い入れてみたのよ。クレハ、どう? 俺カッコいい?」
「はい! とっても素敵です。ルーイ様はどんな服でもお似合いになりますね」
私の言葉にリズが勢いよく頷いている。彼女もアルバビリスが相当お気に召したようだ。皆こぞってルーイ様の服装を褒めそやすので、本人も大変ご満悦な様子。
「それはそうとさ、みんなお揃いでどうしたの? 何かあった」
「いえ、そういうわけでは……警備隊の方のお話を聞かせて貰っていたのです」
「警備隊?」
ルーイ様はフェリスさんに視線を向けた。私とリズは彼が来ることは予め知らされていたので良かったけど、フェリスさんは違う。さっきまで話の中心にいた人物が突然現れたのだ。きっと驚いたに違いない。彼女は私に会うのすら緊張していたくらいなのに大丈夫なんだろうか。
「ああっ、もしかして……ニコラさんの件で情報提供してくれた二番隊の子かな? さっきジェイク隊長から聞いたよ」
「ひゃ、ひゃい!! シャロン・フェリスといいましゅっ……!!」
「俺はルーイ。よろしくね、シャロンさん」
「フェリスさん……初めて見るルーイ先生の刺激が強いのは分かるけど、しっかりして」
床に崩れ落ちてしまいそうなフェリスさんの体をミシェルさんが必死に支えていた。フェリスさん……全然大丈夫じゃなさそうだ。顔は真っ赤で呂律が回っていない。
彼女をこんな有り様にした張本人であるルーイ様は、相変わらず楽しそうに笑っていた。