テラーノベル
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アレから 1ヶ月近くたっても
この関係は特に 変わらず
続いていた
セフレは嫌だ あくまで友達
だから 以来そういうコト
はしてない
なんか そういう雰囲気
出して来てもお断りしている
シなくてもいいって
言ったもん ねぇ 君 自分から
でも 一緒に寝てる なんなら
前より遠慮なく くっついて
抱き枕にしている
「その気がないなら
あんま 引っ付いてくんなよ」
『宿泊料だよ』
「なんだソレ」
文句を言われたのも最初だけ
すぐに 諦めたらしい
差し出される無抵抗な背中が
大好きだ
人の温もりと感触に
癒されて 満たされる
(勘違いなのは重々承知)
コイツもコイツで結局
この 関係が楽なのか
週に1〜2回ウチに来てたのが
2〜3回くらいに微妙に増えた
シングルベットが狭いので
セミダブルのマットレスに
足着いてるみたいな背の低い
ベットに 買い替えた
「どうせなら ダブルにすりゃ
良かったのに」
『一人暮らしの女の部屋に
ダブルベットって』
『なんか嫌じゃない?』
「セミダブルも変わんねぇよ」
「オマエって小賢しいバカよな」
『うん まぁ 自覚はあるよ』
誰に対して何を取り繕っている
のか自分でもよく分からない
何を環境 整えちゃってんだよ
っていうセルフツッコミを
入れつつも あんまり深く
考えたくない
考え始めると凹むから
『現実逃避なんだよなー 全てが』
「あーオレもだわ 分かるぅ
同じ穴のなんとか」
『ムジナな』
「ムジナって何?」
『知らん 妖怪かなんか?』
「それ キジムナーじゃね?」
ぎゃはは
『凄っ! なんでパッとそんなん
出てくるの?妖怪博士か!?』
IQひっくい意味ない会話
だけど こういうのに救われてる
日々業務に追われ
真面目な 話しばかりでは
メンタルが やられる
3年目にして責任ある仕事を
任され始めるなか
まぁ 自分には今の職場が
向いてないんだと思う
だって 患者さんに指導とか
治療だからって言うの
烏滸がましいと思うんだよね
結果 治らないこともあるし
家に帰りたいなら帰して
あげたい
その人の人生 好きにさせて
あげればイイのに と思う
まぁ それだと治るもんも
治らないんだよねぇ
「ちょっと見せたいもんが
あるから付きあえ」
珍しく夜に連れ出された
まだ夜には肌寒くなる季節
寂れた広いだけの公園の中を歩く
街灯が少なくてほぼ真っ暗な道だ
『なに?肝試し系はヤダよ?』
「いいから ついて来いって」
錆だらけの鉄の梯子を登らされる
『ちょっと ココ入ってきて
イイ場所?』
「さあ? いいからここに座って
あれ見てみ 」
言われて振り返る
『わっ! うぁー 凄い!』
『カッコいい!綺麗!!』
歪な光の塔が乱立する
蒸気や炎が吹き上がる
まるで この場所そのものに
生命が あるみたいだ
蒸気なのか 靄なのか に
無数の光が反射して 空まで
白く赤く輝く
この空間ごと 暗闇のなかに
浮かび上がって光を放っている
『スチームパンクじゃん!
幻想的! 異世界みたい!
わああ!』
ワタシのオタク心にブッ刺さる
近場にこんな夜景があったなんて
全然知らなかった
ここは 古い工業地帯
昼間に周辺を通りがかることは
あるが ただ汚いタンクやら鉄塔
煙突やらがあるだけのはず
夜はこんなことになってんのか
全然知らなかった
たぶん有名でもない
友達と旅行で有名な観光地の
夜景を見たこともあったが
『綺麗だね』くらいしか 感想を
ひねり出せなかったワタシを
ここまで感動させるとは
『こんな穴場知ってるなんて
さっすが! いったい何人..』
..の女を連れてきたの?
言おうとして途中で飲み込んだ
せっかくこんな凄い穴場を
教えてくれたのに
こんな可愛くないことしか
言えない自分にガッカリだ
「彼女(本命)とオマエだけだよ
ちな ここまで登って きたのは
オマエだけ」
「この梯子汚ねぇし 彼女の服と
靴だと登って来れなかった」
「失敗したと思って
もう少し離れたとこから
見せたんだ」
「その点 オマエいつも
男みたいなズボンと靴だから
問題ないだろ?」
『それは.. 喜んでいいのか?』
「いいんじゃね?素直に 喜べば」
「ガキのころ この辺に
住んでてさ オレの秘密基地
だったんだよね ココ」
「もうすぐ この公園改修工事
するらしいから 最期に
見ときたくてさ」
『そうかー それは
悔しいね こんなに綺麗なのに
勿体無い』
「ほんと 悔しいなぁ」
肩が重い もたれかかって
くる狐
甘えてるの?珍しいね
『可愛い..よしよし』
最近 ツーブロック気味にした
後頭部をショリショリ撫でる
コレはこれで良い感触なんだよね
夜景とショリショリを愛でて
いたら 急に視界が暗くなった
ワタシがしていたように
青桜の手が耳辺りから後頭部へ
ショートカットにしている
ワタシ髪の中に撫でる上げる
ように 差し込まれた
下唇を啄ばみ ちゅっ と音を
残して離れていく影
『え?』
狐が微笑む
「これがファーストキスの
思い出ってことでどうですか?」
ああ ファーストキスが前戯の
グチャドロ ベロチューだった
って文句 言ってたから?
こういうのってやり直しが
きくんですか?
ドヤって 狐の笑みを向けて
くる青桜になんて返せばいいか
分からない
『..あ
ありがとうございます??』
あっ ははは!
「ありがとうございます は
違うだろー」
どうやら期待されたリアクション
は返せなかったが 青桜が
楽しそうに笑っている
顔から火が出そうだ
恥ずかしい!
可笑しなことを言ったことも
こういうのがしたかったんやろ?
ってコイツに思われてることも
それが 正解だった上に実践され
たら 少女マンガみたいな 展開が
クソ恥ずい ということも
悪狐が照れ笑いする少年みたいに
見えたのはワタシの 脳内補正
だろう
レベル99が本気で攻略とか
してくんな
クリティカルヒットとか出すな
こちとら レベル2くらいだぞ
9999ダメージの一発とか
受けきれるかぁ!
オーバーキルです!
オトナ気ないです!!
最後のプライドだか矜持だかが
一撃で灰燼に帰した
雰囲気的に
その夜は 狐に美味しく
頂かれましたとさ
になっててもおかしくなかった
『なんでこんなことすんだよ
お前みたいなのに
沼ったらどうしてくれんだ』
で? と ニヤつく狐
あぁ 嬉しいが顔にでちゃってる
ようだ 自分の素直な表情筋が
うらめしいよ
これ以上 足掻いても 生き恥だ
潔く 逝こう
『感動しましたぁ!
嬉しいですよ!?』
くっそ 恥っずい
青桜の方を見れない
体育座りで縮こまり 顔を伏せる
そのまま まだ笑ってる気配の
青桜に 向かって言う
『…こういうことしてたら
いつか 女に刺されて死ぬぞ
オマエ』
「理想の死因の2位だよ ソレは
1位はテクノブレイクな」
『何それ?』
「腹上死?絶頂死?
みたいなもん」
『あぁ はいはい 最低』
こそばゆい 甘い雰囲気に
耐えきれず ぶち壊したのは
ワタシか?
コイツか?
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