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誰も知らない、高嶺の花の裏側2
第21話 〚崩れ始める仮面〛(りあ視点)
最初は、
簡単な話だった。
◇
白雪澪が嫌い。
それだけ。
◇
静かで。
目立たなくて。
何もしてないのに、
全部持っていく。
(意味わかんない)
◇
橘海翔。
相馬玲央。
友達。
先生。
みんな、
澪の周りに集まる。
◇
「奪えばいい」
それだけで、
自分を納得させていた。
◇
だから。
◇
恒一の話は、
都合が良かった。
◇
「橘海翔を狙えばいい」
「そうすれば、澪は一人になる」
◇
うん、正しい。
◇
海翔と付き合えたら、
一軍に戻れる。
人気者。
勝ち組。
誰も見下さなくなる。
◇
……そう思っていた。
◇
でも。
◇
昼休み。
◇
教室の前で、
りあは足を止める。
◇
視線の先。
◇
澪が、
笑っている。
小さく。
控えめに。
◇
隣には、
海翔。
◇
その距離が、
近い。
◇
(……なんで)
◇
胸の奥が、
きゅっと縮む。
◇
「取れるはず」
「奪えるはず」
そう思っていたのに。
◇
澪は、
怯えていない。
逃げてもいない。
◇
守られて、
立っている。
◇
(……違う)
◇
想像していた“高嶺の花”じゃない。
◇
もっと、
弱くて。
もっと、
孤独で。
◇
そうであってほしかった。
◇
なのに。
◇
澪は、
ちゃんと選ばれている。
◇
りあは、
自分の爪が
強く手のひらに食い込んでいることに気づく。
◇
(私の方が)
◇
可愛い。
喋れる。
愛想がいい。
◇
……はずなのに。
◇
「りあ」
◇
背後から、
恒一の声。
◇
りあは、
条件反射みたいに笑顔を作る。
「なに?」
◇
でも。
◇
その笑顔が、
少しだけ遅れた。
◇
「順調?」
◇
りあは一瞬、
言葉に詰まる。
◇
(順調……?)
◇
海翔は、
振り向かない。
澪しか見ていない。
◇
りあの中で、
何かが、
音を立ててひび割れる。
◇
「……まあ、ね」
◇
そう答えたけど。
◇
胸の奥に浮かぶのは、
勝利じゃない。
◇
焦り。
苛立ち。
そして。
◇
(怖い)
◇
もし。
もし、
本当に奪えなかったら。
◇
自分には、
何が残る?
◇
一軍?
人気?
肩書き?
◇
(……何もない)
◇
その事実に、
りあは初めて向き合ってしまう。
◇
澪を見下していたはずなのに。
◇
気づけば、
比べている。
◇
(私、負けてる?)
◇
その瞬間。
◇
りあの中で、
“ぶりっ子の仮面”が、
静かに、軋んだ。
◇
まだ壊れていない。
◇
でも。
◇
確実に、
ひびは入っている。
◇
りあは、
澪から目を逸らした。
◇
見たくなかった。
◇
澪が、
幸せそうなのを。
◇
自分が、
それを羨んでいる事実を。