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翌朝。
目が覚めた瞬間、ソウヤは数秒だけ天井を見つめていた。昨日の夕焼けに染まった公園で感じた、あの奇妙な感覚が頭の中に蘇る。夢ではない。少なくとも、そう断言できる程度には、あのときの感覚ははっきりと残っていた。けれど、それ以上のことは何も思い出せない。何だったのか、なぜあんな感覚を覚えたのか、その答えだけが綺麗に抜け落ちているようだった。
ソウヤはゆっくりと体を起こした。身体に特に異常はない。痛みがあるわけでも、気分が悪いわけでもない。ただ、胸の奥には小さな引っかかりだけが残っていた。それは言葉にしようとすると消えてしまいそうなほど曖昧で、それでも確かにそこにある、不思議な違和感だった。
そのとき、コンコン、と部屋の扉を叩く音が響いた。
「ソウヤ、起きてる?」
聞き慣れた結衣の声だった。
「あぁ……起きてる」
「じゃあ早くして。遅刻するよ」
「分かってる」
短いやり取りだった。それだけの会話なのに、ソウヤはほんの少しだけ現実へ引き戻されたような気がした。昨日の公園で起きたことを考えているよりも、目の前にあるいつもの朝に意識を戻すほうが、今はずっと自然だった。
リビングへ降りると、結衣が朝食を用意していた。テーブルの上にはいつもの朝食が並び、その中から差し出されたトーストを、ソウヤは自然な動作で受け取る。
「はい、トースト」
「ありがと」
当たり前のように交わされる言葉。当たり前のようにそこにある朝の光景。それは、小さい頃からずっと続いてきた日常だった。
一之瀬 結衣 (いちのせ ゆい)。
俺とは再従兄妹(はとこ)の関係である。俺の旧姓は進藤。父方の遠戚ではあるものの、今の俺にとっては確かに家族だった。両親を亡くしてから、俺は結衣の家に引き取られた。それが、今の生活の始まりだった。
(……もう、何年だっけ)
今さら数えるようなことでもない。どれだけの時間が過ぎたとしても、ここが俺にとっての“帰る場所”であることに変わりはなかった。
そんなことを考えていると、不意に結衣が口を開いた。
「昨日、帰ってくるの遅かったよね」
その言葉に、ソウヤは手を止めた。ほんの一瞬だけ視線を落とし、それから何でもないことのように答える。
「……そうだっけ」
「そうだよ。先に帰ってたのに、いなかったし」
結衣はじっとソウヤを見る。その視線に気づきながらも、ソウヤはなるべく平静を装っていた。
「何してたの?」
「ちょっと、用事があって」
曖昧な答えだった。
結衣はすぐには何も言わず、少しだけ考えるようにソウヤを見つめていた。けれど、それ以上深く聞くことはなく、やがて小さく頷く。
「そっか」
それだけだった。
そして、トーストをかじりながら、結衣はぽつりと言った。
「遠い親戚でもさ。一応、家族なんだから」
その言葉に、ソウヤは少しだけ目を細めた。
「……分かってる」
短く返したその言葉は、いつもより少しだけ弱かった。
第2話 完
柘榴とAI

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ゑぬ。
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麗太
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