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なつみかん
48
みつお真
登校。
並んで歩く。
沈黙。
でも気まずくない。
「ソウヤ」
「ん」
「今日、帰り一緒に帰れる?」
「……多分」
少し考えて答える。
結衣は頷く。
「そっか」
教室。
授業前のざわつき。
「ソウヤ」
横から声がした。
タジだった。
田島 達(たじまとおる)。みんなからは「タジ」と呼ばれている。
俺とは、小学校からの幼なじみである。
巨体にメガネという完全なるオタクキャラでもある。
椅子を逆にして、背もたれに腕を乗せている。
「昨日さ、 どこ行ってたん?」
「用事」
「即答すぎて草なんだが」
軽く笑う。
その口調は独特だった。
「タジまたそれ?」
近くの男子がツッコむ。
「いや気になるだろ。
突然ログアウトとかイベント発生してるし」
「ゲーム脳すぎ」
「人生はクソゲー。効率プレイ大事」
さらっと言う。
クラスでは、ちょっと変わったやつ扱いだ。
アニメ、ゲーム、ネット。
その話になると急に早口になる。
「昨日も秋葉(秋葉原)?」
「いや、神引きしてた!!」
「うわ出た」
「完全勝利なんだが?」
軽口が飛ぶ。
しかし、次の言葉でタジが少しだけ声を落とす。
「昨日の件、マジで何だったん?」
空気が、一瞬だけ変わる。
「……用事だって」
「そっかー」
「まあ詰めてもイベント進まんしな」
そう言って、前を向いたのであった。
昼休み。
教室に残る。
珍しい選択。
「珍しいね」
結衣が隣に座る。
「屋上行かないの?」
「たまにはな」
机に肘をつく。
結衣は少しだけ見る。
「……ねえ」
「何」
「ほんとに大丈夫?」
今度はストレート。
「……何が」
「さっきから」
視線を外さない。
「ちょっとおかしいよ」
言葉が詰まる。
「……気のせいだろ」
「そうかな」
結衣は少し考えて、
「まあいいや」
でも。
「限界来る前に言ってね」
それだけを残してどこかに行ってしまった。
放課後。
帰り道。
結衣と二人で歩く。
「ソウヤ」
「ん」
「無理してるときってさ」
少し間を置く。
「無理してないって言い方、ちょっと変になるよね」
何も言えない。
図星だった。
「……別に」
それだけ返す。
結衣はそれ以上何も言わない。
そのとき。
頭の奥に違和感。
足が止まる。
「ソウヤ?」
「……なんでもない」
再び歩き出す。
その瞬間。
――見つけた。
はっきりとした“意思”。
思考に混じる。
(……またか)
呼吸が乱れる。
でも。
隣には結衣がいる。
それだけで、少し落ち着く。
(……大丈夫だ)
そう思う。
だが。
その手は、わずかに震えていた。