テラーノベル
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お菓子全部届いた! コーヒーも紅茶も煎茶も全部届いた! 皆を集めて評価タイムです。 食堂に、九さんと矢車ちゃんと薄荷ちゃんとヤカと私で集まって、お菓子を山積みにして、ひとつずつ開封して味見。薄荷ちゃんが頑張って作った評価表のプリントアウトとペンも皆の手元にある。差はあれど、どれも基本的においしいんだけど。
薄荷ちゃんがめげたように言った。
「どれもおいしいのに、全然味わえないですう……」
矢車ちゃんもめげていた。
「こんな高いお菓子食べるのが、こんな胃の痛い機会だなんて……」
そりゃ、日本で一番えらい神様をもてなすためとなるとね……。
九さんが2人の頭をペシッとやった。
「文句を言うな、味だけに集中せい」
皆で食べ続ける。ヤカがつぶやいた。
{この陸乃宝珠と言うのは甘さも揮発成分も好まれるものだと思うが、種があるのが難点かもしれない。私は食べられるが、人間は食べられない}
私も陸乃宝珠を口にした。すごく香りのいいマスカットを薄い求肥で包んで砂糖掛けしてあって、砂糖の甘みがマスカットの味わいにバフをかけている。
「そうねえ、おいしいけど、会合ってことだし、話に集中したいだろうし、種出す手間は避けたいよね」
その後もしばらく食べ続け、九さんがため息をついた。
「すまぬ、口がずっと甘くてもう何もわからぬ……」
私もそうかも。
「えーと、いったん口の中リセットってことで、飲み物も試します?」
「そうじゃな、頼む」
ヤカが私に言った。
{用意してある、厨房の部分の私で淹れよう。少し待ってほしい}
みんな甘さにうんざりしていたようで、しばらく休憩。すると、厨房の方からいくつかの触手がコーヒーサーバーと紙コップを持ってきた。
{デロンギのコーヒーメーカーで淹れてきた。紅茶はゴールデンルールで淹れる。あとで煎茶も80℃程度で淹れよう}
私は、思わずため息を漏らした。
「うわ助かる……ありがとう……」
めちゃくちゃ淹れ方こだわってくれるじゃん……。
九さんはピンとこなかったようで「ごーるでんるーる?」と首を傾げた。矢車ちゃんが言った。
「確か、紅茶のおいしい淹れ方ですよね?」
{そうだ、この館の最初の持ち主がイギリス人だったので、ゴールデンルールだけは知っている}
で、まずコピ・ルアクを全員で試飲することに。いい香りではあったけど、一口飲んで私は首を傾げた。
「うーん、いい香りではあるけども、うーん……」
{いわゆる後味は人に好まれると思うが、酸性度が高い。好みが分かれるのではないか}
「ああー、飲んだあとの後味はたしかにまろやかではあるけど……」
矢車ちゃんが「すっぱいです!」とそのものズバリを言った。薄荷ちゃんも似た意見のようだ。
「冷めるともっとすっぱいかもです……」
コーヒーは酸味がある飲み物なのはわかってるけど、それにしてもな。
九さんがため息をついた。
「高ければいいというわけでもなさそうじゃのう」
次、パナマゲイシャ。これもいい香りで、普通のコーヒーより甘やかな香り。
「甘くていい香りね、後味もまろやかだけども……」
{しかし、コーヒーは香ばしい焙煎香のものだと思っていると違和感があると思う。やや個性的なきらいがある}
そうなのよね、甘くていい香りだけど、コーヒーとしてはちょっと変わった香りなのよね。
薄荷ちゃんが「おいしくはあるんですけどねえ」とつぶやいた。矢車ちゃんもヤカに同意するようだ。
「普段コーヒーって思って飲むものとはちょっと違いますね、やっぱり」
九さんは気に入ったようだ。
「しかし、悪くない。ブルーマウンテンが良くなかったらこれかのう」
最後に、ブルーマウンテン。香りはコピ・ルアクやパナマゲイシャほどじゃなかったけど、飲んでみるとほどよい苦味でなかなかおいしかった。
「いい意味で普通のコーヒーね、そんなにインパクトはないけど、まろやかさがダンチだわ」
{一般的なコーヒーの味と揮発成分にもっとも近いと思う}
薄荷ちゃんと矢車ちゃんは気に入ったようだ。
「でも、普通のコーヒーよりずっとおいしいですよ」
「上位互換って、こういうのを言うのかも」
「いい意味で無難じゃな」
一応皆で点数をつけたけど、ブルーマウンテンが1位。まあ、妥当。
次に紅茶を色々試飲した。ダージリンをいくつか、ブレンドティーをいくつか、あとディンブラ。
「んー、どのダージリンも悪くないけど、バターの風味のお菓子に合わせるならロイヤルブレンドかディンブラって気がする。何ていうか、コクがある」
{ダージリンは揮発成分が豊富だが、糖と油脂が多い菓子類と飲むとしたら、ロイヤルブレンドやディンブラの方がいわゆる甘い香りで人に好まれるだろう。タンニンもある程度あって、人の口ならほどよく油脂と甘みを洗い流せると思う}
ヤカの食レポすごいな。確かに、ダージリンは香りはいいのよね。
薄荷ちゃんが和菓子の山を見た。
「ダージリンはおいしいですけど、ちょっと緑茶っぽいですね、渋みが」
矢車ちゃんが言った。
「ダージリンはあんことか落雁とか、和菓子の方が合う気がします」
九さんはダージリンが好みみたいだった。
「こんなときでなければ、ダージリンを琥珀糖といっしょに楽しみたいものじゃが……」
点数をつけて、1位はフォートナムメイソンのロイヤルブレンド。
最後に緑茶。静岡・宇治・知覧の煎茶を試した。
「どれもおいしい。後はもうそれぞれの好みかな」
{揮発成分は宇治のものが一番多い。タンニンとアミノ酸で言えば静岡が多いと思う。知覧は、いわゆるふくよかな味と言われるものだと思う}
宇治は香りが良かったけど、味は静岡のが一番濃いわ、確かに。
矢車ちゃんが3種を飲み直しつつ言った。
「知覧はコクがある感じですねえ」
薄荷ちゃんは砂糖菓子をかじって飲み比べていたけど、やがて言った。
「甘いものに合わせるなら、渋めの静岡ですかねえ」
九さんも「静岡は旨味も強いのう」と感想を述べた。一応点数をつけて、どれも似たりよったりだったけど、総合で静岡茶に決まった。
その後もお菓子を食べて点数をつけ、食べつつ話し、会合前半で和菓子と煎茶を出して後半は洋菓子を出すけど、コーヒーor紅茶は希望に応じて出すのがいいだろうと話がまとまった。
味見し終わって、薄荷ちゃんが頑張ってExcelに点数を入力して集計。高得点のお菓子をいくつか見繕って、どれがいいか話し合う。私は九さんに聞いた。
「砂糖菓子の薄氷、口溶けがダントツですしあとに残りにくいですし、和菓子はこれどうですか?」
「そうじゃのう、もうひとつはとらやの羊羹がいいじゃろう。あとは、洋菓子も食べやすい菓子を出したいが……高得点なだけでなく、何が物語がある菓子だといいのじゃが」
「物語?」
「評判がいいとか、我々が何か思い入れがあるとか」
「あー……そうですね……」
何かあるかな。私は高得点のお菓子をもう一度見直した。
「あ、クルミッ子! おいしすぎて品薄で、私の出身の鎌倉のお菓子ですね」
「それじゃ! クルミッ子にしよう」
九さんは嬉しそうに言った。私は言った。
「あともうひとつは何にしましょうかね、クルミっ子ちょっとねっちりしてるから、サクサク系とか?」
すると矢車ちゃんが身を乗り出した。
「じゃあペイサージュのサブレにしましょうよ! メープルバターの! めちゃくちゃ高い味がしましたもん!」
薄荷ちゃんもおすすめのようだ。
「高得点ですしね、おいしかったと思います」
ヤカも賛成らしい。
{材料がよいのだと思うが、食感からして作る際にも大変な技術が要されるサブレだったと思う}
九さんは「では、それがよいな」と頷いた。私は聞いた。
「じゃ、お菓子も飲み物もこれで決まりでいいですか?」
「うむ」
「ヤカ、食器について、九さんと直接相談しなね」
ヤカにそう言うと、ヤカは緊張したのか縮こまってしまった。なんだかんだで、ヤカ今までずっと私に向けてしゃべってたしな。
{よ、よろしく……一応、いい食器は揃っているので……}
「ありがたいのう、お主は館にあるものをよく知っているそうじゃから、よろしく頼むぞ」
九さんの好意的な反応に、ヤカはホッとしたように緩んだ。
{一応候補はあって……いくつか持ってこよう}
やれやれ、いい感じに進みそう。でもお菓子でおなかいっぱい! ヤカには悪いけど、夕飯はなしにしてもらおう!
コメント
1件
うわあめっちゃ楽しそうな品評会だったね…!✨ コピ・ルアクとかパナマゲイシャとかブルーマウンテンとか、めちゃくちゃ高級コーヒー飲み比べててワクワクしたよ!☕💕 ヤカの食レポが的確すぎてアシスト上手すぎるし、最後にクルミッ子が選ばれたの、鎌倉出身の思い出込みでジーンときたよ😭 でもほんと、食べ過ぎて夕飯いらないってなる気持ちわかる…笑
6
マキ
100
#あやかし
がくじゅつてき・あかげ
1,186
ねこさん⛄️
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