テラーノベル
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翌朝。鏡の前で、私は絶望していた。
ハイネックの制服の隙間から、昨日国見くんが刻みつけた「印」が、嘘みたいに鮮やかに主張している。
「……バカ、英くんのバカ……」
絆創膏を貼るのも逆に怪しいし、マフラーで隠し通すしかない。
重い足取りで登校すると、下駄箱にはいつものように、気だるげに壁に寄りかかる「私の彼氏」がいた。
「……おはよ。ちゃんと隠せた?」
開口一番、それ。彼は私の動揺を楽しむように、わざと一歩近づいて、マフラーの端を指先で少しだけ下げた。
「……ひっ、やめて!」
「……ふーん。いい色。俺のサイン、ちゃんと残ってる」
満足げに目を細める彼は、昨日及川さんの前で見せた猛獣のような気配を微塵も感じさせない、いつもの「無気力な国見英」に戻っていた。
けれど、繋いできた手の力強さは、昨日までとは明らかに違う。
「……ねえ、英くん。みんな見てるよ」
「いいよ。……見せびらかしてるんだから。及川さんにも、金田一にも、全校生徒にも」
彼は私の手を自分のポケットに引き入れると、指を深く絡めた。
教室に入れば、案の定、金田一くんが「お、お前ら! そのマフラーの跡、まさか……!」と顔を真っ赤にして叫んでいるけれど、国見くんは一瞥もくれない。
「……うるさい、金田一。朝からエネルギーの無駄。……それより、これ」
彼は私を自分の席の隣に座らせると、カバンから小さな、シンプルなシルバーのリングを取り出した。
「えっ……これ……」
「……指輪。……ネックレスにして着けてもいいし。……とりあえず、俺がいない時も『俺のもの』だって自覚しててほしいから」
「効率」を何よりも愛する彼が、わざわざ放課後に一人でこれを選びに行った姿を想像して、胸がいっぱいになる。
「……重い?」
彼は少しだけ不安そうに、私の顔を覗き込んだ。
「……ううん。……嬉しい」
私がそう答えると、彼は初めて、子供のように無邪気な、でもひどく独占欲の強い笑みを浮かべた。
「……よかった。……これで、君を一生拘束する理由ができた」
彼は私の耳元に唇を寄せ、誰にも聞こえない温度で囁く。
「……好きだよ。……一生かけて、俺に依存させてあげる。……覚悟してね」
窓の外ではバレー部の朝練の音が響いている。
でも、この場所だけは、彼が作り上げた完璧な二人だけの檻。
「仲がいい友達」だったあの日には、もう二度と戻れない。
でも、この甘い熱の中にいられるなら、一生、彼の隣で「終身刑」を受けてもいい。そう、本気で思ってしまった。
友達以上恋人未満_? fin
普段は省エネな彼が、恋愛においてだけは「最短ルートで独占する」という、ギャップ萌えを意識しました。
ギャップ大好物です。「うへ」
読んでいただき有難うございました。
コメント
1件
最っ高だったよ!ほんと!たしかにギャップ萌えだね!、