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【彼女がナンパされたら】
駅前の人混みで、〇〇は亮さんを待っていた。
スマホを見ていたそのとき――不意に声をかけられる。
「かわいいね。ちょっと一緒に行かない?」
二人組の男がぐいっと近づき、腕を掴んで離さない。
「いや、待ち合わせしてるので……」
必死に断っても、彼らは笑いながら距離を詰めてくる。
「じゃあ待ってる間、俺らが遊んであげるよ」
そう言って顔を近づけられた。抵抗する間もなく、唇に無理やり触れてくる感触。
「……っ!」
身体が固まり、涙がにじみそうになる。
その瞬間――
「やめろ」
鋭い声が響いた。振り返ると、亮さんが人混みを割ってこちらに駆け寄ってくる。
目が合った瞬間、〇〇の胸に込み上げる安堵と悔しさ。
「彼女から離れろ」
亮さんは〇〇を強く抱き寄せ、男たちを睨みつける。
だが苛立った男が拳を振り上げ、亮さんの頬を打ちつけた。
「亮さんっ!」
赤く腫れる頬。
それでも彼は〇〇を庇うように立ちはだかり、震える肩を支える。
駅前での一件が終わったあと。
男たちが去っていったのを見届けた瞬間、亮さんは〇〇の手をぐっと掴んだ。
「……行くぞ」
低い声。
振り返る暇もなく、そのまま力強く手を引かれる。
「りょ、亮さん……?どこに……」
問いかけても答えず、彼の歩幅に合わせるしかなかった。
無言のまま早足で進むその背中からは、抑えきれない怒りと焦りが伝わってくる。
やがて辿り着いたのは、煌めく明かりの灯るホテルの前だった。
「……ここでいい。今すぐじゃなきゃ、気が済まない」
吐き出すような声とともに、彼は迷いなく中へと入っていく。
心臓が激しく鳴り、〇〇はただ手を引かれるままついて行った。
――そして部屋に入るなり、ドアが閉まる音が響いた瞬間。
「……さっきの、何だったんだよ」
怒りと嫉妬に揺れる瞳。
返事をする前に、壁際へと押し込まれる。
「言い訳はいらない。……俺が全部、上書きしてやる」
唇を強く塞がれた。荒々しく、でも深く絡める熱い口づけ。
呼吸ができないほど貪欲に奪われ、心も体も支配されていく。
「んっ……はぁ……亮さん……っ」
声を洩らしても、さらに深く舌を絡められる。
首筋に刻まれる赤い痕。耳元に囁く、低い声。
「俺以外のやつに触れられた唇なんて……残すわけないだろ」
熱く、嫉妬に滲む言葉が心臓を締めつける。
彼は荒々しさと優しさを繰り返しながら、何度も何度も〇〇を抱きしめ、キスで埋め尽くしていった。
強引に唇を奪われたまま、亮さんに抱き上げられる。
気づけば、背中がやわらかなベッドに沈み込んでいた。
「……動くな。逃がさない」
低く囁かれ、両手をシーツに縫いとめられる。
そのまま、再び深いキス。舌が絡み、息が奪われる。
「んっ……ぁ……」
苦しいのに、もっと欲しくなる。
彼の指が髪を梳き、頬から首へと滑り、次々に痕を刻んでいく。
「ここも……ここも……俺のものだって、わからせる」
鎖骨、首筋、肩口――熱を帯びた唇が容赦なく触れていく。
痕をつけるたびに、彼の息が荒くなり、〇〇の身体は熱に震えた。
「さっきのキスなんて……もう思い出せなくなるくらい、何度も上書きしてやる」
強い眼差しが近づき、再び深い口づけが落とされる。
荒々しい独占欲と、甘く優しい愛情が入り混じった、果てしなく長いキス。
「……俺以外、見んな。俺だけを、愛してろ……いいな?」
吐息まじりの低い声が耳元で囁かれる。
〇〇は涙が滲むほどに頷き、彼にすべてを預けた。
その夜、唇も心も、何度も何度も彼に奪われて――
亮さんの愛情と嫉妬に包まれながら、時間を忘れて溶けていった。
窓から差し込む光で目を覚ますと、身体のあちこちに残る赤い痕が目に入った。
触れるたびに熱がよみがえり、昨夜の出来事が鮮明に胸に蘇る。
「……起きた?」
低い声に振り返ると、隣で横になっていた亮さんが、眠たげな目を細めてこちらを見ていた。
その視線はすぐに〇〇の首筋へと落ち、そして僅かに口元を上げる。
「……すごいな。俺、こんなにしたんだ」
少し照れくさそうに笑いながらも、どこか満足げな表情。
〇〇が頬を赤らめて布団を引き上げると、彼はその布団ごと腕を伸ばして抱き寄せた。
「隠すな。……俺がつけたんだから」
耳元で囁く声がくすぐったくて、胸が締めつけられる。
「昨日……怖がらせたかもな。でも、どうしても消したかったんだ。あいつらにされたこと」
「……亮さんが上書きしてくれたから、大丈夫。むしろ……安心したの」
〇〇の言葉に、彼はふっと目を細める。
「安心どころか……もう当分、誰にも会えないくらい俺の痕だらけだろ」
頬を赤くした〇〇の顔を、彼は優しく撫でて、今度は穏やかなキスを落とした。
「……俺のことだけ、考えてろ。な?」
朝の光に包まれながら、昨夜とは違う柔らかな温もりに溶けていく。
嫉妬と独占欲の奥にある、揺るぎない愛情を感じながら。
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