ある大雪の日、私は「彼」と出会った。
その日は、記録的大寒波が列島を襲い、
私の住む漁師町でも大雪が降っていた。
街人達 「こりゃあ、夜にはもっと、雪の積もるばいね〜」
「そいたら明日の漁は中止たいねぇ〜」
「困ったのぉ〜」
私は漁師達の話し声を背に小走りで家路へと急いだ。なぜなら今日は久しぶりにお父さんが漁を終えて帰ってくる日だったからだ。
命(寒い……!こんなに雪が降るとなら、もっと厚着ばしてくれば良かった ……!)
そんな事を思いながら私が歩いていると
大雪の中、ふと草陰に倒れている1匹の獣を見つけた。
命(え……?あれ犬……?何であげん所に倒れとっとやろ……?)
雪の降る中,その獣は傷だらけで周りには獣の毛を散らして倒れていた。
命(すごい傷だらけ……それに周りに血が……助けてあげたいけど…お父さんが動物嫌いだからな〜……。)
私はお父さんが大の動物嫌いだったことを思い出し,家路への道へと戻った。
途中まで歩き、ふと無性にあと傷だらけの獣の事が気になった。
命(あの獣…… 、こんなに寒い中ずっとあそこに倒れてたんだよね…。このままにしてたら他の獣とか鳥達にもっと酷い怪我負わされるよね……でも……。)
命「ああ〜もぉ!」
暫くその場で考えていた私は、居ても経っても居られず、咄嗟に元来た道へと足を進めた。
命「君,こんな所で傷だらけでどうしたと?」
私は傷だらけの獣に尋ねた。当然獣からの返答はなかった。今思えば、なぜあんなことをしたのか、私にも分からない。
何処か悲しそうな表情をしていた獣を見て、私は咄嗟にその獣を背中に背負い、家へと歩いた。道行く人々が不思議そうな表情で私の背中を見ていた。
命(意外と軽い…。この獣、犬、か分からないけどきっと物凄く大変な生活してきてたんだ…。せめて手当でもしてあげんと……。)
ガラガラガラガラ…。ドタタタタタッ。
命「ただい……。わぁ!?」
私がただいまの挨拶を全て終える前に、6歳になる妹の舟が、走って私に抱きついてきた。
舟「おかえり!命お姉ちゃん!…あれ?そん後ろん動物、どげんしたとー??」
舟は私が背中に背負っていた獣を指さし,不思議そうな表情で見つめ,尋ねてきた。
命「この獣はね、私が家に帰る途中の道で見つけたと。あんまりにも傷だらけで弱っとったけん、放っておけんくて連れてきたと。うちで飼えんでも、せめて手当くらい、してあげたかな。って」
舟「そうなんだ。でも、お姉ちゃん,お父さんは動物苦手だよ??どうすると?」
命「そうなんよね…どうしよっか。この子…」
私と舟が長い事、玄関先で獣の事について悩んでいた時、弟の海と魚が帰ってきた。
海「ただい…うわ!?…何しよっと?お姉ちゃん達…。玄関先で固まっとったら俺達が入れんとけど…」
魚「てか、お姉ちゃん,そん獣どげんしたと??とてもじゃなかけど、犬には見えんとけど…」
海「俺も気になる。てかこれ、狼じゃなかと?」
魚「…。海お兄ちゃんはアホなん?今の日本のどこに、狼の居るって言うとさ、とうの昔に全滅しとるとよ?」
海「んな!アホって…。」
命「2人とも喧嘩せんとって。ちゃんと説明するけん。あんね、こん獣はね、私の帰ってきとる時に〜…」
魚「成程…。それで家まで連れてきた。と。でも連れてきてどうすると?怪我の治るまで家に居させる事が出来たとしても、その後は?どうすると?」
命「う〜ん……。」
海「まさかとは思うけど…考えとらんやった。とかやないよね?」
命「あはは〜…。…はい。すみません。」
海,魚「やっぱりね〜…そんな事やろうと思ったわ…。」
命「う……。面目ない…。」
舟「とりあえず家ん中入ろうよ!この動物も傷だらけやし、怪我の手当してあげようよ!」
命「そう!そうやね!取り敢えず後ん事は家ん中入ってから決めよう!さ、入って。」
私は、妹の舟に言われて、取り敢えず弟達と獣を連れ、家の部屋の中へと入った。
獣「〜〜〜!!」
命「こら!暴れんと!大丈夫,大丈夫やけん。すぐ済むけん。君ん手当ばしてあげとっとよ。こんまんまじゃ病気になるとよ?」
私は手当をしようとした時に暴れた獣をそっと宥めながら、素早く手当を済ませた。
命「ほら。出来た。」
私は手当を済ませ、救急箱をしまった。
獣は不思議そうな顔で自分の体を見ていた。
海「取り敢えずさ、この獣、どうする?」
魚「お父さんには、取り敢えずバレん方が良かよね?お父さん、動物とか、大の苦手やしね、」
命「そうやね…」
舟「じゃあ私の部屋で見る!部屋ん中に居れば多分大丈夫やと思う!」
命海,魚,「確かに!!」
海「流石!舟!」
舟「えへへ!」
魚「どっかの、抜けてる誰かさんとは大違いやね。」
命「う……。」
獣「……。」
舟「さ!えーっと……。そういえば、こん子の名前とかどうすると?名前んなかまんまやったら呼ぶ時に大変だよ?」
命「そうやね…じゃあ今はとりあえず、「ポチ」とかにしとこっか。」
海「そうやね。」
魚「じゃあポチ。取り敢えずちゃんと名前決まるまではポチって呼ぶけん宜しくね!」
ポチ「ヴォン。」
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