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#幽霊
凛道桜嵐 新
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#日常
がくじゅつてき・あかげ
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わーい
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大みそかに飲む用の日本酒を千歳といっしょにコンビニに買いに行く。最初はスーパーに行こうかと提案したのだが、『いま年末だからすごく混んでるぞ』と却下された。
コンビニまでの道中、俺は、そう言えば真面目に日本酒を飲んだことがないのに気づいた。
「日本酒ちゃんと飲んだの、実家にいた時正月になめさせてもらったお屠蘇くらいかも」
『ありゃ、ほぼみりんだ』
千歳(女子大生のすがた)があきれた顔をした。
「そうなの?」
『日本酒で割ったみりんだな』
「へー、そうなんだ」
昭和世代の方が日本酒飲んでただろうし、千歳の昭和知識のほうが日本酒には明るいかも?
「淡麗辛口ってよく聞くけど、お屠蘇は甘口だよね?」
『甘口で、淡麗の逆だな。濃醇って言ったかな』
「のうじゅん?」
『コクっていうか強い味っていうか。料理酒の味がそんなかなあ』
「なーるほど」
話していたらコンビニに着いた。まっすぐ日本酒売り場に向かう。
「鍋とか年越しそばに合うのって、甘口と辛口どっちかな?」
『うーん、淡麗ならどっちも行けると思うぞ』
「じゃ、淡麗で甘口と辛口両方買おうかな」
と言っても、かなりいろいろある。少し価格帯高めでもいいと思ってたけど、目移りしてなかなか決めきれないな……。
「千歳はどれ飲みたい?」
『うーん、熱燗に合うやつがいい』
「熱燗に合うやつね」
条件を追加しても、候補が多い。しばらく悩んでから、俺は「小さい瓶、4本くらい買っちゃお」とつぶやいた。
『お前、そんなに飲んで平気か?』
「まあ、ちょっとずついろいろ試す感じで、一度には全部飲まないから」
『まあ、ならいいか。うーん、おちょこがないと、感じ出ないな』
あー、それはそうかも。
「百均にあるかな?」
『じゃ、そっちも寄ろう』
コンビニで会計を済ませて、百均に向かった。コンビニも百均も年の瀬の雰囲気で、なんだか浮かれていた。
俺、おいしいお酒を誰かと一緒に飲むために年末の町を歩くなんて、想像もしない人生だったのにな。千歳は、俺の人生の、最大の予想外だったな。
『なあ』
千歳が俺に話しかけてきた。
『そんなに日本酒飲みたいなら、明日つまみも作ってやるよ』
「え、本当?」
『板わさと、厚揚げ油抜きして焼いて、生姜醤油な』
「わー、おいしそう!」
そっか、千歳、昨日年越しの食べ物買い込んできたから、かまぼこあるのか。
「ありがとうね千歳、うれしい」
千歳に会うまで、おいしいお酒を誰かと一緒に飲む計画する大みそかなんて、想像もしなかったよ。
こんなに人生がよくなるなんて、想像もしなかったよ。
ありがとう。
そう思いながら言ったのだが、千歳には、『そんなに日本酒飲みたかったのか?』と笑われてしまった。
コメント
1件
ああ、このエピソード、すごく好きです。大みそかに日本酒を買いに行くだけの日常なんだけど、千歳が「おちょこがないと感じ出ないな」って言って百均に寄るところとか、主人公が「こんなに人生がよくなるなんて想像もしなかった」って思うところとか、じんわり沁みますね。日本酒の話も「淡麗辛口」「濃醇」って言葉のやりとりが自然で、世界観の厚みを感じました。いいエピソードをありがとうございます。