テラーノベル
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「サンタさんってやっぱりいないよな···」
「どうしたの?欲しかったものが貰えなかったの?」
クリスマスが終わって俺がパーティーの為に出していたツリーを片付けながら呟いた時、手伝ってくれていたりょうちゃんは思わず手を留めた。
「あ、ごめん、りょうちゃんとか元貴がくれたプレゼントの話じゃなくって」
「うん、わかってる。若井は何がほしかった?」
優しく尋ねてくれるりょうちゃんでも答えるのにはつい躊躇ってしまう···それはものじゃない、大好きな人のことだから。
「あー、いや···たぶん、ひくよ」
「いいから。言ってみて」
ほらほら、と期待しているような目で俺を見る。
こうなったらりょうちゃんはたぶん譲らないからなぁ、と諦めて相談するような気持ちで心の中に思っていたことを言った。
「元貴···が、好きなんだ···だから」
「···そうだったの?全然気づかなかった」
気づかれちゃったら困る。
だからバレないようにしていた俺の演技力を褒めてほしい。
「じゃあさ、サンタさんに手紙書こう」
「え?」
カバンからレターセットとペンを出して俺にはいどうぞ、って渡してきた。ってかそれいつも持ち歩いてんの?やっぱりりょうちゃんは面白い。
「この歳で?ってかなんて書いたらいいの」
「年齢とか関係ないから!はい、書いて。大好きな大森元貴が欲しいです、って」
「いやいや···それは···」
「書いて!書かないとサンタさんは来ないよ」
やけに真剣なりょうちゃんに付き合ってあげるか、と言われるままに真っ白な便箋に恥ずかしいながらもそのとおりに書いた。
「名前も!」
「はいはい···っと」
フルネームで書いて封筒に入れる。
この歳になってサンタさんに手紙を書くことになるとは本当に思わなかった。
「じゃあ、これは僕が責任もってサンタさんに渡しておきまーす」
「なに、りょうちゃんサンタさんの友達みたい」
んふふっと意味ありげに笑ったりょうちゃんは大切にその封筒をもって帰っていった。
そんなことも数日経ってすっかり忘れてもう年末だなぁなんて思っていたある夜のこと、インターホンが鳴る。
「はい···え?元貴?!」
「いれてー」
寒すぎるーっていいながら元貴が部屋に入ってくる。少し大きなカバンをもって。
「なに、どしたの?なんかあった?」
「呼ばれたから来ただけなんだけど」
呼んでませんけど?
きょとんとしてしまう俺に元貴がにっと笑って真っ白い封筒を差し出した。
「それ···まさか」
「僕に手紙くれたんでしょ?」
りょうちゃん···それはないよ、サンタさんに渡すっていってたじゃん···。
どうあがいてもいい訳出来ない手紙になんにも言葉が出ない。
「···ごめん」
「なんで」
「だって···」
だって、こんなもん貰っても困るだけじゃない?
友達からのラブレターなんて。
「僕は嬉しかったけど」
「え?」
はい、どうぞとその封筒を俺に渡して開けて、って促される。
中の便箋をだして二つ折りになったそれを開けると、それは俺が書いたものじゃなかった。
『僕も若井のことが好き』
見慣れた文字、けど見慣れない文章を何度も読み返す。
「少し遅れたけどプレゼント受け取ってよ。恥ずかしいんだから」
カバンを床に置いて元貴が腕を広げる。恐る恐る彼を腕の中にすっぽりと抱きしめたけど、頭の中はパニックだった。
「嬉しくないの?」
「夢みたいで信じられない···俺は元貴が好きで元貴も···?」
満足そうな顔をして元貴は大きく頷いた。けどまだ俺はぼんやりと夢の中にいるみたいで、そんな反応の俺に少し不満そうな顔の元貴が俺の頬をくい、と両手で挟んで下を向かせる。
「こら、もっと喜んでよね。こっちもドキドキしてんだから」
そして軽く元貴の唇が俺のに触れた。
頬が少し赤くなってるところを見ると珍しく照れているんだろう。
頭で考えるより先に体が動いて、元貴の唇に今度は俺からキスをしていた。
翌日、泊まるからねって押し切った元貴と仕事場に行くと一番乗りしていたりょうちゃんが俺たちを見てにこにこ笑っていた。
元貴がいない時にこっそりとりょうちゃんにどういうわけか聞いてみる。
「マジでどういうわけだったの?」
「元貴は···ずっと若井のこと好きだったんだよ」
「えっ?」
「だからあの日、びっくりしちゃった。若井もだなんて思わなかったから。元貴はあんな性格だから僕が何言ってもどうせ聞かないから書いてくれた手紙を渡したの」
「マジか···元貴何にも言わないから」
泊まっていく、と勝手に決めてた元貴とはあの日いつも通りゲームしてテレビ見て普通に寝た。
本当にいつも通り、告白とかキスとか嘘だったんじゃないかって思うくらい。だからそれ以上なにも聞けなくて。
「ったく、人のいないところでなにコソコソと。りょーちゃーん?」
「わっ、びっくりしたぁ」
「若井もやめろよ、こんな所で」
やっぱりそこにいるのはいつも通りの元貴で···けど俺だって聞きたいことがある。
「ちょっと来て!」
「おいっ、仕事中···」
元貴を引っ張って空いてる部屋に入り、鍵をかける。
壁に元貴を追い詰めて逃げられないように押し付ける。
「俺は元貴が好きなんだよ、ずっと。だから不安で···元貴、いつも通りだから···」
「〜っ、若井のばかっ!いつも通りじゃないよ!どんだけ僕が若井のこと好きだったのか知らないだろ!それがあんな手紙貰って会いに行ってキスだって僕からして···!恥ずかしくて今も死にそうなんだよっ!昨日だって何にもその後してくれないし!」
こんな元貴、初めて見たかもしれない。薄っすら額に汗が滲んで顔は真っ赤で涙目の元貴が顔を手で押さえてそれらを隠そうとしている。
「もう、やだ···」
「元貴ごめん!俺もずっと好きだった、昨日はどうしていいかわかんなくて···大好き、めちゃくちゃ好き!」
「ちょっ!盛るなこんなところで!」
抑え込んで思いっきりキスをすると強い力で押し返される。
「今日でも明日でも明後日でも仕事終わったあと会いたい、お願い!」
「···今日、行くよ」
きっとこんな表情をしてくれるのは俺にだけだ···やっと付き合ってるって実感してめちゃくちゃ幸せでニヤけてしまう。
「···僕も、若井に会いたいから」
いやいや、可愛すぎるだろ···。
そのあと俺は鼻血が出てしまって衣装を汚し、元貴に叱られてりょうちゃんには呆れたように笑われてしまったわけだけど。
それでも俺は幸せだ。
コメント
7件
まさかの鼻血⋯⋯でも可愛い🩷うん、好きだわ🥰