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「すいませんミナルさん。」
「ん?」
「大変申し訳ないんですけどコチラのクエスト受けてくれますか?」
「え?」
どうしてこうなった……。何故実力ない俺が適正以上のクエストを受けることに…。
「そんな暗い顔するなら最初から受けなければ良かっただろ?」
「それはそうなんだけどさ…。頼まれたら断れないたちでして…。」
「人がいいと言うかなんというか……。」
「今日のクエストは特別なのぉ?」
「まぁ、普段俺らがやってるのと比べると特別なのかな?」
「そうね。普段はボランティア活動みたいなのが多いからね。」
「今日はなにー?」
「とある魔物の討伐だとさ。」
「『ウルルフ』というオオカミ退治だ。コイツらは素早い上に連携もとってくる賢い魔物でな。駆け出し冒険者の最初の関門とも言われているが、慣れればどうってことはない 」
「”慣れれば”いけるんでしょうけど、俺には無理よ?身体能力やスキルともに凡人かそれ以下の人なんで」
「ミナルは自身を過小評価し過ぎだ。もう少し自信を持てば実力もつくはずだ」
「えぇー。自信満々で実家でた結果散々な現実に打ちのめされてるんですよ俺?そんな奴が自信を取り戻すのはキッついって」
「ならなんだ?私らに任せっきりということか?」
「そうしたくないけど、そうなる運命は変えられないかなぁ」
「ちょっとは頑張ってみろ。ねぇマリンちゃん?」
「うーん…。でも、お兄ちゃん前に人には得意不得意があるって話してたし。」
「そう!人には得手不得手が……。」
「20なんぼが子供みたいな言い訳するな」
「ういっす……。」
俺にとんできた依頼はルナベルが話した通りウルルフという魔物の狩りだ。
ウルルフの見た目はまぁ皆が想像するようなオオカミで、灰色の毛並みで凛々しくも美しいそんなイメージだろう。実際ウルルフもそうなのだが、オオカミと言えば『一匹狼』なんて言葉があるように単独で行動してると思われがちだが、その逆で群れて行動する。
仲間意識もかなり高く、手負いの仲間を後ろに下げて守りの陣形を組むくらいには賢く仲間思いだ。なので、一匹狩るのですら下手打つと時間がかかる。にもかかわらず、相手は野生の生き物だからか、体力とか無尽蔵にあるかと錯覚させられるほどの胆力。
怠惰という言葉がピッタリな俺にはこういった持久戦になる可能性を秘めてる戦闘は向いてない。もっと言えば、そんなすばしっこいオオカミくんを弓で射るほどの腕前は俺にはざんねんながら無いし、短刀で的確に急所を狙えるほどの経験値もない。
スキルや特技と言われるものがない凡人には少々荷が重いクエストなのだが、仲間のルナベルとマリンが強いが故にこの話が俺に回ってきて、断れない雰囲気作られたから渋々受けることとなった。これが現時点の状況だ。
「ちなみに聞くんだけどさ、討伐プランはもう考えてあるの?」
「マリンちゃんの罠魔法を使うのが手っ取り早いね」
「私がいっぱい頑張る!」
「使う罠魔法は『捕縛【Lv1】』だけか?」
「そうね、ウルルフ程度ならそれだけで十分かも。」
「でも確か『捕縛【Lv1】』はツルが絡みつく程度だから、噛みちぎられるんじゃ?」
「かもしれないけど、それでもいいの。」
「どゆこと?」
「罠魔法の強みっていうのは何もその魔法の効力だけじゃない。『罠』があるという情報だけで相手を封じることもできる。
本来戦闘で考えることは色々あるが、私個人的に要所をまとめると『相手の動き』『相手の使う武具』『魔法やスキルの把握』『自身が得意とする動き』の4種に絞れる」
「戦いながら相手を知り、自分のやりたい事を押し付けるってことだな」
「それらを思考しながら戦闘するのだが、考えながら体を動かすのは意外と難しい。そこに新たな情報『罠』が追加されると、思考する幅も大きくなる。」
「なるほど。どこに罠が仕掛けられてるのかも気を使わないといけないからってことか」
「罠魔法…というより『罠』自体がそういう役割を果たすことがある。だから罠の質は良いに越したことはないが、強力でなくても『罠』があるという事実が大事なんだ」
「はぇ〜……納得した。」
「さて、そんな話をしていたらご本人達の登場だ。」
「指示は俺よりもルナベルに任せようかな」
「そうだな。最初はそれくらいでいいだろう。」
「私は何するー?」
「マリンちゃんは好きなように罠魔法を使ってね」
「うん分かった!」
「ミナルには今回弓を持ってきてもらったので、罠にかかったウルルフを射るように 」
「了解。ルナベルはどうする?」
「私は囮として彼らの群れを誘導し罠にかけさせる。」
「んじゃそれでいこうか。俺らの初のちゃんとした討伐クエストやるぞ!」
立てた作戦通りまずマリンが至る所に罠魔法を張り巡らせ、その場に待機。その後ルナベルはウルルフ達の前に立ってヘイトを集める。
俺は全体的の能力が凡人だが、唯一使える特技に『フックショット』があり、これで木の上とかに瞬時に移動できる。これを会得しようと思った理由はかなり利己的な理由で、逃げるのに徹する為にそういった離脱が可能なスキルか特技が欲しくて、そんな時に凡人の俺でも使える特技として見つけたのがこの『フックショット』ということだ。 これだけは猛練習したので、かなり扱いは上手いと自負してる。
弓を今回扱うのに四方八方に意識を向けるのはしんどいので木の上に座り、意識する面を狭める事でより集中して魔物を狩ることが出来る。
更に言えば上から戦況が見えるのでルナベルやマリンに対してある程度の状況を伝えることが出来るのも高所をとる強みでもある。
まさか、自身が助かりたいが為に猛練習したフックショット技術が仲間のためにもなるとは当時の俺は思わなかっただろうに…。
「これだけヘイトを買えば…」
「ルナベルおねーちゃん頑張って!!」
「当たり前よ!マリンちゃんに傷は絶対つけないからね!」
「優しいおねーちゃん大好き!」
「うぉぉぉ!!俄然やる気が出てきた!」
あれは多分俺よりもマリンの事を大事にする人だな。マリンに何かあれば鬼の形相で且つ死地まで追いかけ、相手が死ぬその瞬間まで恨みの念を持ってそう。
今後魔物とはいえ相手のことも考えてマリンを過保護かって言われるくらい大事にしよう
「罠魔法が一つ起動した!!」
「場所は!?」
「えっとえっと…私の後ろ!」
「ミナルやれ!」
「言われなくとも!」
茂みに隠れていたウルルフが死角から襲いに来たみたいだが、罠魔法のおかげでその奇襲から難を逃れマリンは無事。さらに、罠にかかった為あとは俺の残念のエイムでウルルフを射抜く。
「上出来よミナル!」
「流石に動かない的なら当てられますよ。動かなければね」
「この調子でウルルフの数を減らしていくぞ!」
「うん!」
「了解」