「ありがとうございますミナルさん!私達のわがままを聞いてくださって!」
「い、いえいえ…。お役に立てたなら光栄ですよ。」
「こちら今回のクエスト報酬と上乗せで私達からのほんの気持ちです!」
あの後ウルルフ退治はすんなり終わった。俺の活躍は最初のみで、あとはルナベルとマリンが無双してた。
囮とか言ってたルナベルは真っ向からウルルフ数匹を相手にして無傷で返り討ちにしたり、マリンの罠魔法で捕縛してルナベルや俺が倒すはずだったが、たまにマリンが捕縛以外の罠魔法を混じえていたらしく、『ニードル【土】』という攻撃に特化した罠魔法が混じってて、起動したら地面から円錐が飛び出て串刺しっていう恐ろしい魔法なんだけど…。
マリンが扱うにはちょっと残酷すぎるかなぁとは思うんだ、子供故の無邪気さがなんか狂気と紙一重な気がして……。
モラル的にはアウトな気がしなくも無いけど強さを問われたらそりゃ強いですよ?なんならバンバン使ってくれて構わないですけど、それは教育に良くないよね?それは分かってるんだけど、やっぱり生き抜く為には必要だしね?コレどしよっか?
「ルナベルちょーと相談があるの」
「ん?」
「さっきのウルルフ退治についてでさ…」
「あぁ、マリンちゃんの『ニードル【土】』についてか。」
「わぁお!察しが良くて助かる。」
「私は全然止める気は無いぞ?」
「これまた意外な回答が返ってきた」
「生き抜く為には必要な魔法だし、その魔法の使い方は私らが教えればそれでいい。」
「あっ、確かに……。」
「彼女にとって私らは身近な大人だ。故に私らがマリンちゃんの生きる道を正しき方に向かわせないといけない。
その一例が今の罠魔法だ。罠魔法に限らず力を持つことは人を変えることがある。良くも悪くも、な。だからその力をどう使うかを私らが教えるしかない。悪しき方向に使わせないために」
「本当にマリンの事を考えてくれてるのね」
「当たり前だ。可愛いからとかもあるが、それ以上に彼女はまだ幼子だ。故に世間体が言う善悪どちらにも染まる。
なら、可能な限り私らが善の方向に舵を切らないといけないだろ?それが『大人』だ。」
「え?考え方が人生二週目とかの人ですか?それか、年齢俺よりもいってます?」
「失礼なやつだな。私はこれでも24だ」
「あっ……全然先輩ですやん。」
「お前歳22だろ。私とそんな変わらん。 」
「心は常に15歳だ!」
「アホか!」
そんなやり取りをしながらギルドを後にし、普段使う宿に戻る。
宿に帰り自分の部屋に入ると先に帰らせていたマリンが魔導書を読んで待っていた。
「あっ!お帰りミナルお兄ちゃんとルナベルおねーちゃん!」
「あぁただいま。」
「あら?魔導書読んでるなんて偉いわね」
「出来ることが増えるのって楽しいね!」
なんて純粋な子なの……。やっぱりこの子は俺が守る。新しい家族見つけるとか言ってたけどやっぱり取りやめて、俺がこの子を守る。実力云々では負けてても、命を差し出してまでこの子を守る。
「それでね、さっき魔導書見てて新しい魔法覚えたんだけど、使い方がいまいちわかんないの」
「どんな魔法を覚えたんだ?私でよければ一緒に考えようか」
「えっとね、『重力』て言う魔法なんだけど」
「これは、恐らく起動した相手にまるで全身に鉛を纏わせたようにする魔法だな」
「つまりー?」
「重たくて動けないって事だよ」
「おぉ!すごい!!………の?」
「なら実際に使ってみようか。ミナルそこに立って。」
「え?俺?凡人の俺を実験に……」
「うるさい立つの!」
「ウイッス」
「よし!それじゃあマリンちゃん、ミナルの足元にさっきの罠魔法を張ってみて。」
「う、うん」
言われた通り直立不動でその場に立ってマリンの新たな魔法『重力』の餌食になる。
魔法陣が張られてその上に立つ俺はもちろん罠が起動して、その餌食となる。魔法陣が光だした数瞬のあと俺の体にありえないほどの負荷がのしかかる。ルナベルが話した通りまるで鉛が体を覆ってるようなそんな感覚だ。立つことさえままならないため、徐々に体勢が低くなり、最終的に床に突っ伏していて、傍から見れば幼女に土下寝をしてるロリコン変態お兄さんになっているが、一応弁明させてもらう。俺は新しい魔法『重力』の実験体になってるのであり、幼女を見て限界化した訳ではない。
「うん!思った通りの魔法で良かったわ」
「これすごい!」
「そ、そうだな……。この…魔法………凄いな」
「その状態でも喋れるんだ」
「気合い……」
「んじゃ可哀想だし解除してあげてマリン」
「どうするの?」
「え?」
「???」
「その魔導書に解除方法書いてない?」
「えっとね………。『時間経過で解ける』て書いてるよ!」
「時間は?」
「2分くらいだって!」
「に、二分?………俺耐えられないよ?」
「頑張って耐える事ね」
「悪魔か………お前。」
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