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港から離れ、高速を抜けると神代は古びたモーテルに車を滑り込ませた。 錆びた看板、ひび割れたコンクリート。ここなら警察の目も届かない。
「ここでしばらく潜れ」
そう言って神代は、部屋の鍵と小さなノートパソコンを渡した。
「……お前、何者なんだ。本当に警察か?」
「元、だ。今は表に名前すらない。だが一つ確かなのは――あんたが持ってるUSBを本気で欲しがってる連中が、警察内部にいるってことだ」
神代はそれ以上語らず、夜の闇に消えた。
部屋に一人残された俺は、再びUSBを開いた。
監視映像のフォルダの奥に、暗号化されたファイルが一つ。
パスワードを要求される画面が浮かび上がる。
中身を開ければ、佐藤が命懸けで守った真相に届く――そう直感した。
だが、すぐに通知音が鳴った。
差出人不明のメール。件名は「やめろ」。
本文には一枚の写真が添付されていた。
開いた瞬間、息をのむ。
そこには高梨の妻と小学生の娘が、見知らぬ男たちに囲まれている姿が写っていた。
手にはナイフ、そして無表情の黒いフルフェイス。
全身から血の気が引いた。
高梨が裏切った理由――これだったのか。
次の瞬間、部屋の固定電話が鳴り響いた。
受話器を取ると、無機質な声が言った。
「USBを渡せ。さもなくば、彼女たちの命はない」
電話が切れる。
暗いモーテルの一室で、俺は胸ポケットを強く握りしめた。
佐藤の死、警察内部の闇、そして高梨の家族――。
すべての答えは、この小さなUSBの中に眠っている。
「……逃げてる場合じゃないな」
俺は拳銃を点検し、決意を固めた。
追われる立場から、追う立場へ。