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誰も知らない、高嶺の花の裏側2
第73話 〚選択肢としての噂〛(放課後)
放課後の教室。
窓の外は、少しずつ夕焼けに染まり始めていた。
澪、海翔、玲央、えま、しおり、みさと、りあ。
七人は、円になるように机を寄せて座っている。
「……で」
えまが腕を組んだ。
「この誤解、どうやって解く?」
しおりが続ける。
「二年生の全部に説明するのは無理だよね」
「下手したら、余計広がる」
みさとが慎重に言う。
「先生経由で注意してもらうのは?」
「でも、それも“何かあった”って印象残るかも」
澪は、黙って聞いていた。
胸に手を当てる。
心臓は——
まだ、静か。
(……決めるのは、私)
その時。
「ねえさ」
りあが、少し軽い声で口を開いた。
「いっそさ」
「澪と海翔が付き合ってるってことにすればよくない?」
一瞬、空気が止まる。
「……は?」
えまが目を丸くする。
「え?」
澪も思わず声を漏らした。
りあは、悪びれずに続ける。
「だってさ」
「通学路が同じでも、カップルなら普通じゃん」
「後ろ歩いてても」
「“たまたま一緒に登校してただけ”で終わるし」
玲央が、ゆっくり言う。
「……噂で噂を消す、ってやつか」
「そうそう!」
りあは頷く。
「変な誤解より、よくある噂の方がマシじゃない?」
しおりが眉をひそめる。
「でも、それって——」
「嘘だよね?」
りあは一瞬だけ黙ってから、言った。
「……うん」
「嘘」
でも、と付け足す。
「澪が傷つくよりは、いいと思う」
教室が静かになる。
視線が、
澪と海翔に集まる。
海翔は、すぐには何も言わなかった。
澪を見る。
澪は、少し戸惑った表情で、
でも、逃げずに考えていた。
(付き合ってる、ってことにする)
それは、
誤解を消す“近道”。
でも——
新しい嘘を、生む選択。
心臓が、
小さく、脈打つ。
否定ではない。
肯定でもない。
(……まだ、決まってない)
「りあ」
えまが、落ち着いた声で言う。
「それ、簡単だけどさ」
「後で、取り消すの大変じゃない?」
「そうそう」
みさとも頷く。
「今度は“別れた”とか噂されるよ」
りあは、少し困ったように笑った。
「……確かに」
その時、
海翔が口を開いた。
「一つだけ、はっきりさせたい」
全員が、海翔を見る。
「この方法を選ぶなら」
「澪が“選んだ”って言える形じゃないと、意味がない」
澪は、ゆっくり顔を上げた。
「……うん」
守られて決められるんじゃない。
流されて決めるんでもない。
(私は、どうしたい?)
嘘で守るか。
時間をかけて、誤解をほどくか。
それとも——
別の選択か。
澪は、まだ答えを出さない。
でも、一つだけ分かっていた。
この問題も、
予知じゃ解決しない。
——心臓と、自分の意思で、
選ぶしかない。
夕焼けの中、
七人は、それぞれの表情で沈黙していた。
この案が、
“救い”になるのか。
それとも——
新しい波紋を生むのか。
答えは、
まだ、選ばれていなかった。