テラーノベル
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ひまりの成績向上を祝う、事務所特製の焼肉パーティー。
和幸たちが肉を焼き、長治が
「お嬢、おめでとうございますッ!」とコーラで乾杯する最高にハッピーな空気の中
ひまりがボソッと呟いた。
「パパ……あのね。最近、クラスに気になる人がいるんだ」
その瞬間、事務所から全ての音が消えた。
和幸の手からトングが落ち、長治は肉を口に入れたまま石化。
俺は、口に運ぼうとした特上カルビを箸ごと握りつぶしとった。
「……ひまり。今、なんて言うたんや」
「えっ?だから、気になる人がいるの。すごく優しくて、勉強も教えてくれるんだよ」
◆◇◆◇
ひまりが寝室へ引っ込んだ直後
事務所は一転して、敵対組織の襲撃予告を受けた時以上の緊張感に包まれた。
「和幸!例のガキの名前、住所、家族構成、過去の通知表、さらには三代前までに不義理を働いた奴がおらんか、朝までに洗え!!」
「兄貴、学校の周りに地雷を埋めるのはやめてください!」と和幸が必死に止める。
「気になる…優しくて、勉強を教える…間違いあらへん、それは結婚を前提とした計画的な接近や!!」
俺は眼鏡を外し、眉間を強く押さえた。
東のガキか? それとも別の新興勢力か?
ワシのひまりを、どこのどこの馬の骨とも知れん男に渡してたまるか。
翌日
俺と和幸は「不審な植木屋」に変装して学校の近くに潜伏した。
校門から出てきたひまりが、一人の爽やかな少年と親しげに話しとる。
「…あのアホ面か、和幸」
「兄貴、普通にイケメンじゃないっすか。あ、見てください、お嬢が笑ってますよ」
ひまりが、今まで見たこともないような「女の子」の顔で笑うとる。
それを見た瞬間、俺の心はバキバキに砕け散った。
「…和幸。……ワシ、もう極道辞めるわ。娘に隠し事されるくらいなら、山に籠もってキノコでも育てたる……」
「兄貴!メンタル弱すぎですよ!まだ付き合ってると決まったわけじゃないっすから!」
その日の夜
俺は覚悟を決めて、リビングで本を読んでいるひまりに向き合った。
「……ひまり。昨日の『気になる人』やが…ワシはな、お前の幸せを一番に願っとる。やから……その、紹介してくれんか」
ひまりは一瞬キョトンとした後、大爆笑しおった。
「パパ、なんか勘違いしてない?!」
「勘違いやと?気になる人がいるって言っとったやろ?」
「き、『気になる』っていうのは、その男の子が持ってる参考書の解き方が、すごくスマートで気になってるだけだよ!先生に聞いても教えてくれない裏技を使ってて……あ、もしかしてパパ、ヤキモチ焼いたの?」
「さ、参考書の解き方……?」
「そうだよ!恋とかじゃないから、安心して!」
そこで初めて、恥ずかしい勘違いに安堵と、少しの情けなさを感じた。
#シリアス
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