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篠原愛紀
#独占欲
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「私はこんなに陽一さんのこと、世界で一番大好きなのに……陽一さんは違うの?」
上目遣いで覗き込んでくる彼女の、柔らかい感触が二の腕にむぎゅっと押し付けられる。
(待て待て待て! ここ、防犯カメラとか付いてるだろ!? バックヤードで店員さんがモニター見てたらどうするんだよ!)
「私への愛は、記号で片付けられちゃう程度なの……?」
彼女は僕の耳元に唇を寄せ、囁いた。それと同時に、彼女の左手がテーブルの下、僕の太ももの上をゆっくりと、獲物を狙うように這い上がってくる。
「ひっ……!」
(どこを触ろうとしてるんだ!? そこは……そこは公共の場における『最重要防衛ライン』だぞ!)
「ねえ、陽一さん。……『♡』、入れてくれるよね?」
彼女の指先が、「大事なところ」の境界線ギリギリを、挑発するようにさわさわと弄んでいる。
(……っ、この……小悪魔め! これ、絶対拒否権を物理的に奪いに来てるだろ!)
「……わ、分かった。……分かったよ。♡でいい。……♡にしよう!」
半ばヤケクソで叫ぶと、白石さんはパッと手を離し、何事もなかったかのように満面の笑みを浮かべた。
「やったぁ! 陽一さん大好きっ♡」
(……負けた。彼女の誘惑という名のサイバー攻撃に完敗だ。ああ、もう修理(メンテナンス)で店に預けるのも恥ずかしくて死にたい……!)
「お待たせいたしました」
戻ってきた店員さんに、僕は死んだような目で「ハート入りで……」と注文した。
隣で「最高の戦利品(指輪)」をスマホで連写し始め、「尊い……無理……」と語彙力を失っている白石さんを眺めながら、僕は自分の指に嵌められる「愛の枷(ハート)」の重さを、噛み締めていた。
(……彼女がここまで喜んでくれるなら、まあ、いいか)