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数日後、蓮のリハビリが始まった。
拓実は、蓮の様子を見守りながら、彼が持つダンスへの情熱が失われていないことに気づく。
ベッドの上で、蓮は無意識のうちに指先を動かしたり、ステップを踏むような仕草をしたりしていた。
その姿を見て、拓実は確信する。
「やっぱり、ダンスは蓮くんの体の中に染み込んでるんだ」
ある日、蓮の病室に、JO1のメンバー全員がお見舞いにやってきた。
蓮は戸惑いながらも、皆の温かい言葉に安心した表情を見せる。
しかし、拓実は皆の温かさが苦しかった。
皆が過去の蓮との思い出を語るたびに、記憶のない蓮は、まるで他人の話を聞いているようだったからだ。
「蓮くん、あの時さ、俺の誕生日に…」
「そうそう、蓮くんがくれた手紙、今でも大事にしてるで」
メンバーたちの言葉が、拓実の胸に突き刺さる。
拓実は、蓮との特別な思い出を、皆と同じように語ることができなかった。
なぜなら、二人の思い出は、メンバーには言えない秘密の愛の記憶だったからだ。
メンバーが帰り、二人きりになった病室で、拓実はこらえきれず涙を流した。
「蓮くん…っ」
拓実のすすり泣く声に、蓮は驚いて拓実の顔を見つめる。そして、そっと拓実の手を握った。
「…大丈夫ですか…?俺、何か気に障ること言っちゃいましたか…?」
蓮のその行動は、記憶がなくても、誰かの悲しみに寄り添おうとする彼の本能だった。
拓実は、その温もりに触れて、再び涙が溢れ出した。