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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第36話 〚一気に決まった“正解の形”〛
――海翔視点――
正直、
このままだと決まらないと思っていた。
あれがいい。
これも行きたい。
食べたい。
見たい。
意見は出るのに、
まとまらない。
地図の上には、
色んな指が伸びていた。
俺は、
一度だけ全員を見渡した。
(……今だな)
「一回、整理する」
声は、
自然と低くなった。
真壁も、
湊も、
澪も、
えまも——
全員の動きが止まる。
「今出てる案、
全部悪くない」
まず、
否定しない。
「だから、
“移動が一番少ない順”で組む」
そう言って、
地図を回転させた。
「初日はここ。
近いし、人多い時間帯にちょうどいい」
「次はこれ。
昼にここ寄れる」
「最後は、
自由時間長めに取れる場所」
一気に、
線を引く。
迷いなく。
自分でも驚くくらい、
頭が冴えていた。
「……おお」
誰かが、
小さく声を出した。
でも、
本当にすごかったのは——
その次。
「じゃあ、
この場所行くなら
集合時間ここにしよ」
えまが、
自然に口を開いた。
「遅れたら次ズレるから、
目安はこの時間ね」
誰かが「それいい」と言う前に、
「じゃあ、
写真撮る時間はここで確保しよ」
「お土産は最後にまとめた方が楽だよ」
次々、
えまの言葉で
計画が“形”になっていく。
指示じゃない。
押し付けでもない。
でも、
誰も逆らわない。
(……すげぇな)
俺は、
内心そう思っていた。
えまは、
前に出ようとしてるわけじゃない。
ただ——
必要なことを、
必要なタイミングで言ってるだけ。
それが、
一番難しいのに。
「これでどう?」
えまが、
みんなを見る。
澪が、
少し安心したように頷いた。
りあも、
「分かりやすい」と笑う。
湊は、
地図を見ながら
小さくうなずいた。
真壁は——
少しだけ不満そうだったけど、
「……まぁ、
これなら迷わないな」
そう言った。
(よし)
俺は、
心の中で静かに息を吐いた。
誰か一人が暴走しない。
誰か一人に負担が集中しない。
“班”として、
ちゃんと動いている。
その中心に、
えまがいた。
そして、
俺は思った。
(ナビがいても、
“舵”を握る人間は別だ)
今回の修学旅行。
それを決めたのは——
俺と、えまだ。
澪が、
安心して参加できる形。
それが、
一気に見えた瞬間だった。