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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第37話 〚部屋決めで露わになる“距離”〛
――海翔視点――
修学旅行の話が、
最後の段階に入った。
「次、部屋割り決めるぞー」
担任の声で、
教室がざわつく。
1班は、9人。
自然と、
「4人と5人だね」
という流れになる。
その瞬間だった。
「俺、澪と一緒がいい!」
教室に、
やけに響いた声。
——真壁恒一。
一瞬、
時間が止まった。
澪の肩が、
小さく跳ねたのが分かった。
周りの視線が、
一気に集まる。
(……またか)
正直、
頭を抱えたくなった。
俺は、
すぐに前に出る。
「ちょっと待って」
声は、
できるだけ冷静に。
「普通に考えたら、
男女別だろ」
そう言って、
一度流れを止める。
それが、
“正解”なはずだった。
でも——
澪の顔を見た瞬間、
考えが変わった。
表情は、
作ってる。
大丈夫なふり。
でも、
目が落ち着いてない。
(……離した方が危ない)
そう、
直感した。
恥ずかしさより、
優先するものがあった。
「……」
一瞬、
迷ってから言う。
「俺、
澪と同じ部屋に入る」
教室が、
どよっと揺れる。
えまが、
一瞬だけ俺を見て、
すぐ頷いた。
「じゃあ、
私もそっち行く」
自然に、
迷いなく。
結果は、
こうなった。
4人部屋
・澪
・海翔
・えま
・真壁恒一
5人部屋
・しおり
・みさと
・りあ
・玲央
・湊
決まった瞬間、
空気が変わる。
後ろの方から、
小さな声。
「……あれ、ないでしょ」
「距離感おかしくない?」
直接じゃない。
でも、
確実に刺さる。
真壁の方を見て、
ひそひそとした視線。
澪は、
気づかないふりをしていた。
俺は、
それを見て思う。
(……もう、巻き込ませない)
どう見られてもいい。
変だと思われてもいい。
この部屋割りは、
澪を守るための選択だ。
それだけは、
間違っていなかった。
修学旅行は、
まだ始まってもいない。
でも——
この時点で、
もう一つの緊張が
確かに生まれていた。