雨の中を駆けてゆく人影。
その表情は見えないけれど、 きっと泣いているに違いないと思った。……私は、何も知らないままだったのだ。
あの日以来、ずっと考えていた。
私が彼女の立場ならどうするだろうか、と。
答えは出ないままだったが、 ようやく決心がついたよ。……行こうと思う。
真実を知るために。
愛していたヒトのために。……私は一体、何をすべきなのかしらね。……私の全てを受け入れてくれる人なんて きっといないでしょうけど……。
だからせめて、私が信じることだけは忘れずにいたいの。
どんなに惨めな姿でも、醜くても、 誰かを信じていられたなら……。
私はそれでいいわ……。
私を愛してくれた人を、 今度は私が守ってあげたいし。
だってそれくらいしかできないじゃない。だから私は、こうやってずっと待ってたのよ。
あなたたちが来ることをね。
ここはもうすぐ終わりを迎えるわ。
そんなことより、 私のために祈ってくれないかしら? そうすればきっと、 私の願いは叶うはずよ。
その言葉を最後に、彼女は消えた。
彼女の望みどおり、私は祈った。
彼女に安らぎがあるよう、願って。
けれど……
結局、叶わなかった。
……私は、彼に何もしてあげられなかったけど……。
でも、これで良かったと思う。
私の夢を叶えてくれたことに変わりはないから。
もし私を選んでくれていたとしても、 きっと後悔していたでしょうし。
だって、私じゃダメだから。
あんな素敵な人と一緒になるなんて、 想像するだけで怖くなるくらい。
それに……彼ならもっといい人が見つかるはずよ。
幸せになって欲しいと思ってる。
ずっと見守ってきたんですもの。
もちろん、私が幸せにしてあげたいって気持ちはあるけれど。
それは難しいんじゃないかしら。
あなたが、そんなことを望むとは思えないし……。
まぁね……。
彼にとって、 あれ以上の幸せはないと思うわよ。
たとえ、もう二度と会えなくてもね。
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