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目を開ける。するとそこは元の〝私の部屋〟だった。口元に手をやって「あれは何だったんだろう」という感じで考え込む。あることに気が付く「時間は?」どうなってる?


部屋に置かれた壁掛けの時計。それを見た。


「・・・1時間くらいしか経っていない?」


つけっぱなしになっているパソコンのマウスを動かし、年と日付を確認する。


「今日だ」


外からは雨音が聞こえてくる。どうやらまた降っているらしい。


部屋の隅から隅まで歩いて私は何かないかを探したけれど、特に何もない様子。まるで本当に自分だけがこの部屋からあの世界へ行って、そして帰ってきたみたいだった。


「・・・そうだ、アヤカは?」


ついさっきまで会っていたほうじゃなくて、この部屋にいたほう。ドラゴンの姿をしているアヤカ。私は風呂場に行ってみたのだけれど、そこに彼はいなかった。


そういえば紫色の本もどこかに行ってしまったのか、置かれていた机の上にはなにも無かった。


「とりあえず・・・ひとまず落ち着こう」


机の上に置かれていた煙草の箱とライターを手に取り、窓を開ける。箱から煙草をとり出すと咥えて火を付けた。


「・・・アヤカはもういないのかな」


彼が居たプランター。まだベランダに置かれている。そこには何もないただ、彼を育てたであろう土だけが有った。


「アヤカはツバサを得たのだろうか」そう私は思った。


何せあの本の分岐点行く前、彼にはツバサと呼べるものが何もなく、それを手に入れる為にここに来たのだから。


私が行った世界は過去なのかどうなのか、それも確かにわかっていないが、ツグミはおそらく「私がやるべきことをやった」からこそこちらの世界へ戻したんだろう。


であればこの世界のアヤカにツバサが出来たというか・・・生えてもおかしくはない。まあでも、どこに行くにしたって一言くらい何かあってもいいんじゃない?


雨が降る夜の空を見上げてそんなことを考えているとアパートの上の方から声が聞こえて来た。


「あ、帰って来てる」


私は身を少しだけ乗り出して屋根を見上げた。・・・のだけれど何も見えない。ただ雨どいが見えるだけだった。


「今そっちへいくから」


と言うと風を切る音が聞こえ、屋根の上からアヤカが飛んできた。どうやら彼は帰宅したわけではなく、屋根の上に居たらしい。そしてやっぱり思った通り、背中には銀色で出来ているツバサが付いていた。


「・・・それ、ツバサ?」


私の質問に答える前に彼は窓からいつものように部屋の中に入ると置かれている彼用のタオルの上に着地し、足踏みをして濡れている足を拭いた。


彼の背中にはどう見てもツバサのようなものが見える。


けれどそれは鳥のようなものではなく、まるで空中にペンを走らせて描いたかのような形。端的に言えば針金で作っているようにも見えて、翼膜は有るのかないのかはっきりとしていなかった。


「あれは、私が行っていた世界って・・・」


「過去の世界である。ってことは確かだね」


アヤカは私の質問にそう答えた。紫色の本にあった銀の模様。その分岐点、本来なら選択できたかもしれない選択を過去に戻ってやってきた。だからアヤカにツバサがあると考えると納得は出来る。


「でも、美香が想像しているような過去っていうわけでもない」


「どういうこと?」


アヤカはいつの間にか置かれていた机の上にあるお茶を私に出してくれた。・・・ペットボトルだけどどこからか買ってきたのだろうか?


「戻ったのは確かにそう、別の世界のはじまりは美香と僕が出会ったところからだったでしょ?」


「うん。雨の日だったし、アヤカと出会ったのもそうだし」


「でも、少しだけこの世界と同じじゃない部分が有って、それが」


「まだ、美香達が僕たちと会話が出来るという世界線だった」


これに関してはツグミも言っていた。あの時の話を端的にまとめれば〝植物の種に記憶する〟ということはつまり、アヤカ達と私達の会話がこの世界では出来ないから。そう言っていたことを思い出す。


じゃあ私が選択したのはどの部分になるのだろうか?というよりも、あの世界はどのくらい前の過去の話だったんだろうか。


私は腕を組んで考え込んでしまった。

ベランダにドラゴンが生えてきた

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