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夢の中の私

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夢の中の私

1 - 第1話 出会い

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2025年10月14日

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この物語は、私の夢です。

フィクションなのか、本当のことなのかは分かりません。

けれど、この夢の中で、私は“ジェーン・グレイ”という名前で呼ばれていました。

その夢の中の私は、冷たい石畳の上に立ち、冬の風に晒されながら、

誰かの名前を呼んでいました。

私の代わりに処刑台へ向かったのは、

私のずっと前に好きだった人――フランス人のエレノオール。

夢が終わった今も、彼女の声と手の温もりだけは、

現実のどんな記憶よりも鮮明に、私の中に残っています。

あの子との出会いはそう___ある日の事でしたね。

私がまだ6歳だった日の事です。

父がフランスから戻った日、屋敷の空気はどこか重たかった。

磨かれた床の上に、泥の跡が続いている。

母は口をつぐみ、使用人たちは皆、視線を伏せていた。


やがて、扉の向こうから父の声が響く。


——この子は、今日からお前の侍女だ。名は……エレノオールという」


私よりも少し背の高い少女が、静かに前へ進み出る。

そのドレスは薄汚れており、繊細な刺繍がところどころ裂けていた。

金髪に混じる埃の色が、どこか痛々しかった。


「フランスの没落貴族の娘だそうだ。……売られていたのを見つけてな」


売られていたという言葉の意味を、六歳の私には理解できなかった。

ただ、少女の瞳の奥にある何かを諦めた光だけが、妙に印象に残った。


「はじめまして。お嬢様」


細い声。

それは礼儀正しく、それでいてひどく空虚な音だった。


私は思わず彼女の手を取る。

冷たい。

まるで氷のように冷たいその手に、幼い私は小さな声で言った。


「わたくし、ジェーン。……よろしくね」


エレノオールはわずかに瞬きし、ほんの一瞬だけ微笑んだように見えた。

それが、私の知る最初の奇跡だった。

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